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第三王子とレーコのエンディング

 四月。


「結婚前に土地をさくっと購入しちゃいましょう。やっぱり土地つき男爵位くらいにはなっとかないと」


「ああ」


 婚約者の言に光弘はため息混じりの頷きを返す。


 もう、抵抗するだけ無駄。


 数日かけてたどり着いたのは、牛がモウモウ鳴き、ジャガイモ畑がある平和な村。


「え?俺らここに住むの?」


(ただでさえ、日本よりか不便な異世界に住んでいるのに・・・山奥の村?)


「まさか。見えたわよ!」


 その、野っ原に整然と並ぶ瀟洒な邸宅の数々。列ごとにタイプ分けされているそれはー


「って...分譲住宅じゃねえか!!」


 日本でも、同じような作りの家家が並んでいることは珍しくなかったが、異世界でもこんな場所があるなんて。しかも野っ原に。


 その一つに馬車が止まる。


 敷地は25mプールが四つほど入るだろうか...。そこにおしゃれな邸宅がほどよいサイズ(プール一個分)で建っているわけである。


 ちょっとづつ色を変えていたり、形が違ったりするが、基本の雰囲気はどれも一緒。 


 せせこましさがなくていいが、これが男爵領?


「ここにあるの全部が俺らの土地・・・か?」


「違うわ。ここにある家一個分と庭、この一区画だけね。領地つき男爵位が7300万ロゼってところね。国王秘書参事官位がたったの5400万ロゼ。あこれ、一応子供にも引き継げるから安心して」


(たったのポイントがわからんのだけれど・・・つまりは爵位付き別荘って考えればいいのか・・・)


「ぶっちゃけ、そのお金を醤油に使って欲しいんだけれど。なにその豪華な役職名は?男爵位っていくらするの?」


 役職名に恐れおののいている光弘の肩をエレナがポンと叩く。


「大丈夫よ。参事官も男爵も別になにも義務はないから・・・男爵位はたったの1700万ロゼ」


「いや、男爵位の割合おかしいから。それ国家としてまずくね?」


 そんなに安く?でたたき売られているのはOKなのか?(庶民感覚としてはなかなか手の届きづらいお値段だが)


「希望の家の色があったら、いくらでも言って。爵位はどんどん下がっているけれど、地価は上がり傾向だから、早めに押さえとかないと~。どれにしようかしら・・・増改築できるかも聞かないとだし」


「気になるポイントそこ!?そこなの!?男爵領って服を選ぶみたいに選んじゃっていいのか?」


「管理費が年60万で、お庭の手入れとか、屋敷の清掃とかもオプションでもろもろやってくれるそうよ。」


「ろくじゅうまんロゼ。」


 細かいレートは知らんが、ロゼ≒円と考えれば安いのか?

 都心の一戸建てくらい?いや向こうはこんなに庭とれないわな。


「本当にここに住む気なのか?」


 一応、もう一度エレナに確認しておく。


「一応私たちが治める土地って扱いだけれど、あくまで別荘なので、避暑に利用するくらいかしら」


 ◆


「おうさまーおうひさまー。おきゃくさまーだぁー」


「ゼロが増えるとどいつもこいつも計算できないやつばっかり。字が読めなさすぎでしょ。なんで私がこんなド田舎で客商売しなきゃならないのよ」


 王妃と呼ばれた女は頭を抱えた。

 いま、なんとか住民に押し付けるために青空教室を開いているが・・・参加率はほとんど一人か二人。


「のらしごとがー」「うしのせわがー」とか言って全力で逃げていくのだ。


「まあ、この土地の中では王であるが、他の貴族には言ってはならないぞ」


 王と呼ばれた男は農民をたしなめつつもどこか嬉しげだ。


「ごめんくださいー」


「いらっしゃいませー」


 第三王子とレーコは精一杯の営業スマイルを浮かべ、


「「「「げっ!?」」」」


 客のエレナ&光弘と同時に変な声を上げてしまう。


 ◆


 互いにちょっと緊迫した空気がはりつめたがー


「王様粉引き小屋使わせてもらって構いません」


「王様窯借りていい?」


「王さま、鍬借りていくよ」


「領民に王さまって呼ばせてるんだ~。へぇ~?」


 エレナはちょっと意地悪そうな笑みを浮かべる。


「あ、やっぱり国王を騙るのは不味いのか」


「こら、バカ。領主様と言え。粉引き小屋だろうと窯だろうと勝手に使え。待て、農具だけは補償金を預けていけ」


「ここらの一番偉い人は王さまだ。前の王さまは粉引き小屋使う度に小麦の半分寄越せっていってたから、優しい王さまが来てくれて良かったよ」


「へぇ~」


 優しい王さまとか言われて、顔を赤くしている王子をエレナは意地悪そうに見る。


「まあ、今回は事故ってことで・・・あくまで『客』と『販売員』として・・・。内覧とかできるのかしら?」


「いくらでも見て行ってちょうだい」


 エレナの問いにはレーコが雑に答えている。


「気に入ったのがあったら、さっさと決めてさっさと帰ってくれ」


「エレナ...わざわざここにしなくても、他でいいだろ?」


「なんで?」


「誘拐犯だぞ!気持ち悪いとか、怖いとか!フラッシュバックとか?心的外傷とか」


「心の傷を負ってるからこそ! 王子の落ちぶれっぷりを確認して、溜飲を下げて、私の繊細な心の傷を癒すのよ!」


 ・・・エレナの心はすごく頑丈だったようだ。


「それにあなたがちゃんと守ってくれるでしょう?」


「ま、まあ」


(外にはサンドラ他護衛も待機しているし)

石鹸の価格等、無理矢理円換算しておりますが、さらっと流していただけるとありがたいです(モノの価値の考え方自体が現代と近世では違いますので)。

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