訪問者は謎の美女
朝が来た。見慣れない天井だ。
座敷の布団をたたみ、ヒナタと燕歌は目を合わせて頷く。ふすまを開けて、廊下を進み、便利屋の客間に向かい手前で止まる。
「「せーの……」」
「ボクたち」「私たちは」
「「そういう関係じゃないし、昨晩そういうことはしてませーーーん!!」」
絶対にあのスケベ爺さんのことだからおちょくるに違いない!だから二人は先手を打つ!そんなことしてないんだと激しく主張する。
「……」
「「あれ?」」
小っ恥ずかくて目を瞑っていたのだが、何も反応がないのでおかしい、と目を開ける。すると。
「Hey!!good morning!!」
キャリーケースにカサの大きな帽子、サングラスをかけたスタイル抜群の謎の美女がそこに座っていた。
「えっと……どちら様ですか?」
「客デース!!貴方タチハ、ココノ店員サンデスカ?」
「ごめんなさい。一応ボクらも客みたいなものです……」
カタコトな日本語を喋るこの人は一体誰なのだ。そのことが気になって仕方がない。
便利屋の客というが、なにか依頼でもするのだろうか、とヒナタは考えてみる。
「……」
「……」
「……」
ちょーーっと燕歌こっちきて!と手を引いて、一旦席を外す二人。
「どうしよう!どうする!?気まずいよ凄く!!」
「そ、そう言われても困るぞ。知らない知らない。ここは副リーダーである君が話を取り持つべきだ。うんそうだ。私は応援しているようん!」
「ふぁぁっ!?ボクそんな口達者じゃないんだからさ!!」
「それでも配信者かね!?よし、いちリスナーの意見として言おう。話す練習したらどうだい?」
「う、うそつきー!押し付けたいだけだこの人っ!」
緊急会議終了。
「あ……えと……お名前聞いても?あっ、ボクは御っ……ヒナタって言うんだけど」
「燕歌です」
美女はサングラスを下にずらして、淡い茶色の眼ちらりと見せ、二人のことを確認したようだ。そしてまたサングラスをかけ直してこう言う。
「net name"ロックちゃん"デース!!ソウ呼ンデクダサイネ!!」
「ロ、ロックちゃん……」
ロックちゃんと名乗った美女の前に向き合うようにして座った。
「ロックちゃんは、どこから来たの?」
「Americaカラ来マシタ。ケド、貴方と同じ、日本人デスヨ!」
「に、日本人!?それにしてはカタコト。もしかしてアメリカ育ちの日本人ってこと」
「ソウデース!ヨクワカリマシタネ!!」
ロックちゃんは帽子を脱ぎ、キャリーケースの手すり部分に引っ掛けると、髪をかき揚げ、座り直し、談笑と洒落込もうとしているようだった。
「ワタシハ2年前に、日本に住み始メマシタ……ソシテ今日ハ?仲間と待ち合わセヲスル為ニ、ココニ来タノデーース」
「仲間?」
「ソウ仲間!大会ノTeam mate!!」
大会、という単語を聞いて燕歌が先に反応する。おやおやと。この美女は、ひょっとして、ひょっとするのか?と。
「その大会ってもしかして、ハーリングバースト……」
「YES‼︎Hurtling Burst -online-JAPAN CUP‼︎」
「「おーまいがー」」
本大会のライバルであることが発覚した。
「驚キマシタ!!貴方タチモ大会出場者ダッタンデスネ!!」
「ええまあ」
便利屋の客間から場所はがらりと変わり、宇宙船にやってきた。宇宙船ということは……鳩バスの待機所である。
「折角デスカラ練習試合シマショウヨ!!」
「あっ、いいんですか?」
ヒナタとロックが意気投合し始めた。しかしそれをあまりよく思っていない人物がいた。燕歌だ。
「練習試合とは、それはつまり手の内を明かすことでは?私はこの女のことを信用したわけではない。とくに、リアル美女というのは立ち姿だけで世を渡り嘘とまやかしでコーティングされた……」
「燕歌!人のことを疑っちゃいけません!」
「いやヒナタ殿!?君はやっぱり騙されやすいタイプだよ!!」
鬼葉の言う通り、この少年の警戒心のなさは時折不安の種になる。
だがヒナタにもちゃんと考えがある。
「たしかに、大会本戦にどんな機体で望むかは割れちゃうよ。けど、実力者と練習すれば自分たちの弱点にも気が付ける、そうは思わない?」
「……まあ、わかるが」
ヒナタとは対照的に慎重な態度を見せる燕歌。と、いうより、ロックのことを性格的に気に入っていないのが起因となっているのだが。
ロックは首を傾げてこう言った。
「ワタシハ大会登録シタ機体を使イマスヨ」
と、相手側から手の内晒す宣言が飛んできた。
「……公平というわけか。おもしろい」
「アラアラ?其方ノ可愛い子は私を敵視シテルヨウデスネ」
「そのわざとらしいカタコトで媚びるのも今日で終わりにさせてやる」
「えっ、あっ、お二人ともバチバチ!?」
女性陣二人が睨み合い。いまだけ女性中身少年のヒナタはこれをどう処理したものかと頭を抱えるのであった。




