軍資金7500円から始まる最速への道
「食事代と、光熱費と、バイクの維持費と諸々差し引いて……今月残り7500円」
先月は一時0円だったところから考えれば、マシと言うべきか、それとも大差ないか。
「いや、これも今から0になるし大差ねえな」
電子端末に映る7500という数字は残高、そして7500という数字がもう一つあるがこれは値段だ。
「やるぜ。【Hurtling Burst -online-】」
そう、俺は今このゲームを購入しようとしている。
【ロリポップ・パンクラッチ】での戦いが終わり、次なる戦場は空へ。
しかしなぜこのゲームをやることになったかといえばやはりJAPAN CUPだ。
「賞金240万のタイトル、強え奴と戦うのはそれはそれとして、金が欲しい」
流石にずっともやしは飽きるし、なにより身体に良くねえ。リアルで運動することを考えても、金の解決はした方がいいだろう。
{購入しました}
ポチった。
「まずは【Hurtling Burst -online-】がどういうゲームか調べるか」
ロリパンと同じ轍を踏んで面食らうのはごめんだ……いや、ロリパンも結果的に悪くはなかったが。
【Hurtling Burst -online-】通称:鳩バス。このゲームのテーマは「自由カスタム型天空レース」つまりどういうことかというと自作飛行機でレースしようぜってこと。
良い。殴り合うわけじゃないが、競技性があるから嫌いじゃない。
問題はレース以前にマシン組み立てという、これまた複雑そうなアレだが。ま、大丈夫だろ。
普段は相棒を乗り回してるからな。下手な機械より繊細複雑なメンテナンスが必要なんで、そういうのには自信がある。
高校中退ヤンキーだってな、頭まわせばそれなりにできるんだよ。
「ログイン」
六畳一間は崩れ去り次に現れるのは────。
広い空間、窓の外には宇宙、SF映画に出てくるような司令室って感じだ。ロリパンみたいに黒猫がいきなり現れることもなく。そして、身体が女の子になることもない。
しかしな、それより衝撃的なことがある。
「なんか、こう、空気感っていうか、全体的に」
そう、全体的に。
「リアルすぎる」
これが7500円の力なのか。ロリパンとは比べものにならないほどに、モノの描写が実物っぽい。空間に流れる空気の動き、感じ取れる室温、そして匂い。何もかもが。いや150円と比べるのも酷かもしれないが。
俺はこの司令室を一通り歩き回った。デスクとか、柱とか、宇宙空間が外に見える窓を触りながら。
世界を満喫した後、ついにウィンドウは現れる。多分これからが教習の始まりだ。
{これよりチュートリアルを開始します}
まずはマシンの組み立て、といきたいところだが、流石に難解な工程は後回しに、チュートリアルは先にレースをしてみよう!とのことだった。
あらかじめ用意されたお試し型に乗車することになる。
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【FAレッドナイト 練習用量産型】
形状:戦闘機型
装甲:レッドナイト
主力砲:レーザーシューター 2基
推進装置:バレル型真空ジェット
搭載機器
迎撃型ドローン 1基
強襲用ボム 1基
2連ホーミング砲 2基
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難しい単語並べちゃいるが、要は赤色の戦闘機ってわけだ。任せろ、俺様は天才だからな、乗りこなしてやるよ。と。
「しかし妙だな……なんでミサイルだの砲台だのついてんだ、これレースだろ」
まあ、深いこと考えずに乗り込むわけだが、ここで一つ表示された。
{パイロットを指名してください}
「パイロット?おい、パイロットは俺だぞ何言って……ああ、そういう」
これはつまりあれだ、ロリパンよろしく自分がなりきるキャラクター選択だ。別ゲーでの体験がいきたか?俺はスムーズに理解することができたぜ。
あ、おい、まさかまた女の子しかいませんとか言わないよな?
「よかった、女以外普通にいたぜ」
個性豊かなパイロットがいる。で、ロリパンやってるならわかるだろうが、このパイロットにもそれぞれ性能差ってのがあるんだろう?
【ミルキィ・クラッシュ】が拳で殴る短期決戦、【ショコラ・ドール】が人形遠隔操作する後半型、というふうに。
説明が表示されるとやはりそう書いてあった。
うーん。まず気になったキャラから選択するかな。んじゃあ、まずこの黒髪ピンクメッシュのちっせえ女を────
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【キャット船長】
説明:かつて史上最年少の宇宙船船長として話題になった女性。かなりの手練れ。しかし見た目は成長しなかったようだ。
パイロットスキル
【堅実かつ最適解を】
装甲の防御性能を10%増加、5秒毎に小シールドを展開。機体破損率に応じて回避速度、修復効果が向上する。
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「────んはっ!?俺は、一体……一体なにをしてるんだ!?」
まるで無意識のうちに、俺はこの少女のことが気になり、タップして詳細を開いていた。おかしい。俺はそんなんじゃなかったはずだ。俺にそんな趣味は無いはずだ。なのに、なのに、なぜ、俺は少女を選ぼうとした!?
「どうやら脳みそが毒されちまったらしい……」
スキルとかそういうのは置いといてな、また少女を選ぶのはよろしくない。まして今回は大舞台で決戦するんだ、なんか、変に噂されても困るぜ。
「よし、こいつにしよう」
代わりに選んだのは、白髪色黒高身長、ハンサムな顔立ちが俺様にそっくりなイイ男。
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【傭兵のウルフ】
説明:空の裏社会を暗躍する傭兵。詳しい経歴は不明だが卓越した飛行運転技術を持つ。最近仕事が無くなってきてレースに参加したらしい。
パイロットスキル
【任務は完遂する、仕事なんでな】
砲撃火力を5%上昇、砲撃速度を上昇。突撃時装甲防御20%上昇、機体破損率に応じて命中判定拡大を付与。
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裏社会で暗躍する→俺じゃん
経歴不明→俺じゃん
最近仕事ない→俺じゃん
ここまで俺に似てる奴そういない。身長は185らしい。勝った、俺190。うむ、【ミルキィ・クラッシュ】と打って変わって身体の違和感はまるで無い。
「まあパイロットの見た目とか、どんな奴かは置いといてな」
このゲームの趣旨が見えてきたぞ。砲撃火力上昇だのミサイル、レーザー、ボム、ドローン、もしかしなくとも【Hurtling Burst -online-】はただ純粋に走るレースじゃねえ……。
「これ銃撃ドンパチ妨害ありの世紀末レースじゃねえか」
おいおいマジかよ。いや、まあパッケージに光線打ってる戦闘機のイラストから察せられるがレースっていうかゴールまで生き残ったものが勝つ飛行バトルじゃねえか。
それは、うん、実に。
「良い!!面白え!!スピードに乗りながら敵をぶっ倒すのはかなり良いぜ!!」
なんかワクワクしてきたぞ。早速空飛ぶか。よし!【FAレッドナイト】よろしくな!
俺こう見えて大型免許取ってんだぜ?ゲームでの戦闘機ぐらいお茶の子さいさい、大喝采だ!
{地表に衝突、墜落しました}
メーデー、メーデー、ワレ操作不能。どうやら俺はここだと若葉マークらしい。
ブクマありがとうございます。
評価の星が、ほしいよ!(激寒)
なんなら1つでも喜びますよ。




