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光弘の話1 妹と???

三話ほど過去話。コンパクトにできませんでした。辛気くさいのが苦手な方は回避でお願いします。

三話目の最後にエレナの超約まとめが入っていますのでそちらを読んでいただければ。

「今度はこのバラを折って!」


 そう言って光弘に妹は折り紙の動画を見せる。


「ウゲー超めんどくさそう」


 光弘は元々鶴と奴さんくらいしか折れなかったが、病気が発覚してからはリハビリのために、昔祖父母に折ってもらった物を動画を見ながら再現した。と言っても、それも一通り折ってしまったらある程度達成感が得られて、折る気を失ってしまったが。

 以降、妹からリクエストを受けて、新しい折り紙を折っている。


「退院したら、デートしよ」


「?」


 妹からファッション誌を押し付けられる。それも男性誌と女性誌の二冊。


「デートの服選んで」


「中身がおまえじゃあな。どれを着ても同じだろう」


「ひっどー。いいから真剣に選んで!」


 ガーリーとかフェミニンとか甘辛コーデとか、どれもたいして変わらないように見える。

 一応妹の手前、一枚一枚ページを真剣にめくっているふりをする。


「こんなたっけーの買えねえだろう?」


 洋服一着の値段がバカ高い。


「別におんなじの買う必要ないの。似たような色合いの服や靴を探して。こうゆーのはあくまで参考よ参考」


(どこがいいのかさっぱりわからない)


「選んでいる間に、何か買ってくるわ。何がいい?」


「・・・別に」


 必要なものはほとんど揃っている。


「ほんとにいいのぉ~?今を逃したらお菓子密輸できるの一週間後だよ~?」


 別にたいした食事制限があるわけではない。院内のコンビニに自分で買いにいけばいいだけだ。

 が、最近コンビニに行くのも面倒になってきている。


「じゃあ・・・カップ麺のミニ」


「じゃあ、行ってくるね。帰って来るまでにちゃんと服選んでよ」


(今さら、外に出掛ける気もしないし)


 ファッション誌閉じ、折り紙の方に取りかかってみるが、手がブルブル震えてしまう。


「ちっ」


 家族は頑張れ、あきらめるなって言うが、毎日活力が削がれていく。これからどう生きていけばいいのか。


 もっと大変な状況でも頑張って活躍している人はたくさんいるだろう。が、自分は頑張れそうにない。


 ◆


 視界の端で、カーテンがふわりと動いて、そちらに目を向けてみると、少女がいた。


「えっ、なんでト○ファンが湧いてるの?」


「この国の正装で赴いたのだが?」


(いやこの国の正装じゃねえし!超地域限定!)


 小学五、六年生くらいのショート髪の少女の姿は、虎マークの帽子に、白黒の縦ストライプのシャツ。半ズボンジーパン。虎マークのタオルを肩にかけている。


「別に野球とか興味ないんだけど。部屋を間違えているよ」


 患者がよっぽどの虎ふぁんでないかぎり、お見舞いの服装としてはびみょーだ。親戚の同年代の女の子を念のため思い返してみるが、該当者は無し。


「お前は五十六まで生きるだろう。徐々に身体が動かなくなり、やがて心も亡くなってしまうがな」


 年端もいかない女の子に未来を指摘されて、かっとなって雑誌を投げる。


「人の病室勝手に入ってきて、勝手なこと言うなよ!」


 が、少女には届かない。もし少女にぶつかっていたら、光弘は別の選択をしていたのかもしれない。


「私は神だ。お前に別の運命を与えようと思ってわざわざ出向いてやった」


「神?宗教は間に合っているんだが」


 こんな子供に宗教勧誘させるなんて、どんな親なんだよ。


「まあ、人から見ればあやしげで物騒な神だろうな。最初に口説いたのはー」


 そこで自称神は口をつぐみ。じっと光弘の目をみた。


「おまえの寿命を五年差し出せば、お前を五体満足な状態で、異世界に送ってやる」


「いやいやあやしすぎるだろ。家族に相談してから」


 通報します。と言う言葉は隠しておいた。


「おまえの妹が戻ってくるまでの三分の間に決めろ」


「三分って、僕が断ったら?」


「別の者に声をかけるだけだが?」


 通販キャンペーン方式やめろ。微妙に惜しくなってしまうだろうが。


「何もなせぬまま、心も身体も朽ちゆくのを待つのみか。怪しげな宗教にのってみるかは」


「うーん。デメリットは」


 心が膿んでいたところだし、三分間この子に付き合って、この子を言い負かすのも面白いかもしれない。


「いっとくが餓死や、病死は普通にありうるからな。おまえは到着早々に天数を削ることになるかもしれん」


「異世界について三日後に餓死って可能性も・・・」


「充分ありうる。おまえが運命に出会えるかはお前次第だ。運命を二度救えばお前はそこそこの幸せを手に入れられるだろう」


 結構シビアだなー。じゃあ、食料を用意して・・・。


「あとは、身体を根本から作り替えることになるので、ここには戻れなくなるな」


「えっ。怪物になっちゃうとか?」


「見た目は変わらん。あと一分もないぞ。どうする?」


「は、まだ一分くらいしか」


「私が現れてから三分だ。馬鹿者」


「う~ん。うーん。あんたのメリットは?」


「大切なものを失わずに済むかもしれない。それだけの話だ」


 神を名乗る少女が遥か遠くの空を見つめ、再びこちらの目を見つめ「どうする?」と問う。


 全部が、嘘っぽい。手足を直してくれるといっているが、そんなのは実際には無理だ。

 こんな女の子に何ができるわけでもないと高をくくっていた。


 それでも、もしかしたら自由な身体を手に入れられるかもしれない。

 やけっぱちな心のままその選択を口にする。


 何も起こらなかったら大笑いしてやろう。


「いいよ。あの世じゃないなら、行ってやるよ」


 って、言っているそばから、少女は身の丈に合わない鎌を振りかぶった。


(つうかどこに隠していたよ)



「ごめん。お兄ちゃんお財布忘れちゃってさー。・・・お兄ちゃん?」


 ぱたぱたと病室に入って来た妹がみたのは、誰もいない病室だった。当然血などの痕跡は一切残っていなかった。


 ◆


「おい!ばかなんでそんなところに立ってるんだよ!」




 ★IFヴァージョン★


『それは僕がある病院に入院していたときのことでした』


(中略)


 雑誌は少女の身体をすり抜けた。


「は????」


(ゆうれい?)


 病院...幽霊


 ナースコールに手を伸ばす。が、『幽霊います助けてください』は男として人としてどーなんだ!


 虎ファン幽霊はまだそこにがっつりいる。


『どんな些細なことでも呼んで下さいね』


 にっこり優しい看護師さんの顔が浮かんで、ナースコールを押した。


『はい。どうかしましたか』


「あの...ちょっとだけ来ていただけますか」


 若干震えた声だったと思う。『すぐ行きますね』と声が返って来てほっとするが、幽霊はまだ消えてくれない。急いで布団を被る。


「私は神だ。お前に運命を与えてやろうとー」


(何もいない聞こえない。『まじもんの幽霊みた。コンビにいいから早くもどっtw来て』)


 急いで妹にラ○ンを入れる。病院内でスマホを切っているかもしれんが。

 念のためにスマホだけ布団からつき出して証拠写真を撮る。


「おい」


 虎ファンの子の不機嫌そうな声。小さな足音がベッドに近づいて来る。

 この足音の質感、気配・・・絶対、ホログラムやプロジェクトマッピングとか3DCGとかそれ系ではない。


 少女が立ち止まり、布団がめくられようとするが、光弘は必死に抵抗する。が指先に力が入らない。


 ついに布団がめくられ、少女の瞳と目がかち合う。


「おまえの寿命を五年差し出せばー」

「ひいいいぇ!」


 そこで、布団をめくっていた女の子の手が離されー、扉が開き顔馴染みの看護師が入っていた。


「光弘くん大丈夫?」


「と、虎ファンの幽霊が...」


「はあ。こういう場所だからそーゆーの見たって看護師や患者さんもいるけれど、虎ファンは聞いたことないわー」


「虎ファンの女の子いない?」


「いないわよ。一応、廊下の監視カメラは確認するから安心して」


 看護師さんの至極現実的な対応にほっとする。

 きっとあれは白昼夢とか、科学的で説明できる金縛りの類いでー


「お兄ちゃん!幽霊見たって!どんなだった!?」


 病室に戻るなり、好奇心丸出しで尋ねる妹に光弘は「虎ファンの女の子」と答える。


(夢...夢、全部夢)


 そこで、妹がしゃがんで何かを拾う。


「あーもう。お兄ちゃんどんな落とし方したらこんなとこまで飛ぶの?もしかして本当に幽霊に投げたとか?」


 くすりと笑う妹に、光弘は「はははは。まさか」と強張った顔で苦笑いを返すことしかできなかった。


 当然、監視カメラにもスマホのカメラにも怪しげな人物は何も写ってなかった。


『それからしばらくして、僕は退院しました。それ以来、僕はあの子に会っていません。あの女の子は一体なんだったのでしょうか?』


(※この番組はMさんの実話を元に一部再構成されています)

これはファンタジーです。実在の病気、人物、団体とは関係ありません。...虎ファンの皆様ごめんなさい!


後半は異世界召喚を蹴ってみたverです。なぜかホラーテイスト。

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