表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
64/82

談笑、筋者とゲーマー:03



 そりゃあ、お前は簡単に頭下げられるよな監督よ。だってお前にとって、今回の大会でアイテールが結果的に勝てばどうでもいいんだからな。選手にある信念なんざ知ったこっちゃないんだからな!

 「優勝して一部リーグへ」?嘘つくんじゃねえよ。八百長試合の奴隷として一生こき使うくせによォ!



 だから俺はこう言うのさ!


「断る」

「なんだと……!?」


 実に屈辱的だろう。あれだけ恥を晒したのに。当の俺は最初から断る気でいるんだからな。いや、まあ事前に言ってあったヒナタ、燕歌までドン引きしているのだが。


「いい加減にしろよ貴様……」


 そのヘリウムガスより軽い、脳みそすかすかの頭をすぐ上げた監督は俺に詰め寄る。おーいおい、可愛い女の子に向かってずいぶん手荒じゃないか?AtoZでの暴力行為はルームBANだぞ?


「承諾しろ、120万だ」

「おいおいさっきより金下がってんじゃねえか?どうした血登って計算もできなくなったか?」

「ああ、下げたとも。何故って?この条件でもお前は断れない?」


 釣り餌にかかった。


「東雲 讌、海老世VDA学院1年生。寮内にいることも我々は知っている。そしてこのTYRANNUSのチームメイト。おそらくネットで知り合った関係だろうが、チームメイトの個人情報は割れているんだ。意味はわかるな?」

「ど、どういうことだ!」


 って、言ってみる。小尾は俺の耳元で静かに囁く。


「一捻りだ。こんな競技で高額な取引をしているんだぞ。わかるだろう。我々には、そう、バックがいる……18歳の少女が当然行方不明になってもいいのなら断るがいい」


 ついに本性表しやがったぜこのゲス野郎。その薄汚い頬骨に1発喰らわせたいところだ!

 小尾、お前は今、この俺に喧嘩を売った!!


「断る」

「なんだと!?つまりそこの、東雲がどうなっても構わんというのか!?」

「ハッタリは効かねえってことだ」

「おい、我々をみくびるなよ。ハッタリじゃない」


 小尾はウィンドウを開いた。そこには映像があって、学生と思われる見知らぬ女性の姿が。大柄な男たちに囲まれていて、それから────。

 本当にゲス野郎だな。


「これが断った者の末路だ。いいか?我々も手荒な真似はしたくないんだ。本当に重役が集まっていてねぇ。勝たないといけない。これはしょうがない事なんだ。さっきは日本代表になる為といったが、それ以上に、権力が示す通り、金を回さないようにいけないんだよ。不安要素は排斥せねばならない。

 さあ、どうだ、60万で手を打とう」


 俺は小尾の顔を見ず、シロサギたち選手の表情に目をやる。それは、アバター越しに、酷く────怯えているように映った。


「断る」

「……は?」


 全員が固まった。そして俺だけが笑った。


「交渉は決裂だ」


 すると監督より先にシロサギが前に出た。これは意外。


「お前、お前!?自分が今なにしてるのかわかってるのか?」

「おん。ヤクザに喧嘩売ったとか?」

「ただのヤクザじゃあないんだぞ!いくつもの組織が連なった────」


 そこまで喋ってシロサギは慌てて口を塞いだ。そして恐る恐る振り返るとそこには、光のない目で、激昂に震える醜い男の姿があった。しかしその怒りは俺に向かうらしい。

 組織連合で、海老世の街を含んで活動してる時点で見当はついていたが、これで確信的なものに変わった。おそらくいま東京で一番元気なアイツ(・・・)らだ。


「よくわかった。いいだろう。答えはこうだ。当日人数不足による不戦勝だ……謝っても、もう遅い」


 小尾はウィンドウを開いた。カーソルを退出に合わせる。


「失礼した。次会う時はもうないだろう。さようならだ。鬼葉」


 帰るぞ!と命令され。そのまま退出するチーム:アイテール。


[小尾さんがルームを退出しました]

[緑雀さんがルームを退出しました]

[レイヴンa.k.a衝動さんがルームを退出しました]


 そして残るシロサギは、腰を抜かして口をパクパクしていた。


「お前、お前、し、知らないぞ。俺は知らない」


[シロサギさんがルームを退出しました]


 そして、沈黙が残る。




◆◆◆◆◆◆◆




「鬼葉、その、交渉相手がわるいひとって、本当なの?」


 商談前。燕歌が餌になってもらってる間。

 俺はヒナタと一対一で話をした。真剣な話だ。こっからはそれ相応のリスクがある。


「断定はできねえが、可能性は高え。もしかしたらお前ら2人に直接的な危害があるかもしれねえ」

「そんな……」


 それはそう。なぜって極道と喧嘩するんだからな。俺は別にそれでいいが、2人はカタギだ。素人だ。


「けどな、一応選べるぜ。なあ、ヒナタ。お前はどっち選ぶ?あいつらに買われてこの大会を穏便に済ませるか、立ち向かうか」


 もうわからん。俺は最初金が欲しくてこの大会に出た。でヒナタを雇った。そうだ。途中から勝つことが目標になったが、最初は、バウンディハントの協力関係だ。

 こんな危険に巻き込むとなると話は違う。


「……俺は正直、辞退してもいいと思ってる」


 予選のレース中。本気でムカついた。一年ぶりぐらいだ。八百長した奴ら全部潰してやろうって、考えた。考えたが、昔みたいにすぐ実行には移せない。

 俺は……コイツに、もう、情がある。畜生……。


「んな危険を犯してまでムキになる大会でもねぇんだ。たしかに今までのが無駄になるが……それはきっと仕方ねえことだ……」 


 そうだ。なんならここで縁を切るべきだと思った。俺は深く踏み込み過ぎた。結局、社会の裏側の人間。こんな綺麗な奴らと関わることは許されなかった。だから、八百長レースが起きたのかもしれない。


「だから。お前は……」

「鬼葉。龍頭の街で言い伝えられているとされる鬼の怪異。情報が交錯しているためその詳細は一切不明。ただし、マフィア、暴力団関係、ヤクザ等の組織を壊滅した際、それらしき証言記録も残っている」

「んぇ?」


 ヒナタは言った。


「ボク、少しだけ調べたんだ。鬼葉ってすごいわるいひと事情に精通してそうだからさ。もしかしてはーたんの正体は裏社会の有名人!?なんて思ったりして」


 一つの都市伝説がヒットしたという。いま言った内容は龍頭の街の外で言われてる噂としての"鬼葉"のそれだった。


「もし鬼葉が、その都市伝説の鬼みたいにさ、力があって、組織すらなんとかできる、人脈みたいなのもあったりしてさ。本当にできるならさ……」


 ヒナタは真っ直ぐ目を見て言った。


「ボクはキミを信じて、立ち向かうよ」


 そして少し緊張が砕けてこうも言った。


「それに八百長とか、普通にムカつくもん。ボクは正々堂々真剣勝負で、この大会」


 ヒナタは俺の、女の子になった俺の手を握った。


「TYRANNUSのみんなで優勝したい!」


 俺は思った。

 ロリパンで出会って今に至るまで、まだまだ日は浅いけど。確信した。

 シト・ヒナタは、俺が人生で出会った人間の中で一番、信用できる奴だ。






◆◆◆◆◆◆◆




「ダァァァァァ。交渉疲れたけど休んでる暇もねえぜお前ら」

「そうだね」

「うむ」


 さあ、俺たちはこれでヤベー奴らを敵に回したわけだが、とするとまず安全を確保しなくちゃあならない。


「事前に支度はしたな。特に燕歌」

「ああ、もちろんだよ」

「……マヌケ晒すなよ」

「おいおい命かかってるのだぞ?あまりバカにするなぁ」

「おーけー、んじゃあ指定位置に」

「ああ、また後で」


[燕歌さんがルームを退出しました]


 それからヒナタだ。


「お前は一応海老世住みじゃねえがどうするって?」

「両親には伝えたよ。ボクも同伴する」

「そうか……お前の場合は危険度どっちもどっちだが……じゃあ同じ指定位置に来てくれ、電車代は後で」

「いいよボクのお金で」

「わりぃな」


 ああ。ちょっとへんな汗出てきた。


「本当は、お前らとは電脳空間での、オンラインでの関係で止まるつもりだったんだがな」

「仕方ないよね、この際は」

「まあな」


 さて、突発で始まっちまったよ。なにしろ身の安全を確保するのも俺の果たすべき義務だからな。


「TYRANNUS、リアル避難所お泊まり会といこうか」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] コレは…ついに…オフ会!!? (*・ω・*)wkwk
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ