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『インタビュー』(裏)

インタビュー記事はほぼそのまま。雑談追加バージョンです。

◆令嬢xは実在した!!


記『この度は独占インタビューを快く引き受けてくださり、ありがとうございます』


「おほほほ。ぶっとばしますわよ」


令嬢x『おほほほ。よろしくお願いします』


記『では改めてうかがいます。あなたが令嬢xですか?』


「物売りに転落!ヒモ男に貢ぐ」「不良になった令嬢x!女子生徒を脅す!」「令嬢x、第三の女と社交界で鉢合わせ!装い被り火花散らす!!」「父兄襲来!」「令嬢x、恋人に抱き締められる!」


(抱き締められた覚えないんですけれどっ!?)


 そういった見出しが踊っている紙面を睨み、エレナは平静を装いながら言葉を探す。


令嬢x『虚像と誇張と誤報が入り交じっていますが、あなたがたがそう信じるのでしたら、あなたがたのなかではそれが真実なのでしょう?』


記『先程の令嬢xについてのご感想はー』


「全部カットです!当然でしょ!」


「面白いところなので、なんとか、こんな感じでいかがですか?」


X嬢『私は創作の中の『令嬢x』について回答しただけです』


「まあ、これなら」


◆運命の出会いは婚約破棄と共に!?


記『ミッツ先生を愛されてるのですか?』


「ノー。全力で否定させていただきます。折り紙の師匠として尊敬していますが、小説の方はできれば視界に入れたくありません」


X嬢『師弟としての縁はありますが、恋愛感情は今のところはございません』


まあ、これなら・・・ん?


「これじゃあ、小説のほうの師弟関係に思われてしまうのでは?」


「この国に折り紙工房って何件あるんでしょうかね?」


「「うっ」」


 折り紙工房なんて書こうものなら即身ばれだ。


「だいたいx嬢って、なんですか?」


「いや~。紙面の都合上、名前はなるべく短くしたいもので。紙面のそこらじゅうにご自身のお名前を載せられたくないでしょ」


「では、令嬢xでお願いします。変な省略されたくないですし」


記『では、まず不登校、家出について』


令嬢x『ええ、こちらは家の事情で、登校を控えていただけで、(わたくし)の判断というわけではありません。気分転換に家を空けることにもありましたが、ほとんど夕方前に帰宅しています。当然外出時は護衛をつけております』


記『ミッツ先生との出会いについて、詳しくお聞かせ願いますか?』


令嬢x『婚約破棄されて落ち込んでいたところを元気付けてもらいました』


「元気付けてねぇ。一部情報では、何かを投げた、と。いったい何をお投げになったんで?」


「そこは秘密でお願いします」


 今冷静に考えてみれば、国宝級の指輪を川に投げるなんて、不敬罪どころではない。

 指輪は今は、王家の宝物庫か、三女神の本神殿宝物庫に無事戻っているはずだ。


「まあ、そこは聞かないで置きましょう」


「あの、ミッツ先生ってのが気になるんですが・・・」


 その言葉が出るたびにシャルン英雄譚が頭にちらついてしまう。


「本名を出すわけにはいかないでしょ」


「俺もミッツって連呼されるの嫌なんだが。身ばれしたらどうしてくれるんだよ」


「・・・話を戻しましょう」


 いや、もうあの記事が、出ちゃった以上、他の新聞社も即座にバンブミッツスギータの正体を暴きに動き出すだろう。たぶんもう手遅れな気がする。


記『M先生はなんと?』


「『M先生』ってのもなんかいやだ」


 ミッツ先生ことミツヒロが渋い顔をする。


「ではM氏でよろしいでしょうか。ミッツ先生?」


「まあ、それなら」


令嬢x『暇なら工房に来ないかと彼に誘われて』


記『その時は一人だったとお聞きしていますが』


どこからどこまで調べているんだろう。


令嬢x『婚約破棄直後は一人の時間が欲しかったのです』


記『約一週間後でしょうか。川辺で、デートをされたようですが』


「デートじゃないです!ちゃんと護衛もいました!」


「王子のバカヤローっと?」


「うぐっ。」


エレナはミツヒロをきっと睨む。聞いている人はいないって言ったのに。たぶん情報源は逃亡していったガントほか、食堂の常連なんだろうが。当然大本はこの男だ。


令嬢x『川を眺めながら、『さようなら私の王子さま』と別れを告げただけです。王子への想いを振り切るために必要な儀式でした。彼は嘆く私にそっと付き添ってくれただけです』


◆王子は過去の人!?現在の本命は!?


記『今は王子のことをどう思っています?愛してらっしゃいますか?』


「ぶっちゃけ、恋心なんて微塵もありませんし、絶対王子と結婚したくありまりません。あらごめんなさいませ」


令嬢x『完全に吹っ切れました。王子とのことはもう遠い過去の話です』


記『慰めてくれたミッツ先生については?恋愛感情は?』


「それ、さっき『違います』っていいましたよね?」


「こちらとしても、「はい」か「yes」か「ウィ」の答えを頂かないと帰れないものでして」


記『男性としては見ていない?』


 ブンバーの問いに暫し考えて。


令嬢x『殿方は殿方でしょう。でも覇気が足りません。世界をまたにかける気概がないと』


記『眼中にないと?』


令嬢x『育てがいはあると思ってますけれど』


記『つまりは庇護欲をそそられると』


「はあっ!?そんなんじゃないです!」


令嬢x『そういうのでは、ありません(と頬を赤らめるのであった)』


◆M氏の意外な職業!?


記『彼の職業についてはどう思ってられますか?』


令嬢x『どう、とは?』


記『ピンクの作家であることについては?』


令嬢x『先ほど記者様からお伺いこと、この段になっては、なぜもう少し早く打ち明けてくれなかった・・・とは思いますが。ええ、この後じっっくり問い詰めさせていただきます』


記『弟子、と言っていましたが、あなたも小説を?』


「はあああ!?そんなわけないでしょ!!」


令嬢x『本日このときまで、まったく知りようがありませんでした。副業のことは...じかにお目にかかれたのでよしとしましょう。』


M氏『珍獣を見る目でじろじろ観察しないでくれるか(当日M氏も同席。ここまでほとんど言葉を発していないことからも力関係がうかがえる)』


令嬢x『あら失礼。気を悪くされたのでしたらごめんあそばせ』


記『今後の付き合いを変えるつもりは?』


「世の中、そういう職業もあるのだと・・・」


令嬢x『お付き合いを変えるつもりはありませんが、多少は態度がー関係が変わってしまうかもしれません』


 こればかりは、親から「会うな」と言われてしまえばそれまでだ。



◆今後について


記『学校はどうされるおつもりで?』


令嬢x『卒業までの課題、試験は全て終了しています』←オフレコ希望


「え、そうなの?」


 ミツヒロが驚きの声を上げる。卒業までの自由時間を増やすために結構頑張ったのだ。


令嬢x『勉学に励みつつ卒業までの間、しばらくは自分のしたいことをする予定です』


記『公爵令嬢としての役目は放棄するので?』


令嬢x『もちろん、わたくしの役目を忘れた訳ではありません。折り紙をこの世界の一大産業にのしあげて見せますわ』


「えーっと、折り紙の話は置いといていただきたいのですが・・・」


令嬢x『この貴重な時間、見識を広げることに費やす予定です。あわせて寄付なども行います。孤児院への支援は、お金だけでなく、別の方面からも支援し、一人一人が無事大人になって生活していける社会を築いていけたらと思います』


 実際のところは、貴族の義務として、毎年、チャリティーパーティに形ばかりの出席をし、孤児院の慰問をし、一定額の寄付はしていた(当然公爵家のお金で)が、エレナ自身は救民活動に関心を払っていなかった。


 が、現状を引き伸ばせるなら、それっぽい綺麗事を並べておこう。


記『ご結婚のご予定は?』


 (いやいや、あんたが全部お見合い話を跡形もなく消し去ったんでしょうが!)


 机をバンバン叩きたい衝動をこらえ、にっこり微笑む。


令嬢x『それは親が決めることですので。もちろん折り紙は結婚後も続けていきたいと思っていますわ』


 理解のある夫にそうそう都合よく当たるわけがないだろうが、なんとか説得して、細々とでも...いやこそこそしたら浮気を疑われかねない。夫を巻き込んで大ぴらに活動を続けていけたらと思う。


 今から野望(ゆめ)が広がる。


 ふふふと笑うエレナを一同気味悪そうに見ているのだが、エレナは気づいていない。


記『折り紙はエレナ嬢にとって何ですか?』


令嬢x『すべてですわ!』


記『あの...ではM氏は?』


令嬢x『師匠ですわ!』


記『もうちょっと具体的に』


令嬢x『あれは...私が婚約破棄にうちひしがれていたとき、美しい紙細工をプレゼントしていただきましたの。それは今では私の宝物です』


記『見せていただくことは?』


令嬢x『私が作ったものでしたら、こちらに。彼からいただいたものは家に保管しています』


記『とても美しい花ですね。』


令嬢x『はじめての作品で不出来ですが(エレナ嬢かわいらしくはにかむ)』


「スケッチしても?」


「同じものがそちらにございますので是非お買い求めください」


 エレナはすかさず、折り紙の購入を促す。ブンバーも多少の絵心はあるが、やっぱり実物があった方がよい。ブンバーは迷わず桜ボールを購入した。


記『それは、二人の間に咲いた小さな恋の花だった』


◆王子と令嬢について


記『あと、レーコ嬢をいじめていたと』


令嬢x『王子に50回ほど、レーコ嬢に30回ほど口頭注意しましたが、さすがにそのあたりで私も疲れてしまい、割りきった対応をとっていました。新学期のパーティーで婚約破棄されたのは予想外でしたが』


記『取り巻きに命令して嫌がらせしていたとか』


「取り巻きに命じるくらいなら、自分で殴りに行くことを選択します。ずっと一年以上我慢してきたのに王子とレーコ嬢を殴る快感をなぜ他の人に譲らないといけないのですか♪あの場なら王子を殴っても許されたでしょう♪」


「えーっと『そのような事実はございません』でよろしいでしょうか」


 若干ひきぎみのブンバーにエレナは「ええ」と短く答えた。


記『本日はインタビューに応じていただきありがとうございました』


「もう二度と応じる気はありませんけれど」


令嬢x『次の機会がありましたら、もう少しお手柔らかにお願いしますわ』

三女神...建国王シャルノ(シャルン英雄譚の元ネタの人)に嫁いだとされる姉妹神。王族は三人まで妻を持てるのはこの神話に由来。今のところはどうでもいい裏設定。

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