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あの日の少女

別名スベル受難編。ミッチたちは、一応ゴール見えていてもうあとはほぼイチャラブモードですから。

 招待の日付は、翌日だったがエレナが一週間時間を稼いだ。

 服は結婚パーティーの時に貸してもらった刺繍がいっぱいの服に着替えさせられ、公爵家の馬車で『そこ』に連れて行かれた。


 たまに教会の鐘つき台に登って眺めるが、実際に中に入ったのは初めてだ。


「ほえー」


「わたくし、王太子マクシミアンが一子。アデレート第一王女ですわ。ようこそ我が(おうけ)へ。」


 本日のアデルのお腹は幅広のリボンが巻かれており、こどもらしい丸みを帯びていた。

 アデルの後ろにはメイドが後ろに二人も控えている。


「レディーの胸をじろじろ見るなんてマナー違反ではなくて?」


(お胸じゃなくてお腹見てたんだけれど。よかったソーセージのように縛られてなくて) 


 結婚式ではコルセットを身に付けていたからそのように見えていただけで、王女もさすがに始終あのような格好をしているわけではない。


「えーその、お、お土産のポップコーンです。」


(貴族のお嬢さんなら、ちょっとしたお菓子が喜ばれるんじゃないかしら。王族は『毒殺を警戒する』からお土産はまず自分で毒味して。)


 エレナお姉ちゃんのアドバイスを信じるしかない。


「コーン?とうもろこし?家畜の餌を食べてるの?」


 少女は甘い香りのする菓子に興味津々のようだが、近くに控えているメイドの顔を一度確認する。メイドはわずかに顔を横に振る。


「まず、僕が食べます」


 二三個ぱくっと食べる。


「えー。メイド様、お毒味お願い...します」


 くすっと笑われた。


(とりあえず全部『様』と『お』をつけとけばなんとかなるわ)


 というエレナのアドバイスはちょっと違ったようだ。


 ポップコーンを入れた瓶をメイドに渡す。


「ああ、底の方に危険物が入っているか、疑われるのでしたら皿に盛っていただいて構いません」


 数個確認後、メイドさんが頷いた。


「甘すぎます。が、数個ならよろしいかと」


「ねえ、庶民は毎日こんなものを食べているの?」


「いえ、兄弟でお金を出しあってたまに...。虫歯になったら母さんにげんこ...怒られるし」


「虫歯はいたいわ」


 王女様は痛みを思い出して眉にシワを寄せた。


「お姫様でも虫歯になったことがあるんだ」


 アデルはぷうっと頬を膨らませ、メイドさんはくわっと目を見開きこちらをにらむ。


「あなたたちの美味しいお菓子をもっと教えなさい」


「いえ、このクッキーよりか美味しいものはないけれど・・・チーズのカリカリ焼きとか?」



 ◇


 時おり、貴族には受け入れがたい話が混じっているのか、王女様は顔をしかめるが、たまにこらえきれずにケラケラ笑う。メイド様が全力でこちらを睨んでるが気にしない。


「金ぴかの人?」


 アデルに庶民の話を聞かせていると、金貨を溶かしたような髪をした男性が現れる。あの髪を売ればいくらになるだろう。


「よい。楽にせよ。成績は優秀だとか。私の娘の学友にならぬか」


「娘・・・?」


「わたくしのお父様よ」


 つまりは・・・王子様。エレナをさらった奴のおにいさん。そういえばちょっと似てる。

 アデルと話すのは構わないが、エレナをさらった奴の兄に素直にうなずくのはなんかいやだ。


「ガクユーってなんですか?」


 自然と反抗と警戒の混じった声音になってしまう。


「お友だちだ」


 そこでスベルはポケットから紙を取り出した。


「えー。その・・・『そのアンケンは家に持ち帰らせてイタダキマス』?」


 エレナが『困ったときにはこの言葉を』と持たせてくれたカンペだ。

 問題はその紙がアデルからもアデルの父(第一王子)からも丸見えだということ。


(いい?もしお友だち認定されそうになったら『迅速かつ丁寧に保留にするのよ。その場で。あとはこっちでなんとかお断りするから』)


「なに。難しく考えることはない。一週間に一度、アデレートが勉強している間、横で昼寝してればよい。ちゃんと甘いお菓子も用意するぞ。母御に怒られない程度でな」


(一週間に一度おいしいおやつが食べられる!?)


「やる!」


 甘いお菓子の前に、エレナとの約束は音を立てて崩れた。


 ◇


「アデレートもスベル君に教えてあげるんだよ?」


「はい!」


 それが、アデルがスベルを『友達』に指定する条件だった。

 勉強嫌いのアデレートも年下の平民の子供に教える『お姉さん』の立場になればもっと真剣に勉強に取り組むだろうーという、大人たちの思惑は大きく外れるのだった。


 ◆◇


 半年後。


 アデレートは勉学において一歳年下のスベルに瞬殺された。


「・・・年下の庶民に負けるなんて!」


 最高の教師をつけているのになぜ負ける!


「外国語や、音楽はアデルの方が全然すごいよ~」


 それはスベルが最低限の読み書き以外全く語学を習ってなかっただけなのだが。

 音楽に至ってはすごい勢いで追い付いてきてる。王宮以外は楽器にほとんど触れないだろうに。


「ちょっとぐらい加減しなさいよー?」

スベルが楽器がOKなのは、あくまで教師のまねっこをしているだけです。指の動きとかタイミングを覚えているだけ。楽譜はまだ覚えていない。

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