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最終話 VRクリエイターになんてなるんじゃなかった

 VRクリエイターになんてなるんじゃなかった。


 かつて人類の室内娯楽の究極系とも呼ばれたVRサービスだが、地球に異星人が襲来し、星間紛争を経て外宇宙との交流が始まるとその勢いは一気に衰えた。


 異星人の宇宙船が放った妨害電波により地球上の無線LANはことごとく機能不全に陥り、その際にVRサービスを利用していた人々が廃人と化したことで一時期はVRサービスの利用そのものが禁止された。


 異星人とのコミュニケーション手段の確立により紛争が終結し、地球人と異星人との間で平和的な交流が始まると、人類の芸術は新たな局面を迎えた。



 人類が美しいと感じるイラストを異星人は理解できず、ヒトとは異なる生命体である異星人はVRという概念をそもそも理解できない。


 人類と異星人が唯一共有できるのは文字を媒体としたコミュニケーションであり、この時代になって小説という文化は再び最もメジャーな室内娯楽となった。


 異星人はヒトの美男子や美女のイラストを美しいと感じないが、「美しい人」という言葉の意味する所は理解でき、今では地球人は異星人が書いた小説を楽しみ、異星人は地球の文化を描いた小説を楽しんでいる。


 VRサービスが娯楽として機能し得なくなり、俺は慌てて小説を書いてみようとしたが、ひい爺さんの頃の文化を今から理解するのは至難の業だった。


 VR制作会社が倒産してからというもの俺は未だに無職であり、親父や爺さんのように趣味でクリエイターをやっていた人たちが本当にうらやましい。


 今は妻の稼ぎに支えられているが、小説を書こうとしている暇があれば仕事を探すべきだと俺もそろそろ気づいてしまった。



 俺は人生で芸術家として大成できなかったが、もし息子がクリエイターになりたいと言い始めたら、その時は小説家になりなさいと助言してやろう。


 (完)

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