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卒業

エンディング編と言っても10話以上続くのですが...。

三月一日。エレナの卒業式。


「卒業式に本当に出て大丈夫か?あの王子に会うかも・・・」


 光弘としては、王子が突っかかってきたり、エレナが誘拐された時のことを思い出したりしないかが不安なのだが、エレナは光弘の心配をよそに、ケラケラ笑う。


(ここらへんイザベルさんの悪い影響が出ているよな~)


「大丈夫よ。光弘の出した条件を守って、夫婦仲良くどっか遠くに行ったわよ。取り巻きの男たちもレーコの結婚を期にもうそれぞれの道を歩んでるらしいし」


(結構速やかに対応してくれたんだ)


 ぐじぐじと理由をつけて王都に居座っているのかと思っていた。

 確かに第三王子の姿は見かけない。


 眠い卒業式の後は、ダンスパーティ。


 エレナのドレスは赤。当然光弘の財布で買えるわけがなく、色だけエレナ兄と相談して、宝飾品に関してはエレナ義姉とイザベルに相談して、一応プレゼントという形で贈った・・・ドレスと揃いの靴をプレゼントし忘れたとかいうオチをぶちかましてしまったが。ちゃんとそれに合う靴があったようで良かった。


「卒業したら、すぐ旅行ってどうなん?」


 エスコートも様になってきた。


「卒業したら結婚しても良いって言ったのはあなたでしょ?」


「無理矢理言わされた感が若干・・・」


「なに?」


 エレナがにっこり微笑む。


「いや、一応、大人を名乗る以上は線引きが必要だろ?」


 高校二年の時に急に五歳も歳をとって、必死に大人の振りをしようとしたこだわりは、いまいちエレナに理解できなかったようだ。


 この世界で最初に出会ったかっこいい大人にはまだほど遠い。


 曲が一旦終わると、エレナが「ちょっと待ってて」と言い置いて、会場一応ドレス姿のサンドラさんとの合流が確認できたので、軽食をぱくぱくつまみ、寄ってきたファンにサインを求められ...たまに嫌みを聞き...


「エレナ様に小説のようなことを...。」


(いやいやしてないから。)


 ニコニコ笑顔を崩さず聞こえない振りしていたら、少年が目の前に現れた。


「先生!ネア様に操を立てるにはどうしたらいいですか?」


「えーっと君は?」


 どっかで見たことがある。


「俺、山間部出身のオン村の子爵やっているんですけれど・・・『シャルン英雄譚』を少しでも早く読みたくて、『ロゼリア学園』に転入したんです」


「はい?」


「俺のオン村で、シャルン英雄譚の新聞を手に入れるには発売から十日後・・・あまりに遅い・・・遅すぎる!」


(昔は地方は大変だったって聞くけれど)


 大阪生まれ大阪育ちの光弘は欲しい漫画は発売日に書店で普通に買えていたのでその嘆きと飢えを知らない。向こうの世界には電子書籍まであった。


「子孫がいるって聞いて『ロゼリア学園』に転入したのに!憧れの娘に会ってみたら全然イメージと違ってて!!地味ダサい!!おまけに婚約者まであとを追っかけてくるし。卒業したら即結婚なんです!!」


 眼鏡のリリアンさんがちらっとこっちを見てる。レディに地味とダサいとか言っちゃいかんよ。


「沼った男子か...」


 『シャルン英雄譚』の連載を始めたのはリリアン・ネバ嬢に会う前だし、下手にリリアン嬢に絵を似せたら、肖像権とか名誉毀損とか色々不味いだろう。


「操を・・・婚約破棄・・・」


 沼っただけならいいが・・・ぶつぶつ呟く男子に危険なものを感じる。


 貴族だらけの王立学園の卒業式でそんな理由で婚約破棄された日には、出版社、原作者への風評被害が・・・。エレナの婚約者で一応貴族という立場上、スリーズ家にも迷惑をかけかねない。


(PTAが出てくるのはまずいよなー。あるかは知らないけれど。)


「君の気持ちはわかった。君は結婚後、思いの丈をこめてフィギュアを作ればいいよ!」


「フィギュア?」


「精巧な女神像だ。可動式にすれば、好きなポーズをとることもできる。戦闘でちょっと服がぼろくなった女神様を再現することも可能!ほらガラ○アを作り上げたピグマ○オンのように!」


「それシャルンに寝とられ・・・」


(そうだったぁ!)


 『シャルン英雄譚』では、ネタに困ったら神話の女神、ヒロインととりあえず片っ端から恋仲にしていた。


「だ、大丈夫だ。ネア様だってシャルンと恋仲なんだし。むしろ、公式カップル」


「ネア様が、誰の妻になろうとも、僕は操を立てたいんです。というか僕のなかでは僕の公式嫁!」


 卒業した後で出家しようが、二次元と結婚しようが構わないが、ここではお願いだから『婚約破棄』宣言も『出家』宣言もしないでくれー!


「もう、うん、その婚約者さんにネアの格好をしてもらえば?」


「貴重な ご意見 ありがとうございます」


 横合いから少女が現れ、少年の耳を引っ張って引きづって行った。


 ネア様は若干ロ・・・若いが、男の子の耳を引っ張って行った女子生徒は割りとすらりと背の高い女の子だった。

 たしかに、イメージ違うな。


 立ち去るときぎろりと睨まれて、思い出した。


(戦闘シーンビキニアーマーだったぁー!!)


 おそらくあの女の子は婚約者がお熱をあげているキャラのイラストを見たことがあるのだろう。


「お互いの意思を尊重して・・・ね」


「お待たせー!」


 その言葉に振り返った光弘はぎょっとした。トイ・・・化粧直しに行っていったと思っていたエレナのドレスが変わっている。

 

「え?わざわざ着替える必要はなかっただろう?しかもなんでそれ!?」


 エレナがわざわざ着替えてきたのは光弘が賭けで買った深緑のドレス。宝飾品もそれに合わせた物に変わっている。


「ちょっと流行遅れだけれど、物自体はしっかりしたものだし、ドレスコードにも引っ掛かってないんだから別にいいでしょ?」


 光弘は気づいていないがドレスにもしっかり細やかな刺繍が追加されている。


「かわいいよ」 


 髪型も「王子のバカヤロー」と叫んだときの、ふわふわサイドテールだ。出会った当初を懐かしんでポロリと出た言葉に、光弘、エレナとも頬が赤くなる。


「頬に手を添えたままいつまで固まっているつもりですか?」

 

 サンドラの突っ込みにエレナの頬をさわっていたことに気づき慌てて手を引っ込める。 


「あーサンドラ・・・あちらの女性に、水着のメーカーを教えてあげて?」


 光弘が視線を向けたのは先程のネア様ファンとその婚約者。


「・・・は?ミズギ?」


「温泉で着ていた・・・」


「えーっとあのハレンチ極まりないミズギをどこの誰にプレゼントするですって?」


 小声でサンドラに話しかけたつもりが、ばっちりエレナにも聞こえていた。


「ぼ、僕じゃなくて・・・婚約破棄の危機を回避するためにー」


「はあっ!?」



 女性から男性への『婚約破棄』イベントが、いくつか発生していたようだが、大きなトラブルもなく卒業パーティーは終わった。


 ちなみにネア様ファンのカップルは婚約破棄しなかったので、光弘的にはセーフである。


 後年、オン村とズタ村で可動式フィギュアが誕生するのだが・・・光弘的にはどーでもいい話である。


「光弘の誕生日がもう少し離れていれば、オイスター寺院でもよかったけれど」


 翌三月二日にはお着きの人がいるとはいえ、婚前旅行に出掛けた。


 三月三日には光弘の誕生日を二人で過ごし、帰ったら、イザベルはナクトの家に引っ越していた。


 その後はエレナの希望通り互いの家を行き来する生活を続け・・・。

ネア様ファンの少年...70話『ダンスパーティー』で登場済みです。

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