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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ウフ〜探偵助手奮闘記 ワトソンだってホームズになりたい〜

作者: 朱坂卿

江草珠里(えぐさじゅり)

16歳の女子高生。

推理力からっきしな未熟者探偵。


ついたあだ名はウフ。


江良陸夫(えらりくお)

探偵事務所所長。

こちらは名探偵。




四月一日陽子(わたぬきようこ)

珠里の親友。

16歳。



品賀和(しながあい)

揚子景(ようすけい)


二人合わせて"しながわようすけ"だと思われていた、江良探偵事務所職員。

 #問一 消えた凶器は、どーこ行った?


「じゃね、珠里(じゅり)!」

「うん、まったねー!」


 高校の校門で。

 私は親友と手を振り分かれた後。


「……うっしゃあー!」


 即刻駐輪場に赴き、自機(?)たる自転車に乗って、飛ばして目的地へと急ぐ。


 髪を靡か……せるほどには長くはない、ベリーショートだけど!


 向かう先は。


「遅いぞ、30分前には来いといっただろ!」

「あ、すみません師匠……その、掃除が長引いちゃって。」


 とある犯行現場。

 そうしてその前で私は勢いよく自転車を降りるが。


 早々に師匠――私立探偵の江良陸夫(えらりくお)

 所々茶と白の市松模様が入った服に、帽子にパイプ。


 典型的な探偵コスに身を包んでる。


 あ、別にコスプレじゃないんだけどね。


「何度も言うが……学生の身だからと言って遊びじゃないんだぞ!」

「は、はいすみません!」


 あーあ、また言われちゃった……。

 まあ、推理に関しては特にど素人の私がこんな有名探偵の助手になれたこと自体奇跡なんだけど。


 いやだとしても、だとしてもよ?


「まったく、これだから所詮ウフ()は!」


 ウフ――フランス語で卵とは何よ卵とは!


「そんなんではひよこ(プーサン)すら夢のまた夢だぞ、ウフ!」

「は、はい……」


 もう、また言った!

 ウフウフウフ、うるさいなあ!


 そんなに何がおかしいんですか?

 と、食ってかかりたい所だけどここは我慢してあげる。


 まったく、どっちが大人なんだか!


「おい、何をボケッとしてる? 早く来いウフ!」

「! は、はい!」


 またまた言ったなあ、もう!

 私は苛立つけど、今は抑える。


 アルバイトでも、社会に出てることには変わりないし。


 そう、社会人になったらある程度は自分の気持ちはどうでもいいと思うことが大事なのよ!


「では……これからお前のようなバカにもわかるように言うが」


 ……と、頭じゃ分かってるのよ頭じゃ。


 だけど……ムッキー!

 まったくう、いちいちムカつくなあ師匠は!


「ここが犯行現場のアパートだ。」


 はいはい。

 師匠が言うには、このアパートで一人暮らしの看護師女性が死んでいたらしいの。


 お名前は、楠木理子(くすのきりこ)(25)独身。

 あ、独身はいらなかったかな。


 まあ、それはさておいて。


「まあこの部屋はオートロックなんだがな。」

「へえ……って! 何ですかそれ、そりゃあ簡単に密室にできるでしょ!」


 いやいや。

 私は師匠の言葉にズッコケそうになった!


 それって、密室でも何でもないでしょ!


「いや、それがな……妙なことがある。」


 ……はい?

 妙なこと?


「容疑者は楠木の恋人・中原。だが…… 」


 ん?

 それの何が変なんですか?


 まあ、その後師匠が詳しく説明してくれたところによると。


 アパートに備え付けられていた防犯カメラに、その中原が入る所に出る所両方映っていたんだけど。


 何故か、彼は死亡推定時刻辺りにアパートに二回出入りしていたの!


「更に……被害者は心臓を一突きにされていたのだが。その凶器が、見つからないんだ。」


 ……ええ!?


 い、いやますます分かんない……

 どういうこと!?


 ◆◇


「だから……俺じゃないっすよ!」


 容疑者の中原忠志(なかはらちゅうじ)(30)独身。

 いや、だから別に独身はいらないっつーの私!


 まあ、さておき。

 中原は、取り調べを受けていた。


「お前が監視カメラに映りこんでんのは既に分かってんだよ! それも二回もな。さあ……白状しろ! お前がやったんだろ!」


 絵に描いたようなベテラン刑事が、中原に詰め寄る。


「俺がやったっていう決定的な証拠でもあるんすか!?」

「む……それは。」


 まあだけど。

 やっぱり、証拠はないから決定打には欠けるのよね……


 ◆◇


「うーん……」

「おうなんだ! 卵にヒビが入ったような皺、顔に寄せやがって。」

「あ……"ようすけ"さん。」

「いや、俺は名字が揚子で名前が景だよ!」


 事務所に来るなり。

 私は自分に声をかけて来た先輩の名前を、また間違えてしまった。


 軽くパーマのかかった短髪の揚子景(ようすけい)さん。

 この江良陸夫探偵事務所の先輩助手。


 まあ、もっぱら事務担当だけど。


「まあまあ揚子君! この顔は、また江良先生にいびられて来たって顔だよ! ねえ、珠里ちゃん?」

「あ、"しながわ"さん!」

「いや、あたしも"しながわ"じゃあなくて……品賀和(しながあい)! あたし品賀。しーなーが!」


 ロングヘアのそこそこ美人のこのお姉さんは、今彼女が言った通り品賀和(しながあい)さん。


 さっきの揚子さんと同じで、この事務所の先輩。

 二人合わせて、"しながわようすけ"さんだと思ったんだけど。


「さあて……しながわようすけさん」

「だーから、揚子だって!」

「品賀だって!」


 ……どうやら、一人ずつの人間みたいね。(まあ当たり前だけど)


「まあだけど……品賀さんのおっしゃる通りです! 師匠ったら相変わらずのモラハラっぷりでひどいんですよ!」

「あらら……まあ、でも仕事だけはできる人だからね〜!」


 ええ、そうです品賀さん。

 はあ、本当にやんなっちゃうな〜……


 まあ、それはさておき。


「さあて……事件情報、推理しないとね。」


 私はだけど、気を取り直して。

 事件を整理し直すわ。


 まず、この事件は看護師の楠木さんが殺された事件で。


 容疑者はその男・中原。

 ……なんだけど。


 その中原は奇妙なことに、楠木さんの死亡推定時刻前後に二回出入りしている所を見られている。


 そして更に奇妙なことに、楠木さんの胸を一突きにした凶器は見つからない。


 流しにあった包丁からは、確かにルミノール反応と僅かに楠木さんのDNA型が出たらしいけど。


 ルミノールが炙り出したのは包丁の先っちょに少しついていたくらいで、多分楠木さんが以前料理をしていてちょっと付けちゃったんだろうってのが警察の見立てらしいわ。


「包丁で刺したんじゃないとすれば……犯人はバタフライナイフとか持ち込んだとか? うーん、でも警察がそれ見つけられないのかなあ……?」


 私は、頭を抱えた。

 ……あー、もう!


「ねえ、ところで何を今日は怒られたの?」

「え? あ、それは」


 と、その時。

 しながわさん……間違った、品賀さんが私にそう聞いて来た。


「あ、分かった! お前、現場の何かを舐めたんだろ!」

「……は?」


 と、それを。

 ようすけさん……間違った、揚子さんが茶化して来た!


「いやあ、ちょっと古いけど……お前、"ペロッ! ……これは青酸カリ!?"とかやったんだろ?」

「な……そ、そんなことやってません! 私は……ん!?」


 私はムキになり、否定するけど。

 待てよ、と首を傾げた。


 まさか――


「そうよ……それよ!」

「……へ!? お、お前本当にそんなことを」

「違いますう! ……さて、師匠に電話しないと!」


 揚子さんは、何か勘違いしてるみたいだけど。

 私、分かっちゃったのこのトリック!


 ◆◇


「ほ、本当なんですか江良探偵? トリックが分かったって」

「ええ……勿論本当です。」


 その次の日。

 私の連絡を受けた師匠は、意外にもあっさりと警察に話を通してくれた。


 舞台は、現場となった楠木さんの部屋で。

 容疑者中原の、立会いの元。


 師匠と私、そして刑事さん数人を交えて。


 だけど師匠に連絡した時は、馬鹿にされるんじゃないかと思ったけど。


 そうしなかったどころか、私から話を聞き出そうとはせずに私に任せてくれると言ってくれた。


 ……これは何か、陰謀の予感がするけど。


「まあそれは……うちの助手が話してくれますから。」

「……はい。」

「む! あ、アルバイトの女子高生ですか?」


 ……あらあら。

 私を刑事さんは、疑いの目で見てる!


 ええええ、そう思われるのも分かります……

 でも、ここはお聴き下さい!


「では……まず犯人は、やはりそこの中原さんでした!」

「な、何!?」


 私はビシッと、中原さんを指差した。


 ◆◇


「で、でも! 現場から凶器は出なかったんだろ? じゃあ、俺が殺したんじゃ」

「いいえ、あなたが使った凶器は……やはり、ちょっと血がついていたあの包丁でした!」

「……何?」

「……ほう。」


 お、これはこれは!

 中原も同様して、師匠も満足げな表情してくれてる!


 これはもしや……行ける!?


「だ、だけどなえっと……江草さん、だったかな? あの包丁に付いていたのはな、胸を一突きにするには少ない血の量なんだよ?」


 ええ、刑事さん。

 確かにそうです。


 ……だけど。


「血が付いていなかったということは……ずばり! これは毒殺です! 犯人は包丁に毒を塗ってそれを被害者の胸に刺し! 被害者を殺したんです!」

「……なっ!?」


 や、やった!

 ついにできたわ!


 ありがとうようすけさん(間違えだけどまあいいわ)。


 そう、あの時……


 ―― お前、"ペロッ! ……これは青酸カリ!?"とかやったんだろ?


 あの言葉が、ヒントになりました!

 さあ、観念しなさいよ中原!


 これで……


「ふふ……はははは! バカかお前は? ……刑事さん、教えてやってくださいよ! 理子は心臓を一突きにされて失血死だって! ねえ?」


 ……へ?

 い、いやまだ言い逃れするの中原!


 か、観念しなさいよ!


「あ、ああ……悪いけど江草さんその通りだ。楠木さんは多量出血による失血死で即死した。」


 ……ええ!?

 う、嘘お……


「ははは、女子高生探偵気取りが聞いて呆れるなあ探偵さんよ?」


 う……中原の矛先は、師匠にまで!

 ご、ごめんなさい師匠……今回は私が本当にバカだったです!


 ああ、さぞかし師匠は蔑みの表情を私に向けてるんでしょうね……


「……ああ、最近暑くなりましたねえ! オンザロックが飲みたい季節ですよ! こう、バーテンが綺麗に削ってくれた氷の奴をね……」

「……はあ?」

「はっ!? 何言ってんだこの探偵は!? 頭おかしいのか!?」


 へ!?

 し、師匠が何か訳わからないこと言い出した!?


 な、何ですか師匠?

 どうして……ん!?


 ―― バーテンが綺麗に削ってくれた氷の奴をね……


 そ、そうか!?


「……尖らせた氷です!」

「……え?」

「く、楠木さんを死なせた凶器は、尖らせた氷だったんです!」

「……はあ?」

「な……こ、氷だと!?」


 こ、今度はどうよ!?

 ……と、思ったけど。


 あれ、まだ中原は余裕ぶってる?


「おいおい、馬鹿か? 俺は確かに包丁で理子を刺し」

「! 何?」

「! あっ……」


 ……って、お間抜けにも!

 中原、自白した!


「ええ、あなたはあくまで殺人()()をしたんです。あなたは楠木さんの胸を刺したが、実はそれは致命傷にならなかった!」

「……え!?」


 と、その時。

 その師匠の爆弾発言に、私も含めてこの場の全員が驚いた!


 ど、どういうこと?


「ええ、楠木さんはあなたに殺されかけた後……氷で自分の胸を突いたのです。」

「なっ!?」


 それに一番驚いたのは、中原だったみたい。


 ◆◇


 つまり事件の真相を整理すると、こうなるわ。


 中原と楠木さんは、別れ話のもつれから口論になり。

 中原は突発的に彼女の胸を刺してしまい、彼は慌ててうずくまる彼女を尻目に包丁の血を洗い流した。


 そうして指紋も拭き取り、部屋を後にした。

 ……でも、心配でもう一度アパートに戻って呼び鈴を押し。


 何も反応がないことを確かめて、ほっとしたみたい。


 ただ、師匠が言った通り。

 動転していた中原も気づかなかったけど、包丁の刺さりは浅く致命傷にはならなかったの。


 更に言えば、中原はルミノールがかなり薄めた血液でも反応することを知らず。


 包丁を洗って、それだけで偽装工作できるとも勘違いしてたみたい。


「だが当事者であり看護師だった彼女は、このぐらいでは傷が浅くて致命傷にならないことを知っていました。」

「な、何と……」

「でも彼女は恋人に殺されかけたことがショックで……そのまま、自殺したんです! 冷凍庫にあった氷を、削って尖らせて自分の胸を刺してね!」

「そ、そんな……」


 師匠がそうして続けると。

 中原はヘナヘナと、しゃがみ込んだ。


「……と、言いたかったんだよな我が助手よ!」

「え? あ、は、はい!」


 私は、師匠から水を向けられ。

 姿勢を正してそう答えた。


「だ、だけど中原さん……わざわざ氷を使ったってことは、あなたの下手くそな偽装工作を成功させたいって思いがあったのかもしれません……」

「く……!」


 中原はそのまま、慟哭した――


 ◆◇


「し、師匠! そ、その……あ、ありがとうございました!」

「あ? 何のことだ、お前もあの程度は分かってたんだろ? 少なくとも、ガイシャの気持ちを最後に推理できたのはお前だった。」

「え? あ、えっと……」


 私は帰りの途、師匠にお礼言ったけど。

 師匠は、そう返した。


 ……でもごめんなさい、私分かってなかったんです!

 いや、そりゃ確かに最後は楠木さんの気持ちを理解しましたけど……


 ああ、あんな頓珍漢な推理やっちゃって……

 穴があったら入りたいわ……


 それなのに。


 ――いやあ、ありがとう江草さん! さすがは江良探偵のお弟子さんだ、女子高生探偵だな!


 ……こんな風に言われちゃったもんだから、尚更穴に入りたい!


 でも、そんな私をフォローしてくれるなんて。

 師匠って、案外いい人?


「……まあ、そんなに俺に恩義を感じているなら……ほうらよ!」

「うわっ!? し、師匠?」


 と、私が歩きながら呆けていると。

 師匠が乱暴にも、重い荷物を無理矢理負わせて来た!


「これからはずっと荷物持ちだウフ! プーサンになるまではなハハハ!」


 な……ムッキー!

 やっぱりいい人なんかじゃない、この人めっちゃ嫌な人お!


 私は意地悪にも、追いかけといでと言わんばかりに前を走り出した師匠の背中を追っかけながらそう思った!


 今に見てなさい……ヒヨコどころか、鶏にだってなってやるわよ!

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