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貴族裏事情

ブンバーさんによる貴族のゴタゴタ説明回。話の本筋にはほぼ関係ないです。特に読まなくて大丈夫?

要約・・・玉突き婚約破棄のその後と第二王子も残念だったという話。

「ミッツ先生お元気で?」


 一人で暇しているとうるさいの(ブンバー)が現れた。


「お元気じゃねえよ。お前が現れたってことは昨日の件を嗅ぎ付けたってことでいいんだな」


「まあ、この狭い商店街を馬車で乗り付けたんじゃあ、さすがに噂になりますねぇ。焼き物屋が商品の器割られたってカンカンに怒ってましたよ」


「あれは道にはみ出して商品積み上げているのが悪いんだろ」


 陶器の椀が30個位重ねられた山が、まるで崩してくださいと言わんばかりに三山も道にはみ出しているのだ。


 ミツヒロもあそこを通るときには細心の注意を払っている。


「で?」


「別に...。ウィンドウショッピングを楽しんだだけで何も買わずに帰っていったよ。これ以上はー」


 ノーコメントと続けようとするが、それより早くブンバーの声が被さってきた。


「わかってますよ。情報を寄越せって言いたいんでしょう。エレナお嬢様風にいうのでしたら『イーブンじゃない』でしたか。てっきり王子が牽制しに来たと思っていましたが」


 そのとき、『興味ない』で済ませとけば良かったのに光弘はわざわざ聞き返してしまった。


「今さら牽制?平民を?」


「王子さまは婚約者の組み合わせ抽選会にあぶれたってところですかね」


「組み合わせ抽選会?」


「おや、ご存じない?」


「ワイドショー系はあんまり興味ねえんだよ。誰かが結婚したのはまあ『おめでとさん』でいいとは思うが、誰かが浮気しただの離婚しただのはきょうみねーし・・・ネタにされた身としては正直、怒りさえ覚えるのだが」


「ははは。これは手厳しい。もちろん有名なのはエレナ.スリーズ嬢でしたが、同日、もしくはそれと前後していくつか婚約破棄が起こってましてね」


 そこで、彼は一旦間を置く。話し出す気配がない。まあこちらの反応を楽しもうって腹なのはわかっているが、暇だしそれに載ってみるのも悪くない。


「ふん。あのレーコ様関連でってこと?」


「まあ、そういうことですな。その中にはエレナ嬢よりも早く行動を起こしたご令嬢も。トゥワイス家のご令嬢(19)は婚約破棄された当日執事と隣国に逃げた、とか」


「逃げて、貴族のお嬢様が簡単に外で生活できるのか?」


 エレナだって今回の留学に大量のお供を連れていった。彼女とて身ひとつで隣国に行く勇気はないだろう。


「しばらくはトゥワイス家も秘密裏に探していたようですが、モタモタしている間に令嬢はうまいこと隣国の王女の習字とロゼリア語の先生に滑り込んだようで、執事も大商会の会計士に。トゥワイス家が居場所をつかんだときにはいろいろ手遅れで、」


「・・・手遅れ」


 小さな声で「おめでた」と返ってきた。


「三ヶ月かそこらだろ?手早すぎだな」


「連れ戻そうにも、海を跨いだ隣国との仲はあまりよろしくない。なんせエレナ様の留学先の候補にも上がらなかった国です」


「あー仮想敵国ってやつ?」


「まあ、敵国って言葉はよしましょうや。なんにしても逃げ込んだ先が悪い。トゥワイス家のご令嬢が隣国に国家情報を漏洩したんじゃないかって疑いがかけられて、原因を作った宰相家とトゥワイス家は針のむしろ状態ですな」


「国をまたにかけたスキャンダラスな事件。エレナの奇行よりもそっちのほうがビックニュースじゃないの?」


「王家から箝口令が出されましてね。私らだって、火のないところに多少の煙を立てたりしますが」


「煙立てるなよ!」


「国を燃やすほどの大火事は望んでないわけです。・・・結果的にうっかりそうなることはあるかもしれませんが」


「うっかりとかダメだろ!」


「で、まあ他の貴族も駆け落ちなんてされたらたまったもんじゃない。

 早急に婚約者を選び直すか、両方が我慢して元の鞘に収まるか、って話になるわけですが、貴族ってのは幼い頃からがっちがちに婚約者を決められていて、身分に釣り合う人って今の段階じゃなかなかないです」


「ふーん」


「なので、婚約破棄した男性側と、婚約破棄された女性側・・彼らの親は水面下で復縁か、双方が婚約者のシャッフルで済ませようとしたわけですが、納得しなかった一部のご令嬢方は、再婚約を蹴ってしまったわけです。一抜けしたのはトゥワイス家のご令嬢。エレナ様は平民と付き合い、」


「付き合ってない」


「フォース家のご令嬢(16)は、美しい金の髪をバッサリ切り、名前を偽った上、今回のエレナ様のご留学に男装して随行」


 大迷惑な駆け落ちよりかはまだマシ・・・なのか?


「令嬢の中には自ら修道院に籠るから、慰謝料チャラにする代わりに元婚約者も修行して煩悩を洗い流せとか」


「この世界の貴族女子つえー。ってそれ令嬢が損なんじゃ」


「昔っからの幼馴染みですからねー。複雑な思いがあるのでしょ。

 エレナ様と同年代の高位貴族で唯一無事だったフィフス家のご令息も先日レーコ様との不倫がばれて、ワンズ家のご令嬢(10歳)にギャン泣きされたそうで。

 フィフス家の次男がワンズ家の次期当主に慣れるチャンスを棒に振ったわけです。誠にもったいない」


 序列とかは名前でなんとなく察することができるが、まあぶっちゃけ貴族の力関係とか家名は異国どころか異世界人の光弘にとって明日には忘れてしまう事柄だ。


「アルフレッド王子のシャッフル候補には当初トゥワイス家が上がっていたのですが、トゥワイス家は事態の発覚を遅らせるため、『娘の体調が優れない』と婚約を辞退。スリーズ家当主が復縁に乗り気だったので、エレナ様とアルフレッド王子との再婚約ー...をまだ狙ってます」


「まだ諦めてなかったのか」


「アルフレッド王子は再婚約に猛反発していたのですがね。王家ももうこれ以上評判を落とす前に第三王子にさっさと所帯持たせて田舎に引っ込んでもらいたい。『その女と結婚するのは自由だが、公爵、侯爵家の嫁を娶ってからだ』って言われて渋々・・・」


「いや、なんとか家とかで情報量パンクしそうなんだが、田舎にやるんなら所帯持たせるのにこだわらなくていいんじゃ?」


 結局表舞台から消えるのだから。


「第三王子以上に世間、主に男性から反感を買っているのが第二王子でして。

 十年ほど前からこの王子は貴族のご令嬢とかたっぱしから浮き名を流し、ご令嬢がたから『この子は第二王子の子!』という訴えがあふれまして」


「げ」


「正規で後宮でも作って記録を取ってたら問題がなかったんでしょうが、後の祭り。王家は『庶子だという訴えは一切認めない』と公爵、侯爵家に五十万ロゼ、伯爵家には100万ロゼ、以下の位のところに200万ロゼの慰謝料を渡したとか。 まあ、当然その慰謝料も私らの税金からを払われていますな。ってことで、今回のシャッフルではシングルマザー令嬢と縁を結ぶことになった貴族もいまして。いやめでたいですね!

 第二王子は『三年間の禊』として修道院に放り込まれましたが、その先でも貴族令嬢と秘密の会瀬を重ねているとか」


「泥沼すぎてアタマイタイ」


 王子全然懲りていない! 二十歳にもならない少年が、十近く年の離れた子持ち令嬢と自分の意思に関係なく結婚だか婚約だか...。貴族の世界って思ったより大変だなー。


「第三王子の隠居というか幽閉...は、第一王子が、嫁二人持つか、男児を生むかしないと無理ですね。第二王子は御祓の三年を過ぎても、還俗する気はないとか...。」


「第一王子の子供は王女様しかいないんだっけ?」


(あんだけ騒がれてエレナの親父さんまだ二人をくっつけようと...今回は王子も乗り気?)


 そこで、ブンバーは茶を一口すすり・・・


「で、ミッツ先生。イーブンになるような、面白くて適度に刺激のあるネタ、ありませんかね?」


 不覚!ブンバーの話にすっかり、どっぷり聞き入ってしまった。

 王子さまとの会話を漏らすのはやばそうなので、「良いネタがあったらな」と返す。


 それだけで、ブンバーは満足そうにうなずいた。


「トゥワイス家の騒動はエレナ様の留学の隙間に『令嬢たちのその後』ってタイトルで小出しにする予定ですから、酒の席で漏らさないでくださいよー。あ、あと先月分の原稿料です。再掲載分もちょっとだけ盛ってます」


 原稿料は打ち合わせ時に手渡しでもらっている。期待して封筒の中身を確認してみるが、封筒はいつもとほとんど変わらなかった。


「そんなヤバネタ言いふらさないよー」


 余計なことを言って、寿命を縮めたくない。っていうかヤバネタ聞かせるな!

フィフス家はチャリティーパーティーの時に息子自慢をしていた家です。

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