モノリス
今回はちょっと短め。裏設定的なもので本筋に関係ないお話。
「「「ふー」」」
子供たちに手を振られて、部屋を退場した三人は扉を閉めた途端、ため息をもらした。
「成功...したよな?」
ミツヒロの呟きに、
「...ええ」「はじめてにしては上出来じゃないか?」
エレナとイザベルが気の抜けた声で答えた。
三人はにんまり微笑み合い、誰からハイタッチを交わす。
「ぼくも!」
「ああ、ごめん。スベルもあんがとなー」
ミツヒロはしゃがんで、スベルとハイタッチ?を交わす。
エレナもイザベルもスベルにタッチし、頭をなで回す。
「ありがとー助かったわ!」「頑張ったな」
ひとしきり喜びを分かち合っていると、拍手が響いた。
「ブラボー!!ブラボー!ですよ!サイコーです!おかげでよい記事が書けそうです!」
ブンバーがハイタッチを求めて来るが当然無視。
「静かにしていてくれます?」
「もちろん!邪魔者は引っこんどきますよー」
落ち着いたところで、ミツヒロがエレナに顔を向ける。
「教室の宣伝は良いとして、なに勝手に勧誘しちゃってんの?打ち合なかったろう?」
「ごめんなさい」
講習会がうまくいった高揚感でつい言ってしまったのだ。
「使えそうな子は何人かいたけれど、門を叩かないことには始まらないね」
イザベルが答えながらむーんと背中を伸ばす。
「弟子を取らないって言っていたくせに」
「私が面倒見なきゃいけないのは息子たちだからね~」
そこで、話しかけるタイミングをうかがっていたリリアンが頭を下げる。
「本日はありがとうございました。もしお疲れでなければご休憩のあと礼拝堂をご案内しますが?」
「私は疲れたから茶を飲んでしばらく休んだら帰るわ」
イザベルはヒラヒラと手を振って拒否の意を示す。
委員長は高位貴族が参拝する実績がほしいのだ。こちらが宣伝に利用した以上、エレナも教会の宣伝に協力しなければいけない。
「ミツヒロはどうする?」
たぶん必要なのはエレナだけだ。別に無理して付き合ってもらう必要はない。
「俺?んー。ちょっと興味あるかな?」
(あら、意外)
「僕も見たい」
スベルも元気よく手を挙げた。
「じゃあ、はしゃぎすぎて迷子になったりこけたするんじゃなよ」
イザベルはいつも預けているミツヒロにスベルを託すと、あっさり帰っていってしまった。
◆
大聖堂のモノリスが立っていた。表面にはレリーフが彫られている。
「三女神の三女、ネヴァ様のモノリスです。一部台座の中にありますが、高さ5.7m、幅4.1m。下部中心に書かれているお方は、ネヴァ様、もしくは初代巫女だと言われています」
ミツヒロは圧倒されて、ぼけらーと眺めている。
(ふふん。日本とやらにはこんな美しいモノリスはないでしょう?)
「昔はレリーフに色が着いていて、中には暦石が入っていたそうです」
「暦石?」
この国の教会に詳しくないミツヒロが首を傾げる。
「巨大な円盤です...今は地中奥深くの...聖櫃に納められています」
「あー」
「一度、教会移転をしようとした時には、世界が震えたそうです。ですので移転も建て替えもせぬま千年経過してしまいました」
「...『強欲のペルソナ《仮面》3』」
エレナはその呟きを聞き逃してしまった。




