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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
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天神、騒嵐、暴君 :05 「トウゲンキョウ」



 X86年1月6日。JAPAN CUPオンライン予選当日。抽選の結果俺はDブロックとなった。対戦開始時刻は13時。それまでにゲーム内にログインし専用ルームへのチェックインを済ませろとのこと。

 で、今の時刻は11時。ちょうど昼飯でエネルギーチャージしてから挑むって感じだな。


「気合入魂といえばやっぱこの店だァな」


 久方ぶりに来たこのラーメン屋は"トウゲンキョウ"。虎紀との決戦や、紅孩一門との抗争、大事な勝負前には毎度寄っている馴染みの店……ちなみにアローズをぶっ倒した後にいった店とは違う。ここの店主は俺がもっと尖ってた時期のことを知ってる。


「うぉ?鬼葉じゃないか」

「よう店長、いつもの頼むぜ」

「あいよ。いやぁ、しっかし久しぶりだなー」


 カウンター側、壁際の席に座る。

 二十代後半の柄のいい茶髪の兄ちゃん。トウゲンキョウ二代目店長は手早く調理を進めつつ、俺に驚いていた。


「最近は喧嘩してなかったからな」

「なるほどなぁ、平和になったなぁこの街も……ん?するってーと今回はなんだ?喧嘩じゃあなさそうだな」

「喧嘩じゃなくとも勝負事だからな、端的に言えば賞金の掛かったゲームだ」

「ギャンブルか」

「……まあそんなもんだ」


 表情が難色を示す。俺の場合悪いイメージなんて腐るほどあるし、あまり説明するのも面倒なんでテキトーに頷いておく。

 出来上がるまですこし暇だ。鳩バスのことを考えすぎてがんじがらめになるのもアレだ。ここは一つ、久々にロリパンの情報を調べて────。


「ん」


 俺の横の席に一杯のラーメン。そして。


「【シーフォン・スナイパー】のミニフィギュア……」


 今となっては遠い昔感じる。ロリパンチート事件の1番の被害者。キャラクターに罪は無い。悪いのはアローズだからな。

 そんな銃を持った女の子キャラのフィギュアが何故ここに。その答えはすぐにわかる。厠からそいつが現れ俺の隣に座った。


「あ、桃兄(ももにい)

「狗飼のガキ……何故ここに」


 龍頭の狂犬、狗飼警部の一人息子。狗飼 波標(ハジメ)がそこにいた。


「何故って言われると。んー。気合を入れる為、かな」

「おいおい俺と同じ理由じゃねえか」

「そう。桃兄が喧嘩の前にはそうするって聞いたから。俺もそうしてる」


 何故か、この少年に懐かれている。本当にわからない。

 俺がババアの立場なら警察の息子と犯罪者予備軍は絶対に合わせたく無いし出来れば絡みたくないんだけどな。アイツはあの時なぜかこういった「はなしてちょうだいな」

 我が息子が本当に馬が合うと思ってるのか?俺と?


「……お前喧嘩するのか」

「俺が人を殴るところを想像してみて」

「嘲笑ものだな。じゃあなにか」

「ゲームだよ」


 へいいっちょあがり!と割って入る2代目店長。当店で一番の()人気メニューにしてガチの常連しか知らない裏メニュー"ラーメン全部盛り〜初代版〜"なる代物だ。こいつは先代店長が生み出したレシピを参照したものでありすべてがオリジナル()だ!


「相変わらずそれなんだな。あんただけだぜ。そのクソマズメニュー頼むのは」

「それマズイの?桃兄」


 波標は首を傾げる。すると2代目店長がレンゲで掬ってそれを波標に渡した。それを一口飲んだ後こういうのだ。


「味覚がバグってるの?」

「否定はしない」


 いろいろあるんだよ。いろいろな。理由がなきゃこんなマズイモノは食わねえさ。理由は……思い出したくないからいま考えるのはやめとく。


「ところ波標、この前の……【ミルキィ・クラッシュ】のフィギュア、貰ったからには飾って置いてるぜ」

「ああ、どういたしまして。虎兄から聞いたんだ。桃兄は────」

「一つ、俺はロリコンじゃあない。いいな?」

「……エイプリルフールじゃないけど」

「本当だっての!!」

「え"鬼葉お前そういう……」

「ちげえっての!!」


 俺は首を横に振って、目の前のラーメンに集中する。2人の茶化しはシャットアウトだ。食う、食う、食う。が、箸は止まり一つ、聞きたいことが浮かぶ。


「ところでよォ、波標、お前が勝負するゲームってのは……」


[Candy‼︎ I can do it‼︎ Clash Rush Dash lolly‼︎ Can────]


 音が鳴る。どうやら波標の携帯端末からだった。ちなみにロリパンのメインテーマなのは歌詞からしてわかるだろう。


「あ……母さんから」


 こちらをみて。「ちょっと電話に出ていい?」と無言で語ってくる。俺は目を瞑ってやる。


「もしもし母さ」

[波標!?あぁ、よかった無事!?]


 おいおい向こうの声ダダ漏れだぜ。あのババアかなら声を張り上げて慌てている。


「大袈裟だな」

[どこ!?いまどこにいるの!?家に帰ったらいないから心配したのよ!?どこにいるのか言いなさぁんい!!ママンが迎えにいくからね!!]

「ぃぃ……ラーメン屋"トウゲンキョウ"だよ」

[あああそこね。すぐ行くから……ちょっと待った、"トウゲンキョウ"ですって?]


 それまでヒステリックなおかんみたいな声だったのが、いつもの、そう、狂犬としての、威厳のある声に変わった。


[波標、鬼葉がそこにいるのね]

「え、えと……それは」

[代わってちょうだいな]

「そうやって怒るとシワ増えるよ」

[代われ]

「はいはい」


 あのババア。流石の嗅覚だな。伊達に何年もこの街のクソ共を縄にかけ続けてただけある。波標が渋い顔をして携帯端末を渡してくるので俺は受け取り耳の近くに持っていく。


「よう、元気か、年寄り」

[鬼葉。波標に何かしてみろ。その時はお前の生首で門出を立ててやろう。ハッピーニューイヤー」

「おいおい、来年の事を言えば鬼が笑うって言うだろ、俺様にはやさーしくしとけ」

[諺を字面だけで捉えてるところに教養の無さを感じるわね、まあそうしとくわ」

[ふん]


 俺はそのまま携帯端末を返した。やりとりに困惑している様子の波標。余計な会話はしてない。いや、逆か、余計な会話しかしてないか。嫌な話だが、曲がりなりにも信頼ってものがあるんでな。会話の内容はさておき、これは冗談を交わしただけだ。


[波標、迎えにいくからその時は連絡ちょうだい]

「大丈夫だよ。俺は歩いて帰れる」

[……そう。チンピラに絡まれたら私か、そこのピンクの坊やの名前を出してそれから」

「わかった、わかったから」

[……気をつけなさい]


 電話が切れる。過保護な親だなと思う反面、この街に住んでりゃそうなるのも仕方ねえなとも思う。

 すこし落ち着いたとはいえこの治安最悪な街は何が起こるかわからん。爺さんが唐突に拉致られることだってある。

 俺に息子がいたら同じことをするのか?


「波標。お前がなんで俺を慕うのか知らんがあんま関わるな。その方が身の為だ」


 鬼葉の関係者かぁ!と目をつけられてみろ。ネットならまだわからんが、リアルならその先は地獄だ。鬼なんて言われてるけど俺ァそんなん望んでない。


「なんで?」

「んぇ?なんでってそりゃ」

「桃兄は、たしかに悪名高いヤンキーだけど、実際は違う」


 何をいいだすかと思えば。

 やっぱコイツ。多少大人びていても、まだまだ中学生なんだな。


「いんや。お前わかってねーな」

「けど」

「お前が思ってる程、俺ァ良い奴じゃあない」


 頭を片手で包み込み、ぐりぐりと指に力を込める。痛い痛いと声をあげたらすぐやめる。

 そう必要とあれば。その小さな頭蓋骨を握りつぶしてお手玉することだってできるのが俺だ。


「必要以上の関わりは避けた方がいい」

「……」


 俺は席を立つ。


「ごちそうさん。安くて助かる、この店は」

「相変わらずのビンボーか?」

「まあな」

「ゲーム、勝ってこいよ」

「ったりめーだ」


 俺は2代目店長の前で手と手を合わせる。それから波標に会釈してから退出した。



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