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第2話 漫画家になんてなるんじゃなかった

 漫画家になんてなるんじゃなかった。


 かつてクールジャパンの代名詞と呼ばれた漫画文化に幼い頃からはまり込んだ俺は、芸術大学で美術の技法を学んだ上で週刊少年誌の漫画家としてデビューを果たした。


 そこまではよかったのだが、まさか四大少年誌の一つと呼ばれた雑誌が部数減少を理由に休刊になるとは思わなかった。


 平成から令和にかけてウェブ小説が書き下ろしの小説を駆逐したように、漫画も今では雑誌や単行本ではなく無料の投稿サイトで読むのが一般的になっていた。


 その上さらに過去の名作漫画が月額制で読み放題という時代になり、新作漫画はよほど飛びぬけたクオリティを持つ作品以外は読者から見向きもされなくなった。


 それは俺も例外ではなく、漫画のサブスクリプションサービスに登録された俺の作品はろくなPVを稼げず、無料の投稿サイトで公開されている素人の作品の方がよっぽど読まれている。


 兼業作家だった親父の勧めで塾講師という本業を持っていたからよかったが、そうでなければ俺は今頃結婚もできていなかっただろう。



 それなのに……


 塾の宣伝のために高校受験の指南動画を「ヨーチューブ」で公開してみたら、ウェブ漫画とは比べ物にならないほどPVが増える。


 小説や漫画は興味のある人しか見ないが、インターネット動画は誰でも見る可能性がある。


 そのことに気づいた俺は描いた漫画を動画形式にして配信するようにしたが、元々動画を専門にしてきたクリエイターの技能には遠く及ばず、そもそもヨーチューブでは紙芝居にした漫画などより自主制作アニメの方がよほど人気だ。


 塾講師から塾長へと昇進した後はもはや動画を作っている暇などなくなり、俺のクリエイターとしての人生はここで終わってしまった。



 俺は人生で芸術家として大成できなかったが、もし息子が漫画を描きたいなどと言い始めたら、その時は漫画家になんてなるなと言ってやろう。

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