王宮秘書参事官2
四日目
「今日はチャーハンで」
いちおう、1週間文のねたは思い浮かんでいるが・・・このまま使えない食材が増えていくと、1週間 最初に好き嫌いは認めないって行ったから最悪無視して出すのもありだが。
ぱらぱら系のご飯に卵、ハム・・・ゆでたコーンに黄色いパプリカをこっそり少しだけ加えて、(ナクトとヒューが)牡蠣の煮汁からかなり頑張って作ったオイスターソースとバジルでぱらりと仕上げた。(ナクトが)
スベルが、取引のある取引のある茶商を教えてもらって、烏龍茶を入手してもらった
『それなりに美味じゃ。多少変な味がするが』
(パプリカ入れたのばれたー!)
『えーと具材に変なのが入ってましたか』
『具材はとくに問題なかったが、味付けに魚っぽい癖が・・・いや、不味くはなかったぞ、ほんとだぞ』
まさかのオイスターソースがあかんとか・・・中華料理に使っているイメージなんだけれどな。難しい。
『お主は茶に詳しいようだが、どのような茶が好きだ』
『ぜんぜん詳しくないですよ。好きな茶は、ほうじ茶と玄米茶ですかね。』
むしろ家ではそれしか出てこなかった。お抹茶は抹茶アイスくらいしか食べたことがない。
『ほうじ茶?玄米茶?』
『どっちも緑茶ですね。ほうじ茶はよくわからないですけれど、緑茶に玄米を混ぜた茶ですかね。』
『そうかそうか』
『明日の食材はー卵、キノコ、カニー』
「あんなに残してて、朝とかちゃんと食べているのかねー」
隙間から様子を見ていただろうヒューがぽそりとこぼす。
チャーハン以外にも料理はいくつもあったが、あまり手をつけている様子がなかった。
「中華粥とか?たぶん白ご飯に鶏ガラだしとタマゴを使って作るのかな」
「メニュー的にはこってり系がつづいているから、茶粥とかどうっすか?」
一度、急に食べて見たくて作ったが不評だったやつだ。当時使っていたのは紅茶だったし、
我が家ではほうじ茶のティーパックを鍋に入れて作っていた。
「前に作ったときは紅茶で本来はほうじ茶を使ってたな」
「ほうじ茶ってなんです?」
ヒューが帰り道でしつこく作り方を聞いてくる。
ほうじ茶はたしか、一度使い終わったか湿気ったかを香ばしくするために一度炒めるんだったか・・・。
「ただ普通に作ってもすっごく美味しいってもんじゃない(※個人の感想です)から、漬け物とかご飯のお供があった方がいいな」
◇
五日目。
ナクトは先に王宮に行ったということだったので急いで向かった。
『やっぱり私の予想通り、芙蓉肉じゃな!卵の厚みがずいぶん薄いし、飯に載せるのは面妖だが。』
材料から、料理を当てる遊びをしているようだ。
光弘の言葉では『天津飯』と呼ばれるものだ。
一応、こっちの餡は塩と醤油とあと昆布と魚の出汁にして、酢豚との差はつけてみた。
『個人的には、ぐちゃぐちゃに崩して、白米にあんをたっぷり絡めて食べるのが好きですね』
『今朝の粥もなかなか良かったが、これもなかなかいけるぞ。キノコが我の知っているものとずいぶん違うようだが・・・』
光弘は首をかしげる。
とりあえず、ロゼリアはなんの食材もない国という疑いは晴れたようだ。
『マッシュルームですね』
現時点で人工栽培可能なきのこで、手に入りやすいきのこナンバーワンである。
『前にお出しした麻婆茄子の辛さはちょうど良い感じでしたか』
『茄子をまた出すつもりか?』
公主の顔にけんが走る。
『いえ、使う食材はエビですね』
「粥って・・・ナクト様何かした?」
「朝方、一足早くお粥を作りに来たんです。お供は、キュウリの塩漬け、はちみつ梅干しを用意して。大変喜んでいましたね」
「そうだったのか。ありがとう」
「茶粥と鶏ガラ粥の作り方は厨房の料理人に教えて、後はのりの佃煮を渡しておきましたので」
◇
六日目
ヒューがカラッと揚げた海老にピリ辛ソースを絡ませる。
聖誕祭のためにあらゆる食材が揃っててよかった。海老、カニも生きたままこちらに運ばれているようだ。
『エビチリです。これはちょっと辛くて』
『何もついていない海老は?』
『好みがわからなかったので、マヨと、タルタルはお好きな方をつけてご賞味ください』
そして次の日のメニューも読み上げる。が、彼女は漫画の方に夢中だった。
◇
『棒々鶏です』
チキンとキュウリとトマトと茹で玉子、臭みの少ないチーズ、ポテトサラダ、垂れにゴマだれと、バジルソース、ケチャップ、マヨネーズ。でとりあえず豆板醤もそえとく。
最後にあれである。
『また、あのかたいまんとうではないか!』
パンを投げられる。
『食事を無駄にしないでください。』
作っている最中に、中華冷麺の素材に近いよなと思っていた。が、今日は当初の予定通りパンを用意した。
パスタにちょっと辛めの麻婆を乗っければ、とりあえず担々麺ぽいものにはなるし、中華まんもマール食堂の冬メニューにあるが、もうそろそろねたがピンチなのは事実。この1週間の食材の半分以上は使い回している。
光弘が作ったもの以外の物は感触率3割りと行ったところらしい。
『ネタ切れです。具にたれをつけて食べるだけでもいいですし、パンに挟んでも良いと思いますよ。パンはなるべく柔らかい目のパンを選んでいますが』
『昨日よりもましだが・・・』
『姫様は陛下とのご結婚を望んでおられるとか?』
『そうじゃ。たくましい身体。涼やかな青い瞳、金の髪!素敵ではないか』
『鬼にはみえないと?』
『!?』
陛下から謁見の際、ちょっとおびえているという情報をもらったが、まさか図星だったとは。
陛下とほぼ同じくらいの背を持つ光弘には恐怖を感じていない様子なのに、だ。もっとも光弘の方が肩幅が圧倒的に足りないが。
『嫁入り道具、侍女、料理人、毒味...頼りになるものをすべて捨てて嫁がれる覚悟はできてらっしゃいますか?』
『は?』
『この国では異国から嫁いだ妃はなにも持ち込めないのです。王妃様も国境で、ドレスさえもお召し返されたそうで』
『なんだと?』
『もちろん嫁がれた際には、道具も侍女も、料理人、毒味もこちらで用意されますが、そのすべてがシャクヤーの言葉のお読み書きができるとはかぎりません。通訳も家庭教師も用意されるでしょうが、今のあなたのロゼリア語では意思疏通もむずかしいのではありませんか』
口を挟めないでいる姫に一気に追い討ちをかける。
『あなたはわたしが細かく食材をお伝えしているのに、わからない食材の確認を怠りました。説明されていてなおその状態なら、毒も聞き逃してしまうのでは』
『うっ』
『こちらで用意された毒味は本当に信用に足るものですか?こっちのご飯が口に合わないと飢えてしまいますよ。精神的に』
手紙のやり取りは許可されているらしいから、レシピを送ってもらうことは可能だ。
先王陛下が退位されてから、王妃様はパン職人をエデルから呼び寄せたが、職人がエデルと同じようにパンを作っても、上手に膨らまなかったそうだ。
『そ、そなたを召し上げる』
冗談じゃない。
『私を召し上げになると?先ほど料理は打ち止めだといいました。これ以上はどう転んでも新しい料理は出てきませんよ。嫁がれるのでしたら一生こちらのご飯を我慢する覚悟で』
仮にこのお姫様が側室の座に収まったとしたら、王妃様が自分がやられたのと同じ方法で翠月公主様を追い詰める可能性だってある。
『それに嫁いできたばかりの姫がエ○作家をお抱えにするのはさすがに評判がよくないですし』
『エ○?』
『猥談集』
『ワイダン?』
『えーもうその界隈ではそこそこ有名でして。姫様が嫁いだ早々エ○作家の男をそばに使えさせるのは無用な噂の種になってしまいます』
貴族的には、結婚後浮き名を流すのはありらしいが・・・。そこは誤解させて・・・
『女になればよかろう』
女?オンナ?おんな・・・
中華的なハーレムにえっぐい制度があったような・・・
『ムリムリムリムリ絶対ならないからな!つーかせっかくデザート準備したのに引っ込めることになる』
『菓子か!』
『ミルクと豚の皮の脂と砂糖で作ったゼリー。季節の果物全部のせのフルーツポンチです』
『皮の脂?それが菓子になるのか?』
皮の脂って聞いた時点でちょっと嫌そうな顔だ。
少なくとも、子供たちには人気だったが。
シロップの中にはぶどうや、なし、りんご、ドライフルーツなどとともに白くて小さな四角いゼリーが入っていて、上にはなんだかわからないベリーがちょこんと載っかっている。
『うっまい。ちょっと杏仁豆腐に似ているな』
『ここにいてもニセモンの料理しか出せませんよ。』
◆
翌日も王様に呼ばれた。
まだ帰ってなかったのかあの姫ぎみ。つーかなんでエレナまで喚ばれた。
「『ここに住むのは諦めたが、ミツヒロを連れ帰る』とうるさくてな」
「若い女性に大人気ですこと。あ・な・た」
「ひー。妻子持ちなんで、って断ってください!」
「妻も女官にしてやると」
国王陛下の言葉にエレナの笑顔が一瞬剥がれる。
「ふふふふ。あのお姫様いい度胸ね。元公爵令嬢たるわたくしを女官に?上から目線で命令?」
「ひー!!」
さんざん駄々をこねた翠月姫様は三日後帰っていかれた。




