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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第一章 ロリポップ・パンクラッチ〜可愛く、そして喧騒〜
28/82

Sランク昇格戦:09「トップオブロリポップ」




 ヴィター・バットの覚醒技【ソウルオブカルマ】これは分身を用意してピッチャーとバッターがボールを打ち返し続ける技であり、時間にして7秒間続く。【ソニックショット】と同じ秒数だな。

 ウチはこの技のことは知ってる。何故なら度重なるランク戦で野良で当たったヴィター・バットに何度もやられた技だからな。

 正直言ってやっと久憐からそれを引き出せたぜ、ってな感じだ。まさか覚醒技の予備動作ついでにヒナタの奴をやるとは思わなかったが。まあ、とにかくここまでは想定内だ。


(舐めんじゃねえ……Aランク入ってからのウチの対ヴィター戦勝率は────100%だ!)


 黒い球、腰を捻り、美しいフォームからストレート。豪速球を見切って回避。

 ストレートボールはそのまま真っ直ぐ……飛ぶわけなく、謎パワーで軌道を大きく変えて、久憐が打ち返しやすいように収束する。そして打ち返される球は、あり得ないぐらい速い。

 

(1往復回避!!)


 ボールはピッチャーのグローブに収束する。間に挟まるのはまずい、ウチはここから抜け出さないと7秒の間に確実に死ぬ!


(大丈夫、いつも通り。成功率は高めた)


 ウチは知っているぞ。この嵐をやり過ごす術を!この短期間、ウチは常に、久憐、お前のヴィター・バットを突破することを考えてきた!

 ピッチャーが2球目をウチ目掛けて投げたそのタイミング。そこ、ガードだ!!


「らっしゃァァァ!!!ジャストタイミング!!」


 黒球とミルキィの細い腕の間に力が加わって、その衝撃を拒絶する。

 ガードで極力ダメージを抑え込み、そして球は、そのまま勢いを失い霧散する。

 これで球が無くなった、次投げるまでに時間が開く、間から抜けらことができるのだ。


「逃しません」

「抜け目ねえっ、な!」


 逃げた先を封じるように駆け寄ってくる。

 舐めんな、ミルキィとヴィター確かに間合いと攻撃速度のあれこれあるけどよ、走ったらこっちの方が速えんだよ!

 ミシンみたいによぉ、針をガツガツガツンと打つみたいな感じで。すぐにスピードが止まるなら一瞬が連続で休みなく続けば、2秒3秒と続くのさ!動けウチの脳みそ!!!


「はっ!?連ゼロ!?」

「ハッハァ!!」


 ウチはそのまま停車してる車両にスライディングで滑り込む。ゆったりドアが閉まってさようなら。


「あばよ!盗塁って奴だ」


 絶対違う。

 覚醒技はウチを仕留めることなく終了。まもなく、終点、ウチの勝利にそろそろ着きましょうか。なんつってな。

 ドアはぶち破られる。アイツは強引に列車に乗ってきた。まあ、やると思ったぜ。


「入って、くんな!」

「ぬっ!」


 蹴って外に押し返す。ガードされるが、流石にドア開け直後で忙しかったか、タイミングがズレている。振り落とすまでは行かなくともダメージは蓄積する。

 覚醒技外しちまったからな、ちと、稼がねえと、な!


「攻撃が速い!?」

「フハハハッ」


 間合いが近すぎるよなァ?半歩先じゃデッドゾーンだぜ。


「避けてみろ。避けれねえから」


 遠くから一方的にバットで殴り殺せるからこその強み。しかし今その距離がない。対等だ。至近距離戦闘で負けることはない。


「くっ!」


 重力とか、いろんな作用を無視するように空を飛び上がり大回転の暴れ攻撃をしてきた。縦回転のスイングが天井にぶら下がる広告チラシを引き剥がし、煙を巻くように散らかす。距離を取る気だ。いや広告邪魔!!


「ったくよォ、このまま押しきりゃ楽なのにな、テメェはそうだよな、そんなんでやられたりしないよな?」

「なにか、このまま勝たなくてよかったと、言わんばかりの表情ですね」


 ウチと久憐はまたしても対峙した。はは。これが最後だ。この電車が、着く前に、決着、しよう。はは、はははははっ!



◆◆◆◆◆◆◆



「フハハハッハハハハハァ!!!楽しい、楽しいぜ久憐!!!」

「それ、凶悪な笑いだってエクレアあたりに言われませんでした?」

「言われたなァ……仕方ねェよナァ、コんなに強ェ奴に会えタんだからヨォ」


 久憐は、この鬼葉というプレイヤーの異常性に恐怖する。

 ガードの精度も、タイミングも、この土壇場で冴え渡っている。そしてなにより連ゼロ。よもやオタシコどころか人間の思考の領域すら超えた絶技。


(けど、まだ、ガードとゼロランしか出来ないみたいね)


 その他のテクニックを駆使すれば。落ち着いて対処すれば負けることはない。お互い体力イーブンの差し合いで負けるはずはない。いくら鬼葉が天才といえど要所要所で練度の足りない部分はある。

 バットを構える。


「ジャンケン2回戦といきましょうか」

「ハッハァァァァ」


 ミルキィの表情は恍惚と。

 ガタン、ゴトンと電車は進む。割れた窓、取れたドア、風が入って広告チラシが舞い上がる。


(落ち着け、落ち着け、気持ちを軽く(・・)保て)



「ああ一つ」

「あ?」


 久憐は言った。


「百花繚乱スキンでも胸と服の間は見えるんですよ、だからかがんでも無駄」


 百花繚乱スキンはスカジャンの下にTシャツを着てるわけだが、これにはたるみがある。なぜこんな軽口を言うか。

 それが彼女にとってこのゲームをやる意味で、好きなことで、だからこそ落ち着ける。頭に詰まったゴミを取り除くようにスッキリと【ミルキィ・クラッシュ】に向き合う。



「────ひとつ」

「っ!?」


鬼葉は言った。


「後でスクショ確認しテみな、影で見えねーから」

「え」





◆◆◆◆◆◆





 嘘だぜ。馬鹿野郎。


「くっ────!?」

「ハハッ」


 目には目を歯には歯を変態には変態を。最も気持ちの良い勝ち方って知ってるか。いいか、最も気持ちの良い勝ち方ってのはな、相手の土俵に立った上で、その上で!勝利を掴み取る時だ!!

 差し合い第2回戦!!ウチの選択は────


「ストライーーーーク!!!」


 誰かが言った。いかなる状況でもヴィターはミルキィに負けない。

 お前が、そうなんだろうな。

 事実、いま同時攻撃をしたらあっちのが速くて敵わねえ。だから、直接はいかねえ。

 ウチの選択はその不安定な足場だ!


「こいつ!?」


 しゃがんで、スイングを避け、ヴィターの踏んづけている壊れた扉を外へ蹴り捨てる。上になっていたヴィターはよろける。もちろんそこを叩き込む!


「オルァァァ!!!!」

「ガードおおおお!!!」


 末恐ろしいやつだ、最後までガードをキメやがる。けど。ダメージが通らなくても、直接拳が当たらなくても、タイミングのズレたガードなら衝撃を受けきれず、外に押し出される。

 その先は久憐、お前がぶっ壊したドアの向こう。


「バッターアウト」








 ふわっと、力が抜ける。


[鬼葉が久憐をキルした]

[you win!!]














{ランクアップ!A-1→S-3}

{Sランクへ昇格!!}


ーーーーー

緊急メンテナンスに入ります

(復旧日時未定)

ーーーーー


 余韻に浸る間もなく、強制退出させられた。まあ、当然か、チートを発見したからだろうな。いや、今の試合を最後までやらせてくれた上、ランクアップさせてくれた運営に感謝すべきか。


「まあ、なにんにせよ」


 ホーム画面のパッケージを見ながらマジマジと実感する。


「目標達成だ……」


 ウチは目から洪水のように涙を流した。これな、ウチの意思と関係なくドバドバ出るんだ。ああ、終わったんだ。Sランクに上がって、久憐に勝って、ゲーム始めて1週間、全てを尽くしてやり遂げたのだ。


「快感、解放感、達成感、たまらねえんだ。これだ、これだよ、ウチが求めてたやつ!!最高だ、最高だぜ!あ?ウチ?俺?いやもうどーでもいい!!」


 感極まるってこういうこと言うんだろう。取り敢えず祝杯をあげるとしよう……金稼いでから。うん、こんな時に酒を飲めねえのは残念だが、いいとしよう、ウチは今すこぶる寛大だ。


「……ゲームって面白えな」


 何がやべえってこれ150円だぜ?これでこれだけやれるってゲーム世界のポテンシャルやべえぞ。金積んだゲームやったらどうなるんだ。


「やべえ、もっとやりてえ」


 見事に虎紀と同じことになった。最初疑ってたのがバカみてえ。もう一度パッケージを見た。


「ロリポップ・パンクラッチ」


 ジャンルは格ゲー、開発はニジフロッピー、知らん会社だな。

 マーケットのリリース日は3年前の11月。え?マジ?3年前のゲームなのこれ。やべえな。

 パッケージに描かれているのは【ヴィター・バット】今さっき倒した相手。よく見ると、うむ、これも悪くない。今となってはかわいいなって思うぜ。














────「貴方が最初に触ったゲームは?」そう聞かれればウチはこう答えた【ロリポップ・パンクラッチ】だと。





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