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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
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Hurtling Burst 最速戦:04「龍災事変」



「ヒナっさん、ヒナっさん」

「なに虎紀」


 朝食を食べ終わった。会場外の円形テーブルに腰掛ける虎紀は、隣の席に座っているヒナタの肩を叩いて呼ぶと、明後日の方向を指さした。「なんだろう?」と指の先に目線を向ける。しかし人混み、人混み、よくわからない。


「ほらあそこ。灰色のスーツの奴いるだろ?」

「あのワックスで髪ガチガチのオールバックにしてる人?」

「おう、そいつそいつ」


 それがどうしたんだろう、とヒナタは首を傾げ、虎紀は言った。


「アイツはヤクザだぜ」

「え」

「そんじゃ、ちょっくら移動するぜー」


 虎紀が周りのみんなをこの場から離れるように催促する。ちゃらんぽらんに歩き始めるロックも目元は鋭く、周囲を警戒しているように見える。知れば知るほど年上の人たちがよくわからなくなるヒナタだった。

 そしてそんな中でも平静としている波標。同い年でも龍頭の街に住んでいる人だからか、あまり動じない。


「波標は怖くないの?」

「怖い?なにが?」

「ヤクザとかそういうの」

「うん。別に……あ、でも一つ嫌なことはあるよ」

「嫌なこと?」


 波標は言う。


「ヒナタにレースで負けること。俺が勝つ」

「……!?」


 唐突な宣戦布告に狼狽える。視線を一身に浴びて、目を逸らせそうな雰囲気もない。ただ相手を捕らえる猟犬のように、ヒナタを標的にする。

 ヒナタは少し考えた。考えて、宣戦布告されるのは当然なのかも知れないと思い当たる。

 なぜなら同世代のゲーマーとして、ここで格付けが一度決まってしまうのだから。同じ大会で、同じような立場にいる似た者同士。お互いにそうだと思っている。いわばライバル。

 であれば答えは一つ。


「ボクも負けないよ」


 ……バチバチの二人。そんな彼らにあてられた人物が一人。燕歌。


「おい。ロック殿と言ったな。私は負けぬぞ」

「返リ討チデース!!」


 彼女らは最初から睨み合っている。

 こうして男子二人女子二人が揃って席を外した。お互いを意識しながら。

 これを見た虎紀は試合前に勝負する者同士で威勢を高め合うのはいいことだと、感心する。

 はてさて、コイツらの熱い勝負が待っていると言うのに、それを邪魔する無粋な奴がいたもので。それは虎紀と、ここにいない鬼葉の怒りに触れている。

 虎紀は自身の携帯端末を開くと、声を当てた。


昏鵺会(おめーら)の出番だ。この会場にいる畜生を一人残らず引き摺り廻せぃ」

[はっ!]





 






 騒ぎが起きた。

 スーツを着た男達が、特攻服を着た男達に後ろからぶん殴られ、縄で縛り上げられる。こんな珍事が会場内で多数、それも同時に引き起こされる。


「禍炉赦會。てめーらのリストはすでに持ってんだよ。顔を間違えるこたぁねぇ。オレらバカだから相手に喋られちゃ合法的に封殺されちまうんでねぇ?そんな暇は与えねぇ。死人に口なし。オレたちゃいつだって喧嘩上等の電撃戦じゃい!」


 東京じゃ滅多に聞かないであろう。二輪の吠える音が聞こえてくる。会場に来ている来場客は何かのイベントか?と勘違いする人もいれば、どう考えてもヤバいことが起きていると理解する人もいるだろう。


「会場から龍頭までぇ!県跨ぎの引き摺り廻しの刑じゃぁ!!!」


 その日、参加者や来場者の多数が目撃した。強面なスーツ姿の男たちが、縄でバイクに繋がれて、そのまま走り去っていくのを。

 抗争が始まる。否、これは抗争ではない。これよりたった数時間で陥落し組織壊滅に至る禍炉赦會に訪れた最初の災禍。


 当時の者曰く、「これは龍が通ったかのような一瞬にして甚大な出来事だ」



【X86 龍災事変】







 野外の出店がある場所から少し離れた、会場内部。ここでは【REVE】シリーズなるゲームのイベントブースとなっている。

 人が沢山集まっていて、仮にこの中から迷子が出たら探すのは困難。


「撒いたぜ!してやったりだぜ!ヒナっさん」

「うん」


 本当に暴走族の総長なんだ、とヒナタは改めて実感する。目の前にいるのは出来のいいコスプレなんかじゃなかった。

 暴走族と言ったら本来恐怖の対象なのだが、こうして巨悪を前に徒党を組んでいるとなるととても頼もしくなる。不思議だ。


「んむむ?おーい、折角のびのびしようとしたのに、狩漏らしてるじゃあねーか」


 虎紀の目線の先、彼方此方に顔をキョロキョロしせて混乱している奴が人混みの中で目立つ。昏鵺会のメンバーに運良く遭遇しなかったのだろう。しかし周りの仲間が一斉にして、連絡が取れない状況になったのだ。困惑して当然。

 虎紀は腕をこきこきと鳴らし、「ヒナっさん!ちょっくら言ってくるわ!」と軽快なステップで駆け寄って……。


「恐ろしく早い手刀!?」


 音もなく、騒ぎは立てず。ただ静かに1人をノックダウンさせた。虎紀は170という決して大きな身体ではないはずだ。おおよそ10センチくらい大きな相手を恐れることなく撃破した。

 それからさも当然のように、大男を担ぎ上げて歩き始める。なんという力だろうか。

 仲間に引き渡す為に外に向かっているようだ。ヒナタはそんな虎紀を見て、ある想像した。

 「おいてめーら!爪が甘いぞ!」「すみません総長!」という会話を幻聴する。こんなやりとりをするのだろうか────。



「いてっ!」

「ひっ!ごめんなさい!」


 妄想していたら、人とぶつかってしまったヒナタ。これはいけないと即座に頭を下げる。そのときは自分の集中力の無さが申し訳なく思った。


「ってえな。マジ。ないわ」

「……」


 顔を上げた。感じ悪そうな人だ。ヒナタは頭を下げたことを後悔した。そして、これからさらに後悔することになる。


「……って、おい。おい!こりゃ傑作!誰かと思えばチームブレイカーの東雲 讌さんじゃないですかぁ!」


 そいつは短髪のどこにでもいそうな男子だった。ヒナタよりは背が高いか。

 そしてその周りを取り囲む2人がいた。茶髪に染めたのっぽ野郎と金髪の一昔前のギャルみたいな風貌の女。

 少年少女は、燕歌の本名を言い放った。つまりはリアル方面で知り合いであることは容易にわかるだろう。

 ……この偏屈な態度と、燕歌から笑顔がすっと消えたことから、良くない関係であることもわかるだろう。


「ゲンタ、ユキ、カヤ」


「クソ雑魚芋砂の気色悪い奴。なんでここにいるんだ?ん?」

「試合前にコイツに会うの最悪だな」

「マジありえないんですけどぉ」

 


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