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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
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飛ばない燕




[【Hurtling Burst -online-】大会概要を説明します……と、その前に]


[重要なお知らせです]


[本大会、誠に喜ばしいことに多くのチームが参加応募にお越しくださいました。ありがとうございます!]


[しかし、ゲーム上の仕様で、規定人数が超過しそのまま開幕することができない状況にあります!]


[そこで、本戦の前に予選を取り行いたいと思います!]


[突然の取り決め、申し訳ございません。ご理解の程よろしくお願いします!]


[改めて、更新版その2へ続く!さようなら!]





◆◆◆◆◆◆◆





 鳩バスから一旦ログアウトし、AtoZのコミュニティ広場へやってきた。ここでヒナタの募集に乗ってくれた、3人目のメンバー候補と待ち合わせている。


「どんな人かな!」

「やけにワクワクしてんなお前」

「鬼葉は……嬉しくない?」

「嬉しい、か?いや、会って見ないとなんともいえねえよ」

「たしかに」


 もしかしたらとんでもねえキチガイかもしれねえぜ?はたまた稀代のジーニアスかもしれんが。


「ただ、今回はお前に感謝してるぜ。俺ァ人付き合い得意じゃねえしな」

「そうなの?」

「んあ。正直……」


 正直、目の前のヒナタとうまくやれてる気はしてない。あくまで契約者として立ち回ってるつもりなんだが油断すると深く踏み込み過ぎちまう。俺とコイツはライバルだからな。


「正直?」

「いんや、なんでもねえ」

「そう……でも人付き合いなんてボクも苦手だよ」

「……」

「ボクなんて学校に友達いないからさ……あっ」


 しまった、口を滑らしてしまった!と言わんばかりに手で抑えている。俺は肩をすくめてため息をついてやる、わざとらしく。


「安心しろとっくの昔に気がついてたぜ」

「!?いつ?どうやって?」

「さあ、どうやってだろうな?」

「なになに!?怖いんだけど!?」


 軽くいじったら反応が面白かった。

 はてさてAtoZのど真ん中で俺ら2人は棒立ちだ。

 

「で?ここで待ってりゃそいつが来るのか?」

「うん、少ししたら飛んでくるよ」


 人混み。白い空間に多種多様なアバターが歩き回る。虎紀が頭に骨を被った異形だったように、全身赤色の鋼で覆われた奴や、星マークの盾を持ったソルジャー、緑の体の肉ダルマ野郎とか四角いハンマー持ったヒゲがいたりする。なんかどっかで見たことあるな。映画とかで。

 そんな最中に青い亀裂が現れて、独特な機械音を発しながら人影が現れる。

 ゆっくりと目鼻筋がくっきりしたぐらいで俺たちの目の前で止まる。


「あ、足滑った」


 そして顔面からすっ転んだ。いや、まて、その体勢からどうやったら転べるんだ、教えてくれ。


「失敬、慣れてないものでね。募集を見かけて来た。|

燕歌エンカという。以後よろしく」


 一言でいうと綺麗な人。銀髪ボブカットに明るいブルーのインナーメッシュ以外は標準的な女性であると捉えられる。アバターの見た目なんて好きに弄れるから第一印象は当てにならないが……これは俺の勘だが多分中身もちゃんと女な気がする。

 それと問題が一つ。性別や見た目よりどうしようもないオーラが滲み出てる。


「おっと、よっと、すまない。人混みで頭がおかしくなりそうだ。あぁぁ隕石よ降ってこないか。え?道徳心に欠けている?しかし君らも一度は想像したことはあるだろう、例えば学校にそれが衝突する様を」


 こいつ、もしや頭やばいんじゃないか?感覚がズレてるタイプのバカオーラだよこれ。

 ちなみに学校潰れろって思ったことぐらいはたしかにある。とくに月曜とかな。


「ボクはシト・ヒナタ、こっちは鬼葉よろしくね」

「あぁ、どうも、よろしく頼むよ」

「俺ァ、鬼葉って名で通ってる、夜露死苦」

「こちらこそ」


 ヒナタ、それから俺と、握手を済ませる。まあ挨拶はこんなもんか。


「チーム参加してくれてありがとう!」


 と、ヒナタがそう言う。燕歌はこちらこそと会釈をする。


「ちなみに聞きたいんだけど……どうしてボクたちのチームに?」


 理由はなんだろうか。「いい宣伝文句だった?」と質問をしている、対して燕歌って奴は首を傾げてこう言った。「いや宣伝文句は酷かった」と答えた。一体どんな文章で募集かけたんだよ……これもしかしなくても人来たの奇跡じゃねえか?


「実はだね、私はチームがいないのだよ。なぜいないのかというと……いや、うん、トモダチと出る予定が1人余ってしまったんだようん。まあ私が進んで抜けた。ああそうだ、そうだとも」


 怪しい。話は続く。


「しかし私とて大会は出たい、なので募集を探すことにした」

「それでボクたちのチームを?」

「ああ。ドンピシャのタイミングでタイムラインに流れて来たのでな、ある意味その怪文書に惹かれて今に至る」

「怪文書……うぐ」


 ヤンキーとして、暮らしはじめた俺の元にはよく辺な奴ばかり来る。どっか頭のネジがぶっ飛んでる奴だ。こいつも例に漏れず、なんかおかしな奴な気がする。巡り合わせで出会ってるはずなんだがおかしいな。まともな奴はいねーのか。え?ヒナタ?コイツも中々アレ(・・)だぞ。

 そんな、アレなヒナタを少し呼ぶ。耳元で静かに、燕歌に聞こえないように囁いてやる。



「ちと、試す」

「え?」

「試験レースだぁな」

「はぇ!?それはどういう!?折角来てくれたんだよ!?いいじゃんこれで!」

「いぎっ!?いきなり大声出すなや!鼓膜破れるだろォが」


 まったく。

 まあヒナタの言いたいこともわかる。わかるぜ。折角1人来てくれたというのに、それを腕組みながら「うーーん」と喉鳴らして渋ってるのと一緒だからな。たしかに失礼かもしれん。だが。


「チームである以上、契約者である以上、優勝を目指す以上、誰でもいいわけじゃあない。勝利の可能性を下げるような半端者は許さねえ。それはあたりまえだろう?」

「……」


 何かいいたげだが、落ち着け。本当にほんの、試験レースだ。難しいことじゃあない。


「慌てんなよヒナタ。燕歌つったな。まずは見させてもらうぜ、走りっぷりをな」

「鬼葉っ……」


 口を歪めて反対しようとしてる。が、それに被せるように燕歌は言う。


「わかった。走ろう……」

「燕歌さん!?」

「それが条件であるなら……私はやるしかない」

「でも」

「勝負だ、鬼葉殿」


 いい心意気……と言いたいところだが、当の燕歌も宣言に妙に自信がなさげで気になる。ちなみに俺的審議はもう始まってるぜ。


 

◆◆◆◆◆◆




 練習定番コース、【アンドロメダサーキット】に再三戻ってくる。鬼葉は例の機体に乗り、燕歌も自分専用の機体に乗り、そしてヒナタがそれを観察する形だ。


「鬼葉は、常時本気で手加減を知らない人。大丈夫かな燕歌さん」


 なんといってもあの超速特攻がある。スタート開始後、目にまとまらなスピードで衝突、そして強制脱落に至り大敗する。したらどうだろう。そんな弱い奴到底鬼葉は認めないのでは?とヒナタは考える。


「燕歌さん……ボクはみんな仲良くしてほしいな……」


 勝つために必要な篩なのかもしれない、が、ヒナタからすれば居心地良くない。両者位置につく。

 

「あぁ!やっぱ止めればよかった!ダメだぁ!いや、でも燕歌さんが超強かったら大丈夫だよね……ぶっ倒しちゃえ!」


 レースは開始する。


[○○○○]



「爆速ゥゥゥ!!」


 勢いよくスタートを切る鬼葉。まずい!これはやっぱり初手特攻パターンだ!と、思わず目を瞑ってしまうヒナタ。

 しかしそれはヒナタと鬼葉の予想を裏切る形に終わる。突撃特有の爆発音やパイプに擦れる音は聞き取れない。


「んぁ?」

「へぇ?」


 それもそのはず。前提から違うのだから。突撃する相手は前方にはいない。それどころか遥か後方。なんということだろう。


「「スタートを切っていない!?」」


 燕歌の不可解な行為に、別空間にいる両者は奇しくも同じ反応をしてしまうのであった。

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