プロローグ:01 最速への挑戦者たち
────「お前出るの?無理無理。お前だってカスじゃん」
────「何ができるの?え?教えてクソザコさん」
────「他を当たってくれ、キミみたいな雑魚に構ってる暇はない」
浴びせられるのは、罵声だった。なぜこんなにも言われなければならないのだろうか、そう彼女は考える。
少女の名は東雲讌────プロゲーマー養成学校の生徒である。
「雨……」
土砂降りの雨が降り注ぐ。彼女は力なく、その場を動くことなく、落ちる汚水を浴び続ける。
「私は、あまりにも弱い、弱すぎた……終わりだ」
渇望、欲望、期待渦巻くビックドリームの道。その裏に必ずある、大量の屍。ああ私も、その1人、いやその中でもとびきり腐った死体なんだと思い知って。
「なんでこんなことになったんだろう」
ぐしゃぐしゃになったそのチラシに、問いかける。
◆◆◆◆◆◆
「たっだいまぁ!!」
母は帰ってくる。コートを掛けて、後ろで束ねた髪の毛を下ろすと、首を回して、肩を回してから────。
「やめてくれ」
龍頭の狂犬、狗飼警部の息子、狗飼 波標はダイビングハグしにきた母を蹴り飛ばす。
「おいおい、ママンが帰ってきたんだ、少しは構ってちょうだいな」
「こっちこないで、ヤニ臭い」
「ひっどぉ、これでもこの街の平和を守る正義の味方なんだぞ?も少し労ってくれても」
「うるさい」
ゲンナリする母を他所に波標は、手元に展開する電子端末と睨めっこする。四六時中それか、あるいはゲームばかりしている息子。ヤンキー、ヤクザに暴走族を相手してる"狂犬"といえど母。それを良しとは思うまい。
「波標、進路の話をしましょう」
まるで勉強しない、どころか学校にも行かない我が息子にその話をする。いつも、波標はその質問に対しては無視をする。嫌だと言わんばかりに自室に篭ったりもする。
本当は無理して聞きたくないが、親として、心を鬼にして、愛息子に問い詰める。
しかしこの時の波標は様子が違った。母の方を向いたのち、電子端末のウィンドウを見せる。
「母さん、俺、ゲームで食ってくことにする」
◆◆◆◆◆◆
プロというのは、非情な世界だ。
好きだからゲームに時間を費やすのではない。勝つ為に費やすのだ。そして、負けた瞬間に、費やした時間が全て無駄になるのだと、彼はそう、唱える。
「いいか、勝利こそ全てだ。他に言うことはない」
彼がそう言うと仲間の二人は頷く。
「言われなくてもわかってるさ」
「勝利の為、成すべきことを遂行する」
彼等にとって、ここは目標の通過点に過ぎない。まずは日本をそしていずれは。だから余計なものは全て捨て、ただ勝利のために全てを捧げる。
神矢 白鷺率いる【チーム:アイテール】は世界に飛ぶことを夢見る。
◆◆◆◆◆◆
九条 蓮巳は眺めている。デスクに座って、【ヴィター・バット】のミニフィギュアを延々と撫で続けながら、目の前の資料……大会参加者の集計に目を通していた。
「なーんか面白そうな人はいるかな」
ロリパンでこそナンバーワンゲーマーである彼女だが今回は運営側。直接戦いの場に行くことはない。ただ1、観戦者として、優勝候補に目星をつけようとしていた。
「やっぱり候補は、【チーム:アイテール】だよね」
スライドして、一通り見て、蓮巳の感想としては粒揃いといったところ。
元々今回のレースゲームはソフトメーカーの宣伝も兼ねた2部リーグ的大会な為、突出した日本代表クラスはいない。それでも強豪ぞろいではあるのだが。
頭の中で勝負の光景を想像しつつ、蓮巳はニヤニヤと笑う。大会が楽しみなのだ。
「うん、そんな感じかな。さて────おっと!?」
そこで見つける。忘れもしない。あの敗北を。あの【ミルキィ・クラッシュ】を。一度は己に勝利してみせた。その使い手の名前を。
「へえ、出るんですね、鬼葉さん」
蓮巳の口角はより上がる。なぜならそのプレイヤーは────持っているから。
「才覚と集中力、成長性そして豪運、今度はどう暴れてくれるのかな」
◆◆◆◆◆◆
──── 【HurtlingBurst -online-】JAPAN CUP,X86 開幕
どっかのタイミングで書き溜めポイント作りたいのですが乗ってるので更新




