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悪役令嬢とどきどき

「それで?活きの良いカモを二匹も逃したってのかい?」


「ひいいぃすんません!剣の女が邪魔さえしなければ。挙げ句、なんだかわからんごみくずを押し売りされまして」


『フラワーガーデン』のマリーゴールドは男の手にある折り紙を見る。マリーゴールドの知る折り紙とは趣がずいぶん違う。


 キラキラ光る花のオブジェはそこそこきれいだ。


「謝るなら支配人に謝んな。舟と花、ダイヤ、鳥。ぷ。何この人形。あとはなんだかわからないわね...。...これは使えるかしら」


 ◆


 マリーゴールド、いやマーガレットは翌日勢い込んで馴染みのアクセサリー職人のところに行った。

 いつものところで商売していたイザベルはマーガレットの姿を見つけると笑顔で声をかけた。


「昨日のアレ、あんたんところのぼーずだったのかい?」


「悪かったって、”あんた“には二度と手を出さないように言っとくよ」


「んー忠告。あの娘、あんたや私が思うよりもずっと上なのかも」


 かつて恋敵だった女の目にマーガレットはわずかばかり危ないものを感じる。


「わかった。...今さら見つけてどうするつもり?」


「さあ」


「それよりも、これはなんなのかしら?」


 花についてはわかったし、鳥や舟、風車もわかった。奇妙なダイヤと角の生えた三角山。


「さあ、ときめかないものには興味ないからね。週に二日くらい来るらしいから、そのとき聞いてみな」


「あんたも気が向いたらこっちゃ来なよ」


 子供三人も抱えて路頭に迷うくらいならと何度か誘ったが、


「あはは、ときめかないからね。心配してくれるならついでに買ってってくれよ~」


 いつもイザベルの答えは同じだ。


「若い娘に宣伝しとくよ」


 マリーゴールドもいつもの言葉を返して、その場を去った。


 ◆


 イザベルとの二回目の邂逅の四日後。エレナは一週間ぶりにスギタ工房を訪れた。


「ふふーん。なんと二日で経費差し引き5800ロゼ稼げました」


「は?5800ロゼ?嘘だろ?」


 ミツヒロの呆けた顔がなんとも心地よい。

 この調子なら、5日もあれば先月の売り上げ楽勝で越えるだろう。


「稼げたんなら君の顔がかわいいからだろ」


 ブチ。


「はああぁ!?」


 なぜこの男はこうも否定的なんだろうか。


「買っていくのは女の子が多いのよ。男連れの時は逆にこの顔が災いしてさっさと前通りすぎるし」


「顔自慢か」


 ぷち。


 エレナの中でナニかがぷちぷち良い音を立てて切れ始めている。


「ええ、そうです。笑顔がかわいいからです!笑顔は0ロゼですもん!」


 最初は売れないからため息をついていた。


『売れないからって怖い顔してたら、余計売れないよ。売れたときのこと考えて笑ってみな。あと最近で一番嬉しかったことを思い出すとか』


 イザベルのアドバイス直後も貴族的な含み笑いではなかなか売れなかったが、はじめて折り紙がおれたときのことを思い出しながら、イザベルの向日葵のような笑顔を真似て笑ったら、結構売れた。


「赤風車通りで出会ったイザベルさんって人がー」


「赤風車?」


 ミツヒロの目が怖くなる。彼はエレナを睨んだあと、護衛の方を見た。サンドラは、彼の問いにすぐさま答えた。


「馬車通りのすぐ近くです。私もおります」


「なら、大丈夫か。でもできればもうちょっと違うところで商売した方が・・・」


「その、イザベルさんって人がたくさん買い取ってくれて、翌日にはこんなんになってました」


 どんときらきらのビーズの折り紙を見せた。


「ふ~ん」


 が、彼の心にはあまり響かなかったようだ。


(あれ?)


 もうちょっと驚いてくれると思ったのだが。

 そこで彼と出会った時のことを思い出す。


(そういえば国宝級の指輪を尻ポケットに突っ込むような男だったぁ~)


 彼は光り物に価値を見出だしていない。

 彼をやる気にさせるには、もう一押し、二押し必要なようだ。


「なんと一個5000で売ってました。」


「5000ロゼで!?まじ?」


 そこで、やっと手を顎にやって真剣に考えてくれると思ったら、


「ほぼ、その人が買い取ってくれたってことだね。で、その人とのご縁がきれちゃったらどうするの」


 なんで、この人は消極的ネガティブ思考なんだ。


「その人との縁はがっつり掴んどきます!とりあえず、稼いだら、窓のこと検討してくださいよ! ・・・もしかしてうちでこっそり全工程できたりしませんか?」


 わざわざ、ビーズを渡してくれたのなら、イザベルはまねされることも想定していただろう。

 全工程この工房でできたのなら、一個5000『丸儲け』だ。


「うちにあるのりじゃ無理だし、こんな細かいのピンセットで取り付けるなんて考えるだけでイライラする。その人の下請けになるの?」


「いえいえ、互いに対等に『提携』するのです!」


「こんな石をつけるだけでねぇ?まあ、うちで使っているのりじゃ、こういう石やビーズ玉を取り付けてもぽろっと落ちてしまうよ」


 うまくいかないものだ。どんなのりを使っているかイザベルから聞き出せれば・・・


 そこで、新聞が目に入る。


『第三王子婚約破棄難航!?公爵令嬢未練タラタラ』


 ぶちり!


「はあ!?」


 思わず新聞を真っ二つにして、くしゃくしゃにしてしまった!


「おいおいおい!せめてくしゃくしゃにはしないでくれ!古新聞は試作に使うんだから!」


「私の名前は『おい!』じゃありませんの!」


 怒りもまま新聞紙のシワを伸ばす。


『令嬢x物売りに転落!? ヒモに貢ぐ?!』


「ヒモってなんですの?」


「んー。本人はまったく働かなくて、女に生活費を稼いでもらっている男?」


 彼は、エレナに意味ありげな視線を送る。


「じゃあ今日はそうゆうことで、お開きに」


「まだ今日はなにも教えてもらってません! ほんとあなた真面目に働く気があるのですか?」


「最低限の生活費は賄えているし、もう教えることは何もないし...なぜ気づかないんだ...」


 ミツヒロがため息をつくと、サンドラもうなずいた。


「お嬢様ですから」


「傷が浅いうちにちゃんといい婚約者みつけなよ」


 ミツヒロはなぜか優しい目でエレナの肩に手を置こうとする。


(えっ?)


 だらしなく着崩したシャツの隙間から胸元がのぞいてー

 が、彼は慌てて手を慌てて引っ込めた。


「もうなんなんですの~」


 触れられると思って、どきりとしたのに。言ってることも大きなお世話だ。もやもやとした気持ちは不完全燃焼のまま、弱々しい声へと変わった。


(彼が服を着崩しているなんていつものことじゃない)


 それよりも、令嬢にあるまじく、異性の胸元を凝視してしまうなんて恥ずかしい。


「服はちゃんと着てくださいまし!」


「え、ちゃんと着てるけれど?」


 とりあえずシャツ着て、ズボン履いてたらそれで十分だと思ってるんだろ、この男は、もう~。

こどもの日と言うことで人生初兜を折ってみた!

二度ほどつまづいたけれどそれっぽいものが完成しました。

が、普通の白紙を使ってしまったのはちょっと失敗。めりはりの利いた兜を作る場合は、普通の折り紙をおすすめします。

手裏剣よりかは簡単でした(個人の感想です)。


小さい頃は新聞紙で作ってもらった兜を頭に被せてました。

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