曰く、スピードは正義
[【Hurtling Burst -online-】大会概要を説明していきます!]
[その1]
[本大会は3人1組の団体戦になります!]
[当日のレースフォーマットでは毛色の違うコースを3つ用意いたしました。ですのでチームから1人1コースを3ラウンド行ってもらいますよ]
[そして各レースの結果を集計し、最終的に最も順位が高かったものが優勝。おめでとう!!]
[それでは、次の説明は大会概要その2をご参照ください!後ほど!]
◆◆◆◆◆◆◆
「あーー」
それはつまり。
「俺大会でれねえじゃねーか」
やべえよ。だって俺チーム組んでるやついねーもん。どうするよ。
「参ったな、完全に個人戦だと思ってたんだがこれじゃあ……」
どうする。大会は見送りか?いや、ないない。俺ァ7500円を払って買ったんだぜ?今更出ないという選択肢はねえ。
が、実際問題チームメンバーなんていないわけで困る。
俺には、人徳つーか、人脈つーか、そういうのねーし……大体俺ァ仲間なんざ作らねーし……どうするよ。
「あーー。どうにか条件の見合う取引相手が必要、240万山分けになっちまうが大会に出ないならそもそも0円だ」
俺は考える。どっか身近に、一番誘いやすい奴は────。
「いや……いるじゃねえか、2人」
そうだ、俺には今回のレースにぴったりな人材をちょうど2人知ってる。
1人は高速キャラを使いこなす俺のライバル、1人は高速でバイクを乗り回す俺の戦友。あるいはあいつらならチームを組めるかもしれない。
「交渉の時間といこうか」
俺の取引相手はアイツらで決まりだ。
◆◆◆◆◆◆◆
「今日作ったクリーチャーはこちらです、じゃじゃーん!【多脚式高速機動兎ちゃん】です!!」
{相変わらず気持ち悪くて草}
{シテ……コロシテ……}
{えげつねえ}
{非人道的過ぎる}
{これがナチュラルサディスト}
酷いなもう、可愛いと思うけど?とわらわらと多すぎる足の兎のクリーチャーを愛でるのは、鬼葉のライバル、シト・ヒナタだ。
ヒナタ、現在何をしているのかといえばゲーム【クリーチャー・クリエイト】の通常配信だ。
{これパート8動画化やな}
{毎回最悪を更新してく栗シリーズ}
【クリーチャー・クリエイト】通称、"栗"
マッドサイエンティストになったプレイヤーは合成怪獣を造り、街を破壊する。そしてその被害=スコアで、如何に人類を破滅に追い込めるかを競うという、開発元の人間性が疑わしい畜生ゲーミングである。
シト・ヒナタは元々その界隈のプレイヤーであり、彼、あるいは彼女の特徴といえば「兎縛り」である。
「今回の兎ちゃんはなんといっても速いんだ。前回の【超小型分散兎ちゃん】の飛躍よりも全然速い」
ガラスの水槽、液体が黄緑色に発光し、その内側に蟲のような足をガサガサさせてもがく兎ちゃんがいる。
「それじゃ早速、野に放ってみるよ!」
{ど畜生!!}
{酷過ぎる}
{サイコパスや}
巨大生物が地上に現れる。黒い体毛、耳をぴくりと動かし、街の人間に反応する。
そして多脚が絡み合いバネ脚に変化する。ぎゅっと力を込めると、兎ちゃんは……ソニックブームを生み出し飛来する。
[あああああ!!]
[助けてぇぇ]
[いぎゃぁぁぁ!]
「こんな感じで走るだけで建物を破壊する」
{阿鼻叫喚}
{ここが地獄か}
{素晴らしい}
その光景をまじまじみる姿は、悪魔であり純真無垢な子供にもみえる。兎ちゃんは目にも止まらぬ速さで街を横切って地平線の彼方へ消えた。
「ああ、最高だね!やっぱスピードは正義だよ!」
と、ヒナタはそういう。
{毎回スピード意識してるね}
{素早いキャラ好きなの?}
そのコメントが目に留まり、ヒナタは反応する。
「まあ……そうだね。漫画とかアニメのキャラで、こう、敵の攻撃をちゃちゃちゃっと避けて一撃通す展開とか好きなんだ」
なにか思い出に耽る様子。しんみりとしていてコメントは空気を読んで3点リーダーを打つにとどまる。
するとそこに、一つの爆弾が投下される。
鬼葉{ちと話があるロリパン集合}
「鬼葉!?」
{うおおっ!?}
{告白か!?}
{はーたんきちゃ!}
{はーたんだ!}
かくして召集されるシト・ヒナタ。果たして何の話なのかまだ知る由もないが、ゲームをやってて初めてできた"友人"の声に少しだけ口角を上げるのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
なあ、なんかヒナタのやつ、やべーゲームしてた気がすんだけどあれ幻覚か?黒い物体が街を破壊するのをニコニコでみてたんだが……あいつ、心に闇を抱えてるのかもしれん。
今度鬱に効くヤク(合法)でも教えてやるか。
「お、きたな」
相変わらず【ホウィップ・スカイハイ】の姿で登場した我がライバル、シト・ヒナタはなにやらご機嫌な様子だ。
「鬼葉!久しぶり!」
「久しぶりってお前まだ4日しか経ってねえぞ」
ランカー、チーター、との激戦からメンテナンスに。その後復旧したのにも関わらず俺はしばらくロリパンにログインしていなかった。理由はまあ単純に仕事してたからだけど。
「4日でも久しぶりに感じるから久しぶりだよ」
「そうかい」
「それで?話って?」
与太話はその辺に、ヒナタがスパッと本題に切り込んでいく。話が早い奴で助かる。
「実はな、お前と、ちと、取引したいことがあってな」
「取引?」
鳩みたいに顔をくるっぽと傾げる。俺は言った。
「ヒナタ、ゲームの大会に出る気はないか?」
「え?」
俺は説明を続ける。
「【Hurtling Burst -online-】JAPAN CUP X86 日本最速を決めるレース大会だ」
「はーとりんぐ……あぁ!鳩バス!?近日やるアレ!?」
「そうだ」
「それ、に、ボクが?」
「正確には俺とお前、チームで、だが」
困惑してるな。まあ確かにいきなりそんなこと言われても困るだろう。
「勿論タダでとは言わねえ。報酬はちゃんと山分けだ……あ、あと、飯とかも奢ってやるぞ、うん」
ダメかね。俺でも結構無理矢理なこと言ってる自覚はある。けど、いねえんだ。他に頼れる奴が。
「大会はスリーマンセル俺1人じゃあダメなんだ。無茶でも頼む、力を貸してくれ。借りはきっちり返す……!」
ヒナタはなんかしらんが嬉しそうな顔をしてる。これは……好感触か?あ、いや困った顔をした。そのあと悩んだような表情になったな。少しすると何が閃くように天井を見上げ、それからニヤリと笑った。
なんだ、こいつ。完全に企んでるな。やはり交渉は避けて通らんらしい。
「じゃあ、一つ、条件を飲んでくれたら協力するよ」
やっぱりきたか。
「条件の内容は?」
金関係は勘弁してほしい。とにかく、俺にできることならやってやるつもりだ。食い扶持がかかってるから。
ヒナタはずっと笑ったままこちらをみる。さっきのやべー一面みたからかわからんが、俺の身体は思わず唾を飲み込む。
そして、口を開く。
「ボクとコンビ組まない?」
「……んぇ?」
コンビとチームの違いとは。
クソどうでもいい設定ですがクリーチャークリエイトにおける種族:兎は弱小寄りのマイナーです。
普通にクリーチャーに混ぜるだけではスコアが下がるだけ、しかしこれ上手いこと組み合わせてランキングスコアを叩き出す方法を模索する。それがヒナタがいつも投稿してる動画シリーズです。




