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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
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天神、騒嵐、暴君:01 「嫌な風が吹く」




 燕歌は少し遅めに目を覚ます。いつも通り朝食をとって、食堂に並ぶのだが今日は騒がしかった。生徒たちの会話を聞けばなんの話題かはすぐわかる。


「例の鳩バスの大会、予選あるらしいぜ」

「はー?マジかよ」

「聞いてないな」

「いきなりじゃね?運営しっかりしろよ」


 "龍頭市"からはだいぶ遠い場所、"海老世市"は"V(ヴィクトリア)D(デジタル)A(アーツ)学院とは腐る程のアマチュアゲーマーを抱え込んだマンモス級養成学校。

 才能あふれる上位学生はいざ知らず、下位学生は「やってる大会はとりあえず出ろ」がここでの方針。つまり燕歌の周りにいる生徒の大半が出場者なのである。ともすれば朝の話題に"鳩バス"が来るのも当然だ。


「……予選か、鬼葉殿とヒナタ殿は把握しているんだろうか」


 AtoZの方にメッセージを入れて確認を取る。等の鬼葉とヒナタといえば寝ているのだが、燕歌は知るよしもない。電子端末でネットニュースを読み漁りながらトンカツ定食を頬張る。


「む……なんだね」


 そんな燕歌の前に生徒が3人寄ってくる。友達か?いいやトモダチ(・・・・)である。


「おいなんだよその眼は?なめてんのか?」

「別に。そんなつもりはないがね」


 彼らは────燕歌を学院内で孤立させた主犯格である。


「おまえさ、なんか調子乗ってんだろ」

「マジきもいんですけど」


 燕歌は首を傾げる。


「私が何かしたかね?そんなに目障りなら関わらなければいいのに」

「てめえっ!」


 1人が胸ぐらを掴んだ。

 

「てめえのそういう軽い感じがきにくわねえんだよ」

「そうそう、雑魚のくせに生意気なんだよな」

「ほんときもいんですけど」


 燕歌は植物にでもなったかのように目を瞑り固まる。静寂が3人をさらにイラつかせる。掴んだ手を乱暴に離し椅子に座らされる。


「どーせチームいねえんだろ?」

「ざまーねえ!」

「まあ当たり前よね、あんたみたいな無能は誰も相手にしない」


 耳が痛いな。と、燕歌は内心思う。実はこの3人の言っていることは半分当たっている上、孤立したのは本人の性格の問題でもあったりする。 

 やれやれいつまでこの嫌な時間が続くんだと、げんなりしていると、流れをぶった斬るような話題は向こうから飛び込んでくる。


「お、おいあれ」

「アイテールだ!チームアイテールだ!!」


 食堂入り口。その者たちは現れる。


「シロサギさんだ!」

「わおマジかよ」


 さっきの3人も、燕歌などというゴミ同然な人物に構ってられるかと、身を翻す。ちなみに3人の名前はゲンタ、ユキシ、カヤ、なのだが、燕歌は覚えていない。覚えなくてもいいことなのだ。


「"チーム:アイテール"」


 天才、神矢(カミヤ) 白鷺(シロサギ)を筆頭に組まれたエリート衆。この学院の所謂上級生徒にして学生プロゲーマーにして────本大会の優勝候補である。


「しかし妙だな。なぜシロサギがここに」


 シロサギは確かに同じ学院の生徒ではあるが、上位生徒故に食堂から違う。高待遇な専用の場所があるのに、なぜわざわざ来たのだろうか。燕歌は疑問符を浮かべるのだが、一つ察せられることがある。それは監督が同伴していて、その右手には|大金が入ってる手提げのアレ《ジュラルミンケース》を持っていることであった。



◆◆◆◆◆◆





「ふっがぁぁぁぁ、アァ、夜更かしはいけねえなァ?」


 10時ごろ。昨日は鳩バスを超やりまくった。俺はこのあともバリバリやるつもりだが、ヒナタはどうか。


「うぅぅぅ……」

「キツそうだな」

「寝ても疲れが取れないんだ。逆に鬼葉なんで動けるのさ……」

「持久走は得意なんでな」

「けーっ!リアル強者けーっ!」


 狐みたいな顔になってそっぽ向いた。わりぃな。こちとら夜通しで殴り込みしまくったこともあるからな。相手がアスリート様でもない限り体力勝負じゃ負けねえ。

 ただ、まあ、無理をするのはよくねえな。


「オーバーワークして良いことなんてねえか。よし、ちと休憩といこう」

「ありがとう。それじゃしばらく席を外すね」


 そう言ってヒナタは退出した。まだまだ出来るがキリがいい。俺も俺で休憩、というより野暮用を思い出したんでそっちを済ませておこう。鳩バスからログアウトした。










 野暮用つってもそんな大したことじゃあない。現実世界に戻ってきてやることは一つ。相棒(・・)のメンテナンスだ。S05の方じゃないぜ。リアルの相棒だ。

 聞くに本戦はなるべく会場に来てやってもらうと。オンラインでなんでもできるのにこの文化が潰えてないのはよくわからん。それ言ったらリアルサッカーとeサッカーがどっちもある現状もつっこみどころだしな。

 で、会場は俺が設営した場所であり東京にある。となると相棒には仕事してもらわにゃいかん。コイツ繊細だからな。サボると黒い煙撒き散らしてもっとめんどくさいことになる。


「便利屋陽炎。ここにあと何回世話になるんだろうな?」


 爺さんのいびきは相変わらず。俺はシャッターをあげて、相棒とご対面する。


「拗ねないでくれよ?S05はゲーム内での相棒ってだけだ、俺の一番(・・)はお前だぜ」


 返事なし。だろうな。てかバイクに話しかけてるヤベー奴になっちまったよ俺。誰も聞いてない(・・・・・・・)から幸いだが。


「さァて、ちと我慢しろよー、お前の身体に異常がないか────」


 バイクの下でしゃがみこんだその時だった。

 背後から並々ならぬ気配を感じたのは気のせいではない!


「るぁっっ!!」

「あぁん!」


 上半身を極限まで地面に接地し、背後のそれめがけて脚を突き上げる。靴の先がなにかを弾き飛ばしたのち金属音が響く。多分、ナイフかなにかを弾いた。

 俺は今も状態からすぐさま跳ね起き振り返りざま拳の裏を撃つ。

 拳は、相手の腕と腕の間で抑えられて。戦いの流れが止まったその時に目と目が合う。


「瑰、一番はワタシでしょ?」

「……うげぇぇお前ムショから出てたのかよ」


 捕まった拳を振り解き、ハイキックを放つ。


「なぁん」


 顔を打ち砕く直前で止めた。これで動揺するんじゃ無理だな。今の虎紀なら反応できたぜ?


「俺に勝てると思うなよ、鹿目(カナメ)

「どーして麻酔針が効かないの?」

「んあ?」


 首の後ろに手を回した。いつのまにか針が刺さっていた。物騒なことしやがる。


「貴方の身体の中身が見たい……」


 さて、コイツが次に言う言葉なんて決まってる。即答させてもらうぞ。









「結婚しよ」

「お断りだ」


 コイツの名は桜樹(サクラギ) 鹿目(カナメ)。龍頭三大勢力が一角、"紅孩一門"組長の姪っ子にして俺の────いや、マジで認めたくないが元相棒って奴だ。


 

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