天翼、前編。
2年前。
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東雲 讌
ジャンル別適正判定
対戦格闘:E
FPS総合:C-
テーブル系:D
リアルスポーツ系:E-
レース総合:D
RTS総合:D+
MOBA:E-
総合成績:D-
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燕歌こと、讌は、残念ながら、ただ単に的当てが上手いだけの、一般人だった。
自分の至らなさを痛感した彼女は、恐ろしく卑屈になってしまった。
やがて彼女の周りに人はいなくなり、孤立する。ひとりぼっちだ────。
そんな彼女に話しかけてきた人物がいる。
「うーたげちゃん!」
「む……なんだい君は」
東雲 讌に後ろから抱きついたのは、同じ学院の同級生、幽玄 木菟だ。つねに死んだような目をしている讌とは対象的に、まんまるでキラキラしていて、明るい性格なのは誰もが見てわかる通り。
「そのシリコンを詰めたような乳をどけろ、邪魔だよ」
「うっわーー、すっごいトゲトゲしてるぅ」
木菟は讌から離れる。
「なんのようだ」
「よくぞ聞いてくれましたぁ」
「いや、聞きたくないな。今すぐにUターンし、そのままお家に帰れ」
「ふふっ!変な言い回し〜おもしろ〜〜!!」
この部屋はよくある大学の講義部屋と同じ構造をしている。曲線の長机と座席に座る讌の隣にそのまま腰を下ろす。
「チーム組まない?」
「嫌だな……どうせ君はあれだろう。成績が悪くてロクに仲間が出来ず、いつも1人で暇そうな私に話しかけてきたんだ。『ああこいつ暇そうだな。誘えるなこれは』とな。みえすいている。笑止。断る」
「ほい」
「む……あ?」
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幽玄 木菟
ジャンル別適正判定
対戦格闘:B
FPS総合:B-
テーブル系:C-
リアルスポーツ系:B-
レース総合:C+
RTS総合:A-
MOBA:A-
総合成績:B+
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「私、3年。そんで格上。これなら文句ないでしょぉ〜」
「……」
童顔で桃色のインナーメッシュで、どうみても年下にしか見えない風貌、言動、しかし目の前にいるのは先輩という事実に讌は困惑する。
しかしそれ以上の疑問があった。
「なぜ私なんだ」
すると木菟はこう言った。
「だって讌ちゃん、射撃の天才だもん」
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東雲 讌
ジャンル別適正判定
対戦格闘:E
FPS総合:A-
テーブル系:D
リアルスポーツ系:E
レース総合:D
RTS総合:D+
MOBA:B-
総合成績:C+
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「ほらほらぁ、私と組んだおかげで、団体競技の成績上がったじゃん。特にFPS」
「むぐぐぐ……」
木菟は人の使い方が上手かった。的当てが得意という取り柄を極限まで引き出すと、その模擬戦に限って讌は最強無敵のスナイパーに化けた。
彼女のオーダーに従ってさえいれば、バカスカ勝ててしまう。それはもう笑ってしまうぐらい勝てる。正直入学してから一番気持ちよかった、と讌は思った。
「わかった。組むよ。君と。組めばいいのだろう?」
「いやったー!!」
実戦での心地良さと、木菟のしつこいアプローチの甲斐あって、ついに讌は折れる。
「よしそれじゃ早速練習するぞぉ」
「練習……どのゲームにするか決まっているのか」
「もち!【Stand AloneDopeness】」
「なるほど……しかしどうする。直近の大会で抽選漏れしてしまうかもしれない」
「そーゆーときはあれよ。"鳩バス"で優勝を狙うの」
「簡単に言うな……」
「んま、私の豪運があればそんなこと起きないから安心していーよ?」
「へーそうかい。まあ、そうだとしよう。だがもう一つ問題があるな」
木菟は首を傾げ、讌が指摘する。
「チームメイトが1人足りないじゃないか」
「紹介しよう、半年後の大会に出るもう1人のメンバーだぁ!はいどーん!」
「なっ……」「はっ?」
直近のSADの大会はスリーマンセルの団体戦しかない。そうなると木菟、讌の2人だけでは足りないわけで。しかしそんなことリーダーの木菟は織り込み済み。既に1人チームに引き入れていたのだ。
「なんでここにいる……神矢 白鷺」
真紅の双眸に讌の姿が映る。その少年は長机に腰をかけ、なんとも高圧的だった。
「お前こそ……最近総合成績上げてきたと思ったら、そういうカラクリか」
入学当初ライバル関係にあった2人を木菟は再び引き合わせたのだ。なお、本人はそんなことはつゆ知らず。
「一年同士仲良くねぇ〜」
「「できるか!!」」
「えぇ!?」
◆◆◆◆◆◆
「えぇ!?キミとシロサギって元同じチームだったの!?」
「ああそうだよ」
驚愕の事実にあんぐり空いた口が塞がらないヒナタ。そんなに驚くか?と疑問に思う燕歌。
「そ、それじゃあ、シロサギは……昔は八百長なんてしてなかったんだ」
「……八百長するしないはシロサギの意思じゃ無いのだよ」
「え?違うの?」
燕歌は頷く。
「彼は、好きでこんなことしてるわけではない。交渉の時の、あの悔しそうな顔を見ただろう。怯えた様子を見ただろう」
「うん」
覚えがあるとヒナタは相槌をうつ。燕歌が続けた。
「……私のいた、あのチームは何度も大会に勝ち続けた。実力で勝ち続けたのだ。そりゃあもう破竹の勢いさ。私と言うお荷物がいても天才2人のおかげでね」
「へぇ……あ、あとキミはお荷物じゃないでしょ!」
「お荷物さ」
「卑下しない!話聞いてる限り3人とも天才に見えるよ!」
「……すまない悪い癖だ」
歳下の少年に説教されて、少し複雑な気持ちになる燕歌。だが。彼の言うことも最もだが。これは卑下では無く事実であると譲らなかった。
「けど本当にお荷物だった。だって私は……ハァ。木菟が居ないと、勝てなかったからね……」
木菟が居ない。その言葉が、結末を知るヒナタの心に刺さる。ここから、燕が地に落ち、縋る想いでヒナタの募集に応募して、今に至るまでの話となる。
◆◆◆◆◆◆
3人1組。主に讌と白鷺は性格面で対立することはままあった。
「お前のような、"豚に真珠"を身体で表したような存在は本当に好きになれないね。なんだあのプレイングは?ゴミか?」
「そうかな、そもそもキミが取りこぼさなければ私の出る幕はないのだ。神童くん、その二つ名の後ろには(笑)がついているようだね」
水と油、真逆の矢印、仲の悪さがSS極。しかし木菟は決まって言う。「仲良いね」
ただ試合中のチームワークの良さは着々と実っている。
「ふっふっふっ……お二方だいぶ仕上がってきたね!」
「まあ、な」
「当然だな」
神矢 白鷺。ユーザー:シロサギ。神童と呼ばれるチームの絶対的エース。命中精度もさることながら、現場判断力に長け、単独で複数人を討ち取り、全体の優位なポジション取りに非常によく貢献する。
東雲 讌。ユーザー:燕歌。蔑称、妖怪変態クソ芋スナ。エースの取りこぼした相手をどの位置からでも狙撃する。どれだけ離れてようと、僅かな遮蔽物の隙間をくぐり抜けるように、妙技にも近い1発で脳天をぶち抜く。かなり厄介な選手。
幽玄 木菟。ユーザー:OwlYou。上記2人をまとめ上げる指揮者。チームの実力を完全に理解し、戦況を瞬時に把握、予測をしたら、ハイリスクハイリターンなオーダーを出し確実に遂行させる。それでいて本人のプレイヤースキルも中々の高さ。まさしく鬼才。
学生内の勝負になればこのチームが負けることは殆ど無い。プロライセンスを獲得するのも時間の問題だと、世間的に評価されている。
「さぁて、チームを組んで6ヶ月泣いたり笑ったりしあったよね……グスン」
「いや全然」「ほぼ罵倒だが」
「2人とも仲良くなってて嬉しいよ!リーダーとして!」
「俺はこういう奴が大嫌いだ」
「私も貴様のような奴を心底恨めしく思うよ」
「やっぱり仲良いね!」
「「どこが??」」
讌は白鷺を。白鷺は讌を指差す。そして首を傾げる。いやいやいやそんなわけ、と2人揃って木菟にジェスチャーをするもんだから笑ってしまう。
だが本当に笑顔になるのはこれからだ、と木菟は言う。
「どういうことだ」
「どういうこともなにも、半年なんだよぉ?」
「「まさか」」
またしても2人は同時に同じ言葉を発する。そして木菟へ期待の眼差しを向ける。木菟は期待に応えた。
「SADの大会!当選しました!いぇーい!!どんどんぱふぱふ!!」
「や、やったぁ……!」
「マジか……」
この時ばかりは3人ハイタッチを交わす。また一歩悲願に近づく。
だが彼女らにとって嬉しいことはまだある。
「そしてぇ、なんとぉ、それに伴ってぇ、学校側から監督を用意していただきましたぁ」
「マジかよマジかよ、すげえな……」
「どんな人だい??」
彼女らにとって嬉しいこと、というと語弊がある。一言付け加えると、当時の彼女らにとって嬉しいことだ。
「監督ぅーー」
木菟が呼ぶと部屋に入ってくる。白いコートに身を包んだ、その男が。いまここに正式に結成される。そのチームが。
「監督に就任した小尾だ。今後よろしく頼むよ……【チーム:アイテール】」




