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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
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Hurtling Burst 最速戦:05「嵐の前の騒がしさ」



 ゲンタ、ユキ、カヤ。

 3人で"Team GYK"とまあ、安直も安直。


 ヒナタは燕歌からこの3人の名前を聞いたことがある。たしか、アイテールが件で半ば解散状態になった後に、一時的にチームメイトになってもめたとかなんとか。


「で?なに?讌お前出るの?この大会」

「ああ。君たちこそ、本戦を通過したんだろう。ならば競争相手だ」

「あ?」


 ゲンタが前に出て、燕歌に近づいた。ヒナタはこの時点で薄々嫌な予感がしていたが、その予感も的中することになる。


「あ!」


 次の瞬間、燕歌は突き飛ばされた。3人は肩を揺らしながらあろうことか笑っている。

 ヒナタは意味がわからなかった。何がそんなにおかしいのだろうか?コイツらは、何を笑っているんだと。

 そう思っていたら、体は勝手に動いていて、自分より一回りも二回りも大きいゲンタの肩を掴んだ。


「なにをしているんだ?」

「はぁ?誰だよお前……えっ、マジ?コイツチームメイト?ははっ!」


 ゲンタたちはヒナタを見て、次にようやく立ち上がった燕歌を見て、また、ヒナタに視線を戻して笑う。再三笑う。


「ついに知らねえガキとチーム組むとか!ふっは」

「キモいんですけどぉ。尻軽じゃん」

「まあいいんじゃね?陰キャ同士っぽいし」


 ある意味お似合いである、と評されて、指と指で作った四角形の枠に2人を納めてみれば、なんとも地味な絵面だと嘲笑する。


「気の毒だな、この女はな?チームクラッシャーって呼ばれてんだわ。ここらで有名だったチームをぶち壊した」

「まあ、コイツの正体も見抜けないでつるんでる時点でこのガキもたかが知れてるけどね」

「よわよわチームで笑うわ。まあ、勝てないだろうねぇ」


 コイツらは何も知らない。燕歌がいかにしてチームを抜け、ああなってしまったか。傲慢な態度をとっていた時期があったのは確かだが、ここまで言われる筋合いはないとヒナタは思う。

 燕歌は何も悪く無いはずだ。それに……彼女を孤立させたのはこの3人だと話に聞いている。

 既にヒナタは、ひとこと言わないと気が済まなくなった。


「ねえ────」

「よし、ヒナタ殿!次はあっち見にいくぞ!」


 しかしそれを燕歌が止める。「どうして?」と止める理由を聞けば、「いいんだ」と首を横に振る。絡むだけ無駄、受け流せばいい、この勝負に勝てば問題はない、と本人は冷静だった。

 それもそうかもしれない。とヒナタは一理は認める。こんだけ馬鹿にしたって、結局レースで勝った方が偉い。今はそういう土俵だ。だから散々な言われようでも我慢できるし関係ないと。

 2人はUターンした。神妙な面持ちをしている波標と、目を瞑ってそっぽを向いているロック。「ごめんごめん」と謝って、この場を立ち去ろうとする。

 無視。無視。これが最善の対応だ。






「────お前のせいで、あいつはリンチされたんだろ?あいつ、なんだっけ、そう。木菟は」


「白鷺さんも可哀想だよな。こんな雑魚がチームに1人いるせいで事件に巻き込まれて、チーム解散しかけて。立ち上げ大変そうだったなあ?」


「こいつどうせあれっしょ。嫉妬ってやつ?自分が弱いから2人を裏社会のやつに依頼して陥れたんだ。そうじゃなきゃこんなキモい奴と組まないでしょ、あの2人が」




「────ッ!!」


 ヒナタは、拳を振り上げた。










 言っていいことが悪いことがある。何も知らないくせに、勝手にそう決めつけて、悪者にして、大衆にそう刷り込んで孤立させる。それがどれだけ卑怯で邪悪なことか!

 溢れる憎悪を込めた執念の一撃を拳に乗せて殴り飛ばす────直前に。ヒナタは思い留まり、自分を制した。

「なんだよ?」と3人からすれば気に食わない態度だ。ヒナタは睨みつけて唇を震わせている。

 そして殴る代わりに、滲み出るように言葉を零す。


「哀れだね」

「は?」

「哀れだって言っているんだよ。辞書引いて調べてみなよ。無知で愚鈍で滑稽な人たちだ。3人寄ってもネットで調べような浅知恵しか搾り取れない脳足りんのお猿さん。本質をまるで捉えられずに、ワーキャー囃し立てて、私欲の為に他者を追いやろうとする、その言動を哀れだって言ってるんだよ。

 それで?燕歌を散々こき下ろした結果はどうだい?気持ちよかったかい?

 なんにも残らないのに。くだらないことに時間をかけていて哀れだね。

 そんなことしてる暇があるならもっとキミたち3人が仲良くなれるような事をすればいいのにね。

 もっと熱中できることを探して、それに打ち込んでいればこんな事してる暇はないはずなのにね」


 長々とねちっこく言われて、3人は半分も聞いてないが、自分たちが馬鹿にされていることだけは理解した。挑発されて、とくにリーダー格のゲンタはヒナタの胸ぐらを掴んだ。

 小さくて軽いので地面から簡単に足が離れてしまう。


「ヒナタ殿!?」


 掴まれて、首を圧迫されて、苦しそうにしている。だが彼の表情は笑っていた。それこそ馬鹿にしたように笑っている。


「殴るのか……殴ってみなよ……!殴っても、この大会はボクらが勝つ!それで賞賛されるのはボクたちでキミらは見向きもされないんだっ!ボクらは勝つ事を考える、時間を浪費するキミらには負けない!ざまあみろ哀れな奴らめ!」

「貴様ぁ……!!」


 怒りが最高潮に達し、顔を真っ赤にして、ゲンタは頰に1発、拳を入れる。凄い勢いで殴り飛ばされ、地べたに転がる。


「大丈夫か!?ヒナタ殿!!」


 燕歌はヒナタに駆け寄った。見ると、唇が切れていて、赤色の血が滲み出ている。

 手前には未だ騒ぐゲンタ。怒り狂っているが流石に相手を殴るのはまずいと判断したユキとカヤが2人がかりで抑えつけている。

 ヒナタは燕歌の肩を手すりにして、よろよろと立ち上がった。


「いこう。もうすぐ本戦開始時刻だ」

「あ、あぁ。わかった」


 ゲンタはまだ暴れている。それに向かって、べーーっと舌を出すヒナタ。殴られたのにどこかしてやったりな顔で、それが燕歌には不思議に思えた。


「ヒナタ殿。どうして」

「ごめん。勝手な事をしたと思う」

「そ、そうだ。なにを勝手な事を……私は、私は頼んでいないぞ。こんなこと。本人が気にしていないのに騒ぎ立てるなんてどこぞの厄介ファンか!?キミ配信者側として恥ずかしくないのかね!!」

「知ってるよ。でもどうしても許せなかった。ボクの気持ちが、許せないんだ。キミをバカにしてるアイツらがなんにも咎められず笑ってるのがムカついたんだ……ごめん」

「……いや。いいよ。私もちょっとスッキリしたから。ありがとう」


 肩を組んで、のっそり歩く少年少女。一部始終を見ていた波標は神妙な面持ちをしている。逆にロックはこう言う事が嫌いなのか、目を瞑って見ないふりをしているようだ。

 待たせてしまったなと、"The Tempest"のメンバー2人に会釈をする。波標は「いいよ、別に」とそれを許し、ロックは「let's go‼︎」と空気を変えるように明るく接した。

 これが、本戦開始前のほんの少しの騒ぎ。だがこのこともあってヒナタの勝利の意識はさらに硬いものとなった。



「あっ、勝つのはヒナタじゃなくて俺。そこのところよろしくね」

「いやいやいや。ボクはキミにも負けないよ波標!」

「イヤイヤイヤン!!私ガNo. 1デーース」

「ふぅん。どうかな。"新しい戦法"を編み出した私が一枚上手だよロック」







[Hurtling Burst -online- JAPAN CUP X86 まもなく開始時刻です。本戦出場メンバーはオンライン、オフラインから専用のイベントブースの控室まで来てください]

 



戻ってきた虎紀「えっ!ヒナっさんが口喧嘩して殴られた!マジ!?マジかよ!見たかった!」

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