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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第一章 ロリポップ・パンクラッチ〜可愛く、そして喧騒〜
24/82

Sランク昇格戦:05「ショコラ・ドールの傀儡」




【ショコラ・ドール】遠隔操作型のゾンビ兵"殺人ぐりずりー君"を5体従えるかなり特殊なキャラクター。エリア内で潜伏し、自分は動かず、戦況を動かし、じわりじわりと首位をもぎ取るのがセオリーだ。

 それを使うある種の達人である、菓子より煎餅がなぜ目の前に現れるという大博打に出たか。

 それは目前の脅威から身を守る行動に他ならない。

 時は、エリアギミック発動直後に戻る。






 エリアは駅。一撃必殺のチーター共が消えた今、まさしく戦場が動き出したわけだが、この少女はその場でしゃがみ込んでいた。


「……っ!どうすればいいんだっ!」


{ヒナたん(絶望)}

{R.I.P}

{終わったわこれ}

{チーターすらぶっ倒せる相手に勝てるわけないやろ}

{どうでもいいからランカー鬼葉対決見せろカメラマン}


 目標であり憧れであり親しいプレイヤーと、そんな彼女よりも強い3人のランカー。同時にマッチングしたこの奇跡を不幸と呼ぶべきか。シト・ヒナタは頭を抱えていた。


「正直チーターたちにやられて終わりかなって思ってたよ!生き残ったよ!さっきの鬼葉が突撃してきて終わったと思ったよ!生き残ったよ!どうしよう……どうやったら勝てる?」


 もはやコメントを聞く余裕もない。

 ヒナタは己の弱さを理解しているプレイヤーだった。鬼葉に勢いでライバル宣言したはいいものの、戦闘の実力でいえば、笑えたものである。

 同ランク帯で言えば最弱クラスの下手さ加減だが、それでも勝利したのは、あの手この手で策を講じて、勝ってきたからだ。


「あの人たちに、小手先の戦術や戦略は、きっと通用しない……」


 今回当たった面々は純粋にその場で罠や仕掛けに対応し切り抜けられる、半端じゃない地力の持ち主ばかり。自分の弱さを理解しているが故にこの試合は、「一旦流そう」と考えてしまうのだ。もういっそ、自滅して、観戦モードでカメラマンになってしまうかとも考える。

 電車の座席にがっくりと座り込む。


「……諦めるのか、ボクは」


 情けない。非常に情けないと、俯く。


[キシャッ]

「……っ。笑うな、くそ」


 先程から監視している1匹のクマ人形が機械音を出す。ヒナタは笑われた気がして、不快感を覚える。

 そうして、クマ人形は動き出し電車の出入り口で立ち止まる。

 やがて、ピンポーンという音。出入り口が開く。そして出て行く。


「あ、れっ?監視を外した?」


{あ}

{クマさんどっかいったぞ}

{馬鹿にしただけw}


「え、そういうことなの?なにそれ腹立つ!」


 しかしこれでヒナタは完全なるノーマークになる。そして。

 電車の扉が閉じられ、再発進した。

 ここから15秒間路線を走り続け、端まで到達すると、反対側の端からループする仕組みになっている。


「生き残ると、制限時間が来る。ランクマッチは強制終了して、生存者のキル数でその後の順位を決める……だからもしボクがここにずっと隠れてたら、0キルで2位になってランクは下がらない」


 それはいいことか悪いことか。負けても無いが勝っても無い。


「それて、いいかもな」


 首位を目指すつもりだった。しかし対面して痛感する、覇気の違い。実力差。そうしてヒナタの思考は負け腰になる。

 と、その時。ある懸念がよぎる。


「菓子より煎餅」


 おそらく、これと似た思考を持って行動していると気がついた。もし、今の作戦で仮に2位狙いをしたとして、それでも敗北する可能性が高いと気がつく。

 1位だろうと2位だろうと、どちらにしても排除すべき敵がいる。


「【ショコラ】を止めなきゃ!」


 ヒナタも、負ける気はないのだ。


{ヒナたん動く!}

{ヒナたん!!}

{お?}

{お?}

{ランカーvsヒナたん!?}


 立ち上がる配信主に、静かになってたコメント欄が声を出す。


「ボクは【ホウィップ・スカイハイ】だ【ショコラ・ドール】と違って遠距離での攻撃手段なんてない」


 それはつまり動かずしてキルを稼げる手段の有無で不利を取る。そうなると2位すら取れないわけで。


「ショコラを討つにはどうすればいい。考えろボク」


 思考、そしてはじき出す。


「ぐりずりーを撤退させたのは、おそらく戦力を集中させ、鬼葉、久憐、エクレアのいずれかのキルを混戦に乗じて掠め取るためだ……だってそうだよね……ビビって座り込む誰とも知らないAランクのボクは見る必要なしって判断して、戦力を回した方が効率的だ!」


{突然の早口}

{なんて?}

{迫真の早口で笑う}


 コメントをよそにふふっと笑う。なぜならば。


「ボクの弱さを露呈したのが、かえって勝利の可能性を引き上げた!相手は油断してる!菓子より煎餅がボクからマークを外した今が最大のチャンスなんだ!」


{お!}

{お!}

{お}

{キター}

{油断大敵だ!}

{朗報、ヒナたんにはマジで考えがある}


 ヒナタにはわかる。自分と似た思考の持ち主である彼女は、どこに身を潜めるか。そうだ、主戦場から一番離れていて安全な場所。


「みんな、ご視聴はそのままで!」












 そうしてヒナタと菓子より煎餅がすぐに対峙する。


「くっ!どうしてここがわかったんですかねぇ」

「似たもの同士だと思ったからかな!」


 有無を言わさず蹴りを入れる。現在菓子より煎餅を守るクマ人形はたったの1体。いくら戦闘に自信が無くても流石にここまで有利なら強気に出れるというもの。

 遠隔操作できる体力無限の歩兵を保有する【ショコラ・ドール】最大の弱点は本体のスペックの低さ。


「はっやいなぁホウィップさんはぁ!」

「キミは、ここで、倒すッ!!!」


 すると菓子より煎餅は精一杯の笑顔を見せた。


「はっへ、エスケープ!」


{ショコラ・ドール【覚醒技:シンタイヒョウイ】発動}


「なっ!逃げるな!」

「さよならでぇす」


 そうしてクマ人形との場所を入れ替える。




◆◆◆◆◆◆



(苦渋の選択ですねぇ。あのAランクの奴から見張りを離すのは間違いでした)


 シト・ヒナタをノーマークにしてしまったことに死ぬほど後悔しているのは菓子より煎餅。結果追い詰められ、覚醒技を吐き、前線に出張ってしまったのだから。


(ここは、1つ、1位さんを盾にですね……)


 後ろに下がる。作戦はこうだ。久憐を味方につけ、殺人ぐりずりー君で援護する。これで2位のエクレアと話題の鬼葉を倒す。そのあと久憐にキル献上するつもりだが、そうなるとシト・ヒナタが生存してしまう。


(逃走経路は確保しましょう……)


 ジリジリと黄色い点字ブロックの上に身を寄せて、電車が来るのを待つ。


「ふふぅ、これで────」


 1つ、菓子より煎餅は重大なミスを犯している。


「な……ぜ……」

「残念。私は1人で戦いたい。ですので」


 久憐は一度として、菓子より煎餅と味方同士になったつもりはない。

 バットを振り下ろされ、絶命する。


{久憐が菓子より煎餅をキルした}


 これには鬼葉もエクレアも困惑し、そんな傍、久憐は煽るようにバットをクルクル回すのであった。


「これでキャンディ5つ」

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