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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
66/82

天翼、前編。



 2年前。



ーーーーー

東雲 讌


ジャンル別適正判定


対戦格闘:E

FPS総合:C-

テーブル系:D

リアルスポーツ系:E-

レース総合:D

RTS総合:D+

MOBA:E-


総合成績:D-

ーーーーー


 燕歌こと、讌は、残念ながら、ただ単に的当てが上手いだけの、一般人だった。

 自分の至らなさを痛感した彼女は、恐ろしく卑屈になってしまった。

 やがて彼女の周りに人はいなくなり、孤立する。ひとりぼっちだ────。





 そんな彼女に話しかけてきた人物がいる。


「うーたげちゃん!」

「む……なんだい君は」


 東雲 讌に後ろから抱きついたのは、同じ学院の同級生、幽玄(ユウゲン) 木菟(ミミズク)だ。つねに死んだような目をしている讌とは対象的に、まんまるでキラキラしていて、明るい性格なのは誰もが見てわかる通り。


「そのシリコンを詰めたような乳をどけろ、邪魔だよ」

「うっわーー、すっごいトゲトゲしてるぅ」


 木菟は讌から離れる。


「なんのようだ」

「よくぞ聞いてくれましたぁ」

「いや、聞きたくないな。今すぐにUターンし、そのままお家に帰れ」

「ふふっ!変な言い回し〜おもしろ〜〜!!」


 この部屋はよくある大学の講義部屋と同じ構造をしている。曲線の長机と座席に座る讌の隣にそのまま腰を下ろす。


「チーム組まない?」

「嫌だな……どうせ君はあれだろう。成績が悪くてロクに仲間が出来ず、いつも1人で暇そうな私に話しかけてきたんだ。『ああこいつ暇そうだな。誘えるなこれは』とな。みえすいている。笑止。断る」

「ほい」

「む……あ?」



ーーーーー

幽玄 木菟


ジャンル別適正判定


対戦格闘:B

FPS総合:B-

テーブル系:C-

リアルスポーツ系:B-

レース総合:C+

RTS総合:A-

MOBA:A-


総合成績:B+

ーーーーー


「私、3年。そんで格上。これなら文句ないでしょぉ〜」

「……」


 童顔で桃色のインナーメッシュで、どうみても年下にしか見えない風貌、言動、しかし目の前にいるのは先輩という事実に讌は困惑する。

 しかしそれ以上の疑問があった。


「なぜ私なんだ」


 すると木菟はこう言った。


「だって讌ちゃん、射撃の天才だもん」










ーーーーー

東雲 讌


ジャンル別適正判定


対戦格闘:E

FPS総合:A-

テーブル系:D

リアルスポーツ系:E

レース総合:D

RTS総合:D+

MOBA:B-


総合成績:C+

ーーーーー



「ほらほらぁ、私と組んだおかげで、団体競技の成績上がったじゃん。特にFPS」

「むぐぐぐ……」


 木菟は人の使い方が上手かった。的当てが得意という取り柄を極限まで引き出すと、その模擬戦に限って讌は最強無敵のスナイパーに化けた。

 彼女のオーダーに従ってさえいれば、バカスカ勝ててしまう。それはもう笑ってしまうぐらい勝てる。正直入学してから一番気持ちよかった、と讌は思った。


「わかった。組むよ。君と。組めばいいのだろう?」

「いやったー!!」


 実戦での心地良さと、木菟のしつこいアプローチの甲斐あって、ついに讌は折れる。


「よしそれじゃ早速練習するぞぉ」

「練習……どのゲームにするか決まっているのか」

「もち!【Stand(スタンド) Alone(アローン)Dopeness(ドープネス)】」

「なるほど……しかしどうする。直近の大会で抽選漏れしてしまうかもしれない」

「そーゆーときはあれよ。"鳩バス"で優勝を狙うの」

「簡単に言うな……」

「んま、私の豪運があればそんなこと起きないから安心していーよ?」

「へーそうかい。まあ、そうだとしよう。だがもう一つ問題があるな」


 木菟は首を傾げ、讌が指摘する。


「チームメイトが1人足りないじゃないか」









「紹介しよう、半年後の大会に出るもう1人のメンバーだぁ!はいどーん!」

「なっ……」「はっ?」


 直近のSADの大会はスリーマンセルの団体戦しかない。そうなると木菟、讌の2人だけでは足りないわけで。しかしそんなことリーダーの木菟は織り込み済み。既に1人チームに引き入れていたのだ。


「なんでここにいる……神矢 白鷺」


 真紅の双眸に讌の姿が映る。その少年は長机に腰をかけ、なんとも高圧的だった。


「お前こそ……最近総合成績上げてきたと思ったら、そういうカラクリか」


 入学当初ライバル関係にあった2人を木菟は再び引き合わせたのだ。なお、本人はそんなことはつゆ知らず。


「一年同士仲良くねぇ〜」

「「できるか!!」」

「えぇ!?」




◆◆◆◆◆◆



「えぇ!?キミとシロサギって元同じチームだったの!?」

「ああそうだよ」


 驚愕の事実にあんぐり空いた口が塞がらないヒナタ。そんなに驚くか?と疑問に思う燕歌。


「そ、それじゃあ、シロサギは……昔は八百長なんてしてなかったんだ」

「……八百長するしないはシロサギの意思じゃ無いのだよ」

「え?違うの?」


 燕歌は頷く。


「彼は、好きでこんなことしてるわけではない。交渉の時の、あの悔しそうな顔を見ただろう。怯えた様子を見ただろう」

「うん」


 覚えがあるとヒナタは相槌をうつ。燕歌が続けた。


「……私のいた、あのチームは何度も大会に勝ち続けた。実力で勝ち続けたのだ。そりゃあもう破竹の勢いさ。私と言うお荷物がいても天才2人のおかげでね」

「へぇ……あ、あとキミはお荷物じゃないでしょ!」

「お荷物さ」

「卑下しない!話聞いてる限り3人とも天才に見えるよ!」

「……すまない悪い癖だ」


 歳下の少年に説教されて、少し複雑な気持ちになる燕歌。だが。彼の言うことも最もだが。これは卑下では無く事実であると譲らなかった。


「けど本当にお荷物だった。だって私は……ハァ。木菟が居ないと、勝てなかったからね……」


 木菟が居ない。その言葉が、結末を知るヒナタの心に刺さる。ここから、燕が地に落ち、縋る想いでヒナタの募集に応募して、今に至るまでの話となる。



◆◆◆◆◆◆



 3人1組。主に讌と白鷺は性格面で対立することはままあった。


「お前のような、"豚に真珠"を身体で表したような存在は本当に好きになれないね。なんだあのプレイングは?ゴミか?」

「そうかな、そもそもキミが取りこぼさなければ私の出る幕はないのだ。神童くん、その二つ名の後ろには(笑)がついているようだね」


 水と油、真逆の矢印、仲の悪さがSS極。しかし木菟は決まって言う。「仲良いね」


 ただ試合中のチームワークの良さは着々と実っている。


「ふっふっふっ……お二方だいぶ仕上がってきたね!」

「まあ、な」

「当然だな」


 神矢 白鷺。ユーザー:シロサギ。神童と呼ばれるチームの絶対的エース。命中精度もさることながら、現場判断力に長け、単独で複数人を討ち取り、全体の優位なポジション取りに非常によく貢献する。


 東雲 讌。ユーザー:燕歌(レンカ)。蔑称、妖怪変態クソ芋スナ。エースの取りこぼした相手をどの位置からでも狙撃する。どれだけ離れてようと、僅かな遮蔽物の隙間をくぐり抜けるように、妙技にも近い1発で脳天をぶち抜く。かなり厄介な選手。


 幽玄 木菟。ユーザー:OwlYou(オウルユウ)。上記2人をまとめ上げる指揮者。チームの実力を完全に理解し、戦況を瞬時に把握、予測をしたら、ハイリスクハイリターンなオーダーを出し確実に遂行させる。それでいて本人のプレイヤースキルも中々の高さ。まさしく鬼才。

 

 学生内の勝負になればこのチームが負けることは殆ど無い。プロライセンスを獲得するのも時間の問題だと、世間的に評価されている。


「さぁて、チームを組んで6ヶ月泣いたり笑ったりしあったよね……グスン」

「いや全然」「ほぼ罵倒だが」

「2人とも仲良くなってて嬉しいよ!リーダーとして!」

「俺はこういう奴が大嫌いだ」

「私も貴様のような奴を心底恨めしく思うよ」

「やっぱり仲良いね!」

「「どこが??」」


 讌は白鷺を。白鷺は讌を指差す。そして首を傾げる。いやいやいやそんなわけ、と2人揃って木菟にジェスチャーをするもんだから笑ってしまう。

 だが本当に笑顔になるのはこれからだ、と木菟は言う。


「どういうことだ」

「どういうこともなにも、半年なんだよぉ?」

「「まさか」」


 またしても2人は同時に同じ言葉を発する。そして木菟へ期待の眼差しを向ける。木菟は期待に応えた。


「SADの大会!当選しました!いぇーい!!どんどんぱふぱふ!!」

「や、やったぁ……!」

「マジか……」


 この時ばかりは3人ハイタッチを交わす。また一歩悲願に近づく。

 だが彼女らにとって嬉しいことはまだある。


「そしてぇ、なんとぉ、それに伴ってぇ、学校側から監督を用意していただきましたぁ」

「マジかよマジかよ、すげえな……」

「どんな人だい??」


 彼女らにとって嬉しいこと、というと語弊がある。一言付け加えると、当時の(・・・)彼女らにとって嬉しいことだ。


「監督ぅーー」


 木菟が呼ぶと部屋に入ってくる。白いコートに身を包んだ、その男が。いまここに正式に結成される。そのチームが。













「監督に就任した小尾だ。今後よろしく頼むよ……【チーム:アイテール】」


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