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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
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作戦会議の時間だ!



「失礼します……監督」


 白鷺は試合後、すぐに監督に呼び出された。【チーム:アイテール】Dブロック予選5位通過という記録は素人目で見れば健闘かもしれない。が、しかし監督は机を指で、一定感覚のリズムでつついて止まらない。


「おやおや、どうしたもんかね。あんな露骨なレースをしといて無様に5位とは。私は1位を取れとオーダーしたはずだが」

「申し訳ありません……すべて俺の責任です」

「いいや?お前の責任じゃあない。責任者は私だ。そしてこれはお前のせい(・・)だ」


 監督は机の棚から爪切りを出す。それからゴミ入れの籠を寄せて、指の爪一つ二つ摘む。


「勝利こそ全てだ。もしお前がそれで勝てないというなら、他の奴を1位に推薦してもいいのだよ。お前以外にも私の担当はいくらでもいる」

「いえ……やらせてください……!」


 白鷺は食い下がる。パチンパチンと爪の割れる音だけが書斎に響く。やがて監督は言った。


「……わかった。いいだろう。練習に戻りなさい」

「ご容赦、感謝いたします」


 白鷺は深く深く頭を下げて、書斎から出ていった。監督はそのあとすぐに携帯端末を開き、人物に連絡した。


「オッズは?……そうか、わかった。ああ、ああ……そうだ。TYRANNUSを買収する……可能性はあるさ。まあ待っていてくれ」


 端末を閉じる。爪切りを再開する。


「さて、学院を訪問しなくてはな。ああ、面倒だ」



◆◆◆◆◆◆





 予選を終えて、いよいよ本戦までの準備期間が始まった。運営も予選自体が突貫工事だったようで1週間のタイムラグができたのだ。まあ先の八百長みたいなやつは一旦置いといて。そもそも本戦をどう勝つかといったところ。んで、俺はともかく二人の今の実力なんだが……まずヒナタから。


「さすが【ホウィップ】使ってるだけある。速い動きに慣れてんな」

「まああのキャラ自体が高速制動の練習として使ってたやつだからね。成果が出てよかったよ」


 機体のカスタムはとりあえず置いといてポット型のスタンダードなやつを使っていた。超高速で動きながらもしっかりとカーブを曲がり障害物を避けていた。うむ、問題なし。


「で、お前は」

「全然、上手くならん」


 燕歌、未だに機体制御がおぼつかず。


「できねーか……」

「できないぞ……」

「そうか」


 一応俺もコツのようなものは教えている。機体をハンドルで動かすよりも動きたい方向イメージしたほうがスムーズに行くとか。どれくらいの角度で曲がればサーキットの壁にぶつからずカーブできるか。しかし。


[燕歌 脱落]


「あっあーう……」

「ああ。私は、昔からそうなんだが、"いい感じ"とか"適量"みたいなものがわからない」

「たしかに曖昧だけどな?」


 これは、仕方のないことなのかもしれない。人にはそれぞれ得意不得意がある。ちょっとやればすぐできる奴もいれば要領が悪い奴もいる。

 例えば俺はダンスの振り付けとかは見様見真似ですぐできるようになるが、逆に数学の公式をなっっかなか覚えられなかった。終いにゃ問題集をまきにくべてEDM爆音で流してながらキャンプファイヤーした。


「でも、お前、射的は得意なんだろ?」

「……まあな」

「ならそれを活かせるといいけどな」

「走りながらは撃てないが……」


 どうしたものか。本番までそんな時間ないぞ。


「ならいっそ止まって撃ったらどう?」

「「え?」」


 提案したのはヒナタだった。止まって撃つ……ね。いやいやいやいや。それ初めて対戦した時にやって散々だったろーが。


「一戦目を忘れたのか」

「勿論覚えてるよ。でも可能性あると思うんだよね」

「と、いうと?」


 ヒナタは人差し指を立てた。「その話をするにはまずルールの再確認だ」と言って。







[【Hurtling Burst -online-】大会概要を説明します!]


[その3]


[本戦の説明です!]


[本戦では予選を勝ち残った20チームが3種の特設コースでレースをしてもらいます]


[1種につき代表者1人、そしてレースの着順によってポイントが加算されます。そして3人が勝ち取った合計ポイントでチームの最終順位が決定します。もちろん一番高い点数を取ったチームが優勝です!]


[ポイントの割り当ては1位20pt 2位19pt 3位18ptと行った風に加算されます。ゴールできずに脱落した場合はその時点で0ptになりますので、急いで安全運転確認をしましょう!]


[補足]


[また事前に出場機体を前日までに登録することになります。登録した機体は変更不可となっておりますのでご了承ください]


[例外もあります!搭載機器のみ、直前で切り替えられるサイドデッキを一つ用意することが可能です!

 そしてレース毎の代表者は当日のその場で決めることができます!状況に応じて組み合わせを考えていきましょう!]


[本戦も頑張ってください!]








 ルールはそんなもんだ。そしてヒナタは持論を展開していく。


「作戦を立てるんだ。これはチーム戦、ボクたちは、3人ともがレース上手なチームではないでしょ。だから、結果的に勝ちにいく作戦を立てる」

「んな上手いこといくか?」


 俺は勘繰っていた。ヒナタはふっふっふっと笑った。


「幸い、このレースは脱落すると、そこで貰えるポイントが0になるらしい」

「……ヒナタ殿、それは幸いではなくないか?」

「え?幸いでしょ?だって」


 その時のヒナタの顔は、鬼よりも恐ろしく、悪魔が見たらしょんべんを漏らしそうなげっっすい笑顔だった。


「競争相手をクラッシュさせれば強制的に0ポイントにできるんだよ?点数操作できちゃうんだよ?これ、レースで勝てない者からしたら幸福以外のなにものでもなくない?」

「……」

「……ついに人の心を無くしたか」

「鬼葉に言われたくないよ!?」


 実に小狡く、人道を便所に流したかのような考えだ。ついに本性を表したN(ナチュラル)B(ボーン)S(サディスト)に燕歌もドン引きだ。あーあー、登録者減ったぞ。

 しかしこの考えには賛同しよう。まず俺のやり方からして相手を倒して首位を奪うって感じだしな。事実ヒナタもいま、「それで着想を得た」と言っている。


「考えたんだ。ボクと鬼葉と、そして燕歌、3人のできることを極限まで、イカした作戦をね」 


 人差し指を上げて言う。


「名付けて、通り魔殺人大作戦!!」



「「ひどいネーミングセンスだ……」」



◆◆◆◆◆◆




 VDA学院では専用のVRルームがある。そこは生徒が自由に最新機器を使用でき、いつでも練習できる。腐っても養成学校。整備はしっかりしていた。

 そんななかで東雲 讌は延々とシューティング系のゲームをしていた。気がつけば日が沈むころ、夕食のコンビニ弁当を買うために一旦ログアウトした彼女の表情は、穏やかだった。


「そうか、そう言う考え方があったんだ」


 TYRANNUSでの第一回作戦会議を終えた。それから調子がいい。それは自分の中にある可能性を自分で見出せるようになれたからだ。


「私は射的が得意。しかしそれ以外がダメ。わかっていたことだけど、今まではちゃんとそれに向き合っていなかった」


 もちろん元々自分で知っていた得意分野。だがしかし、今回で改めて自覚することになった。作戦会議で出した結論によって。

 やっていたシューティングゲームはパーフェクト。それからウィンドウを開き画像を見て、また笑顔になる。そこに描かれるのは鳩バスにおける、一つの主砲。

 それはあまりにも力強く、あまりにも馬鹿げている。通常の戦闘機型の横に並べると3倍の長さがある得物だ。


「ふふふっ。常に最強の自分をイメージするんだ……」

「そこのお嬢さん」

「……む?」


 不気味な笑いを漏らしているところを聞かれて、讌は赤面する。

 見るとそこにはジュラルミンケースを右手に持った、白コートに身を包んだ中年の男がいた。その男、胡散臭いという言葉が人間の姿で歩いてるかのよう。


「なんだ」


 ゆっくり、ゆったり、近寄ってくる。素性がわからなければ不審者のそれだが、讌は彼が誰だか知っている。


「チーム:アイテールの監督だな?」

「そうだ……少し話したいのだが時間はあるかい」

「ああ、時間ならある。が簡潔に願おう」


 監督はケースをそこらにあった机の上に置き、中身を見せるように開いた。その中身とは、大量の札束である。


「君のチームを買収させてくれないか」


 讌は、ぽりぽりと頭を掻いて、それから髪の毛をくるくるといじる。黒い髪に覗かせるブルーのインナーメッシュが窓から差し込む夕日に照らされ、翡翠色を反射させる。

 そしてその表情は、さっきと違う笑いの顔。


「商談だね?待っていたよ」

「待っていた……?」

「そう、待ってたんだ。じーーーーっくり話そうじゃないか。お互い、チームリーダーの顔を合わせて、じっくりと、友好的(・・・)にね?」



 



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