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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第二章 Hurtling Burst -online-〜超高速のその先へ〜
36/82

バ美肉ヤンキー




「コンビを組まない?」

「コンビぃ?なんのこっちゃ」


 俺は理解に苦しんだ。いやチーム組むのと大差なくねえか?コンビって。


「っていうか3人1組だからトリオだろ」

「あっ、いや、そうじゃなくて」


 チームとはまた別の枠組みなのだとヒナタは首を横に振る。じゃあどの枠だと聞き返してみればこう答えた。


「ボクは、知っての通り動画配信をしてる。でも、正直ボク1人だけじゃ伸び悩むんだ」

「おう?」

「それで、そんなボクでも決まっていつもより視聴数が多くなる回があるんだ」

「ほうほう?」

「それは……鬼葉、キミが出る回だ」

「そうか」


 なるほどなるほど。なんか話が見えてきたぞ。要するにあれか?


「コンビって、配信者としてのコンビってことか?」

「そう!そういうこと!」


 ヒナタは熱弁する。


「正直、ボクは一人で輝くようなタイプじゃないんだ。前に出てくれる主役がいて初めて活きると思うし、そっちの方がやりやすいと思ってる。

 鬼葉は配信に出るたびになんかすごいことして、必ず配信を盛り上げてくれる、なんていうかこう、"持ってる"んだよ」


 向き直る。


「だからコンビを組むことを条件にしてほしい」


 その言葉に対し俺は少し考えた。

 前にも少しだけ考えたことがある。動画配信者になることを。

 鬼葉って通り名が龍頭の街さえ飛び越えてやべえって噂になったら、なんか、いいよな。俺はそう思う。

 なんならついでに収益あがればもっと美味い飯食えるようになれるか?まあ当たればラッキーってぐらいだが。


「いいぜ、渋る理由もねえし」

「やった!」


 これじゃどっちが交渉仕掛けてるかわかりゃしねえな。まあこっからは賞金の話だ。


「優勝賞金は240万だ。無難に一人頭80万でいいな」

「にひゃっ!?はちじゅう!?ちょっと、想像できない……5万円くらいでいいよ」

「5万ってお前、良い家のお年玉ぐらいじゃねえか、金は、あったほうがいいぞ?」


 80万、80万と目を回しながら呟いているヒナタ。まあ、一位とれなきゃそれもねえからこれからなんだけどな。

 金に文句はなさそうなんでいいとしよう。


「それで?配信何やんだよ?」

「え?配信するの!?」

「お前コンビ組むんだろ?そしたらやることいっぱいあんだろーが。機材準備したりよォ、コンビ名決めたりよォ、初配信したりよォ」

「なんか意外と乗り気!?」


 別に乗り気ってわけじゃない。これは、アレだ、金の為だ。全ては金の為にやってるだけだ。大会までの繋ぎの収益になり得るかもしれねーし。


「じゃ、じゃあさっそくだけど配信の準備をしよう……まず"AtoZ(アズ)"のアカウントを新しく作る必要がありそうだね」

「AtoZ、あーー、それか」


 AtoZ、最大手電脳SNS。ヒナタ曰く、リアルでのアカウントは使わず、配信者としてのアカウントを別に作るのは一般的だ。

 するとヒナタ、思い出したように言う。


「あ、それともう一つ条件なんだけど」


 











「アァ……こんなもんでいいか?」


 AtoZはSNS。アカウントを登録して、オンラインの電脳空間を闊歩する。ある意味ゲームとも言えちゃいそうなコミュニティ。

 で、そこでの自分の見た目のことをアバターなんて言い方をする。


「『もう一つの条件は鬼葉にとっての"一番可愛い"って感じのアバターメイクにしてね。視聴者は美少女好きだから』ってよォ……」


 そりゃあ視聴者がどことも知らない漢を歓迎しないってのは理解できるぜ?けどよ。


「また女の子になんのかよ俺は!」


 どうするよ鬼葉って名前通すつもりだったがゴロツキどもに何言われるかわかったもんじゃないぞ。渋る理由ないとか言ったが訂正だ馬鹿野郎、これめっちゃ嫌だァ!!

 鏡に映る俺は女になっている。ここはアバターメイク。ここで自分の新しい身体を作る。

 取り敢えず俺の身体をベースにチチとケツのでけー女が出来上がったわけだが、いや逞しすぎる。可愛いとは程遠い。

 アクション映画の死線をくぐり抜けたような貫禄がある。その貫禄多分あったらダメなやつ。


「大体可愛いってなんだよ!!わっかんねえよ!!」


 そんな趣味ねーし。

 うーん、昔の女は到底可愛いとは言えねえ。てか思い出したくないし。可愛い、可愛い。


「そうだな」


 俺はまず髪の毛を桃色に染めた。これは確定事項だ。

 それから身長を縮めた。


「またちっせえ女の子……けど、俺にとって可愛いって言われたら」


 まあ、【ミルキィ・クラッシュ】なんだよな。俺はアレで初めて愛らしさ、または愛着らしきものが湧いた。可愛いってつまりそういうことなんじゃないのか?


「『この子が喜ぶようなことをしてやりたい』って思わせる見た目がいいよな」


 垂れ目にしてみる。輪郭をふっくらと、いかにも貧弱という感じで。

 うん、確かに守ってやりたい感出てきたがコレジャナイ感もある。俺は、もっと、こう。ガッツのある方が好きだな。コイツできるって感じの。

 細くて長い眉毛、体格は引き締まったスポーツ女子って感じ。

 口元は小さく。微調整。ニコッとガキくせえ笑顔が似合う、それでいてシーンと黙ってるときはクールに、そして困り顔で「この子は俺たち、私たちがなんとかしてやらなきゃ!」となるように。


「おう、こんな感じか」


 鏡の中の"鬼葉"が頷いた気がした。多分これが俺の完璧、俺にとっての可愛いだ。


「ふん、最高にキュートに仕上がったぜ!さすが俺────俺……俺って一人称は可愛くねえよなァ?」


 あと口調だな。こんなの納得いかん。

 声帯は低めの女声にセット。

 「俺」じゃダメだ。男勝りっていうことにするにしても男が出過ぎてる。


「と、いっても見た目からしてキャピキャピするようなキャラにはしてねえ。"ウチ"ってところか」


 俺は咳払いをする。


「ウチが新しい鬼葉だ、まあ、よろしくな」


 おお、これでいい。

 これでいい。

 これでいいけど!?なにしてんの俺!?


「な、なんということだ。気づいたら、こんなことに……」


 本格的に女の子の振る舞いを始めている自分に気がついた。俺は最強で最恐で最凶のヤンキーだぞ。こんなのって、こんなのってェ!!


「ダメだァ!俺は俺!俺俺!女になりきる必要ねえ!」


 見た目こそ要望通り可愛くしたつもりだが、あくまで自然体でいこう。

 さて、これがネットにおけるニュートラルな俺ってわけだ。どうもキャラの皮をかぶるゲームが多くて、ぶっちゃけ見た目コロコロ変わっちまうんで、あまり見ることなさそうだがな、この姿。

 例えるならアレだ、「科目ごとに先生違うから印象薄い高校の担任」

 さて、おめかしも終わったことだしヒナタにチェックしてもらうとしよう。 





◆◆◆◆◆◆





 ここはAtoZのコミュニティ大広場、広大な空間にアバターが絶え間なく現れたは消えを繰り返している。消えた先はログアウトしたか、友達の元へ瞬間移動したから、連携しているゲームにログインしたかのどれかである。

 そんな場所で鬼葉を待つヒナタ。手元のウィンドウで"鬼葉"とアカウント検索しスライドで更新をし続ける。

 数分後、パッと新規で表示される。


「あ、できたんだ!」


 すぐさま名前をタップした。



ーーーーー

鬼葉 さんに会話申請しました。

ーーーーー 

承諾されました。

ーーーーー


 ヒナタの身体は光を放ち、それからワープジャンプをする。場所は、鬼葉のいる場所。

 

「……あれ?鬼葉、どこ?」


 キョロキョロとあたりを見回す。そして、目の前に、桃色の髪の毛の少女がそこにはいた。


「も、もしかして、鬼葉」

「ああ、新しい姿の俺だ。"可愛い"だろ?」


 その洗礼されたアバターの完成度に、ヒナタは息を飲むのだった。



AtoZ

ぶっちゃけほとんどサマーなんとかのアレ

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