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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第一章 ロリポップ・パンクラッチ〜可愛く、そして喧騒〜
19/82

愚者の屈辱、侵せし楽園




 陽炎についた。そこには既にイエローのバイクの先客がいて、そいつは店に設置してあったカメラを取り外して確認している最中だった。やがてこちらに気がついた。


「あっ、鬼葉ぁ!!」

「連れはいねぇのか?」

「オレ個人の問題にあいつらは巻き込んじゃならねーかんな」


 虎紀。コイツもまた、一介の暴走族でしかない。俺が知る限りゲームで金稼げるようになるまでは陽炎のジジイに世話になっていた。


「何が写ってた」

「ワゴンカー、包帯の男、チャカ持ってやがんな」

「チャカ……」


 これを警察に提出?ノンノン。その警察が動けなくてわざわざ俺に頼む事態になってんだからな。

 税金食い散らかすだけのクソ犬どもはアテになんねえ。他の街の刑事さんたちを見習ってくれ、ったくよ。


「ちと発信機取ってくる」

「わぁーった」


 こんなこともあろうかと、陽炎の倉庫に隠してある。これでジジイが何処にいるかわかるってわけだ。


「じーさんに手ぇ出すってことはオレたち龍頭最強の2人を敵に回すってことだぜ、カハハハ」

「驕るな、そんで最強はただ1人俺だけだ」

「連れねえな」

「言ってる場合じゃねえんだよ」


 本来相容れねえはずの俺とコイツを繋いで平和にしちまったのもジジイだな。

 俺は相棒(バイク)を叩き起こした。すまんな。ちとその老体をフル稼働させてもらうぜ。


「場所は南地区の廃墟」

「お、おい、かっはっは!それってあの雑魚共んとこのアジトじゃね?」

「その雑魚より貧弱なジジイが捕まってんだ急ぐぞ」

「カハハ」


 二輪は轟音と煙を吐いて突き進む。生きててくれよ。

 


 






 数日前に、俺はある不良グループを潰した。名前は確かアローズ。この龍頭の街で4つ目の巨大勢力になり得るかもしれないと噂されたそいつら。

 この廃墟ビルは……アローズのアジトだ。ここに、ジジイの座標が示されていて、入ってみると。


「ん"ーーー」


 ガムテープで口を塞がれながら、電子端末に手をつけてなんか操作してる老人と、10数名……17人か。ゴロツキがいた。


「お、じーさん!大丈夫かぁ!」


 虎紀はまるで目の前にいるアローズの面々が見えていないかのように、真っ直ぐ駆け寄っていく。


「おい、アイツを通すな!」

「「うぃ」」


 包帯グルグル巻きのリーダーと思わしき人物が声を張り上げると、鉄パイプを持った奴ら数名が壁となる。壁となれるか?無理だな多分。雑魚共が束でかかって倒せる相手じゃねえ。


「鬼葉!テメェも殺す!」

「よそ見厳禁だぜバカめ!」


……よそ見してても勝てるわ馬鹿野郎が。さて、たいしたことねーし、虎紀の戦いっぷりを高みの見物といこうか。

 まずアイツはモノの使い方が優れてる。俺よりも小器用に扱う。古いカンフー映画を見てたらああなったらしい。


「お前の武器もらうぜ、かっはは!」


 鉄パイプを奪取すると、それをそのまま利用して、ばったばったとなぎ倒していく。身長170と、この街のゴロツキ共に比べりゃ小ぶりだが、柔よく剛を制すってカンジで反撃は的確。


「おいおいおぅい!鬼葉ぁ!おめーも手伝えよぉ!」


 おっと、サボってんのがバレたわ。残りの奴で近いやつからテキトーに殴り飛ばして落とす。お、いいパンチだ、腹に当たったぜ。


「いっいぎっ……なんだこいつの身体!?硬すぎるだろ!?」

「筋はいいがお前は回数が足りてないな」


 殴り返してKO。残るはリーダー+6人。爺さんを囲ってる。アローズのメンバーが声を上げる。


「ジジイ!まだか!早くしろよ!」

「んんん」


 俺と虎紀は近づいた。そしたらアローズリーダーが拳銃を爺さんのこめかみに突き付ける。


「ん"ーーー!!!?」

「近寄るな!それ以上近寄ればこいつを殺すぞ!」


 外道め。


「チぃ!あれじゃ近寄れねーぜ」


 ぎりりと歯軋りをする、隣の金髪ドレッドヘア。俺はまあまあ落ち着けと宥めてやる。


「虎紀、その鉄パイプ貸せ」

「んぇ?はいよ」

「引き金を引く勇気もねえクソにビビるわけねえんだよ……」


 俺はその鉄パイプの真ん中を持って。それから。イメージするのはオリンピックの槍投げ選手になりきる感じで。銃を持つ腕の根本らへんをこう!


「ふがぁ!!」

「今の医者はすげえからなァ、早く病院で診てもらえよ?多分治るぜ」


 鉄パイプを肩にぶっ刺してやった。手から力が抜ける。ガチンと、それからカランと、床に銃と鉄パイプの落ちる音が反響し、肩から赤色がじんわりと広がる。


「わーお、やっぱお前バケモンだわ」

「ふん、朝飯前だな」


 悶えるリーダーに下っ端共は寄っていく。大丈夫かと声をかけた後俺の方を睨む。今にも来そうな感じだが、そのうちの1人が静止する。


「こっちの目的はもう達成されたっす、撤収しやしょう」


 爺さんを解放し7人は……ヘッドホンを耳にかけた。


「おいありゃゲーム機じゃねーか!」

「……」


 そして7名は────姿を消す。


「んあ!?アイツらどこいった!?」

「電脳空間に逃げやがったんだ!!」


 虎紀がそう言った。えっ、なに。まさかあの機械ってマジで現実とは違う世界に行くやつだったの!?


「おいおい、てっきり夢を見ることに近いもんかと思ってたぜ」


 虎紀は知らなかったのか?と言ってきた。そりゃな。けど、びっくりしてる場合じゃねえ。そこで死にしそうになってるクソジジイを助けてやらねえと。


「おいジジイ大丈夫か?」


 俺は近寄って口を抑えていたガムテープを引き剥がしてやった。


「ぷっはぁぁん、たしかにわしはドMじゃけども、相手はお嬢ちゃん限定じゃぞ」

「開口一番がそれかよエロジジイが」

「この調子なら身体に問題はなさそーだな!」


 呆れる俺、安堵する虎紀、笑うジジイ。無事で何よりだ。

 これにて一件落着。爺さんを保護した時点で俺らの仕事は終わりだ。

 と、なるとここからは完全な個人の、売られた喧嘩を買うヤンキーの性の問題だ。俺は例の拳銃を拾い上げてから爺さんに問いただした。


「それで?ジジイ、お前ついに恨まれることでもしたか?」

「わしが?んなわけ……あるわな。心当たりはたくさんあるわい」


 それから事情を聞いた。拉致された理由を。


「あるゲームのデータをちょちょいと弄ることになってしもてな。セキュリティをクラッキングするよう命じられたわい」

「お前、そんなことできんのか?」

「経験豊富じゃぞ?勿論夜の方も」

「もうたたねー奴がうるせえ」


 爺さんはやめいやめいと俺の横腹を小突く。そしたら身を翻してけたけた笑う。


「あいつら撃てもしない銃口を突きつけてのう」


 まあ、たしかにあれは滑稽だったな。が、爺さんや、お前はそれを言える立場でもない。


「……嘘下手。ビビったんだな、そのチャカに」

「うむ、正直しょんべん漏れそうじゃった」


 そうしてとあるゲームのアレやこれやを不正操作して、その違法アカウントは今逃げおおせたアローズ共の手元にあると。


「おい、じーさん、昔と違ってネット犯罪は重罪だぜ?ムショの生活も近いんじゃねーの?」


 虎紀がそう指摘すると、ピエロみたいににへらと笑う。


「安心せい、わしの手元に証拠はない。バレてシバかれるのは彼奴等じゃ」

「……」


 脅されたとは言えやったのはお前だが。よかったなこの場にいる全員が犯罪者に片足突っ込んだクズ共で。思っても言って咎めることはしないのが俺たちだ。


「ったく、なんか無駄に疲れたし締まんねえぜ」

「まーな、三下共ぶっ飛ばしてねーし?」


 結局今回は何が起きたのかイマイチよくわからん。とりあえずアローズがどっかのゲームでワルな事を企んでるみてえだ。まさか、ロリパンか?真相は謎だな。


「アイツらを潰さねえと示しがつかねー!オレは行くぜ!じーさんに手ぇ出したお礼はきっちり済ませねーとな」


 と、虎紀。これには同感。


「腐ってもジジイに世話になってる身なんでな、キッチリ落とし前つけさせてもらおうか」


 しかし爺さんは首を横に振った。


「彼奴等は電脳に逃げてもた。刑事(デカ)に頼らにゃ追うのは難しいじゃろう」

「……畜生!ここで行き止まりってか!」

「諦めるか、狗飼のババアが動いて終わるかだな」


 なんかやりきれねえな畜生。


「帰る」


 俺はバイクに跨った。さっさと帰ってーー、帰って?ああ、そうそうロリパン、メンテナンス復旧してっかな?


「お、ロリパンできるようになってんじゃねえか」


 あ、しまった。


「うりうりぃ、すっかりハマっちまったなぁ?アンタも」


 クソ、めんどくさいこと聞かれちまったぜ。

 虎紀に誘われて数日。明らかにどハマりしてるのはもう、揺るがない事実だが、こう言われたら二言目には────。


「やっぱロリコ」

「言っとくが!俺は決っしてそういう趣味じゃないからな!」


 俺の好みの女性のタイプはもっと大人びていて落ち着いていてお淑やかで寛大さを持ってるような奴だ。

【ミルキィ・クラッシュ】はキャラとして馴染むから使ってるだけで好きでも何でもねえ。何でもねえ!

 ああそれと思い出したぞ。


「お前狗飼に変なこと吹き込んだだろ」


 そのニヤケ面はなんだ。おい、まさか。


「おう、おもしれーから街中に広めた」 

 

 はぁぁぁぁぁ!?


「ぐぬぬっ、ぐぬっ………ァア!帰る!今日のところは帰る!寝る!」


 だめだ。これが羞恥心というやつだ。そりゃ恥ずいだろうが!だって今まで最強にして最恐にして最凶って感じで通してたのによう!街で会うゴロツキどもに何言われるかわかったもんじゃねえ!


「じゃあな!死ね虎紀!」


 ファックファックと中指立てて、そのまま逃げるように発進しようとした。すると虎紀はそれを止めるように甲高く呼ぶ。


「なあ待てよ鬼葉!飯行こう!」

「あぁ?」


 振り向くと、はにかんで、サムズアップしていた。


「オレの奢りで」

「よし。いくぞ」



◆◆◆◆◆◆



「くくくくっ」


 電脳空間に逃げ込んだアローズ。たしかに鬼葉と虎紀にいいようにされたが、笑っていた。


「作戦自体はもう、成功してるんだよ……今更、あのジジイを取り返したところでな」

「そうだそうだ」

「あの二人、喧嘩だけのバカだぜ」


 作戦は成功している。そう、運営が緊急メンテナンスを入れた段階で。

 運営がメンテナンスで手を焼いてるソレは"囮"だ。囮とは一部エリアのテクスチャをわかりやすく崩壊させ、不具合をテキトーに演出したもの。

 対応が早いのですぐに修繕完了か、残念ながらアローズたちの本命はそっちじゃない。

 この【ロリポップ・パンクラッチ】の世界を表すダイアログの海を見渡して7人は笑う。


「あと鬼葉がログインして、ランクマッチに入るのを待つだけでっせ」

「でかした」


 0と1がぱたぱたと目まぐるしく切り替わる。あるいわクラッカーやエンジニアなら理解できるそれも、彼らは知ったこっちゃない。というより知る必要がない。

 何故なら、望んだ形にルールへ干渉するボタンを既に手に入れているのだから。


「どんな手段を使ってでも、あの屈辱を晴らす……!」


 アジトが崩壊したその日から、憎悪は、ここまで至る。


◆◆◆◆◆◆




【変態の楽園】ロリパン総合チャット【150円】 



バババンダ@ヴィター

お、復活した


ぽんぺい大噴火@ラズヴェリー

ロリパン!ロリパン!ロリパン!


エルサマクサ@ブラウニー

ちょっと出来ないだけで発作起こしてるやついて草


90@ヴィター

>>エルサマクサ

みんなロリパンすきやねん


ぽんぺい大噴火@ラズヴェリー

ランクマッチで不具合が発生したため緊急メンテナンスとさせて戴きました

だってさ

詫びガチャはよ


エルサマクサ@ブラウニー

>>ぽんぺい大噴火

詫びガチャ来るならピックアップ変えてくれ、スカジャンミルキィとか要らないからブラウニーたんの水着をだな


バババンダ@ヴィター

>>エルサマクサ

お前例の人にぶっとばされるかもよ


911アイサーサー

鬼葉




 





思い知れ

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