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ゲーミングヤンキー〜喧嘩最強の男、少女となりて激走する〜  作者: アスク
第一章 ロリポップ・パンクラッチ〜可愛く、そして喧騒〜
18/82

地獄の番犬は喉を鳴らす



{久憐の試合観戦を終了します}



 トップオブロリポップ。この世界の上位者10名はその原則として試合をほかの人に観られる。強すぎるからつけられるハンデか、それとも注目が集まって名誉なことなのか。

 なんにせよ俺は何度も観させてもらった。倒すべき相手の情報はきっちり頭に入れとかなきゃな。

 で、感想だが。


「速え、とにかくスイングが速え」


 やはりあの一撃必殺の高速スイングだ。【ヴィター・バット】そのものの基本戦術でもあるが、あれを一発当てて相手を確実に仕留めることにタマ賭けてるってわけだ。

 そして久憐のスイングが他の凡人共と違うのは、振る速度、命中精度、どんな体制からでも一発打ち込む練度。


「加えて外した時のリカバリー、そしてスイング一辺倒にならないように、連続コンボもやってる。あとは……ガードもバッチリだな」


 得られる情報はそんなもん。正直薄すぎる。

 原因はあの野郎が短期決戦でぽんぽん試合終わらすからだ。


「ミルキィと同じく序盤強いタイプなのかもしれねえな」


 キャンディ0個の状態でのタイマンを仕掛け、倒して、キャンディ手に入れて、連鎖的に強くなる速攻型。


「あれ……これミルキィ勝ってる要素なくね?」


 同じタイプで、攻撃力と攻撃速度と攻撃範囲が上。相手を一撃で沈めるなんて芸当【ミルキィ・クラッシュ】ねえよ?


「マジで言ってんのか……それじゃあ上位互換ってことか!?」


 いつだかのイベント設営の女が言ってた理由が今わかった気がする。そりゃあ「ミルキィには負けない」と断言するはずだ。

 俺は試合観戦を再開する。


「なにか、ねえか?なにか」


 振って、殺す。振って、殺す。あ、外した……ほう。


「二撃目が遅いな」


 最初の一発が強くて早い分、2回目を振ると明らかにスイングが遅い。


「お、スイングを避けて逃げたぞ」


 【ホウィップ】を使ってる野良プレイヤーがそのスピードを活かして攻撃から流れる。


「足も心なしか遅いな」


 そういや設営の女はこうも言ってたな。「移動力がない」と。

 確かに見てみりゃ近づいたものを撃滅して試合が終わるので速く感じるが、実際は自分から追いかけたり、エリア内を駆け抜けてる様子はない。

 相手の動きを予測し、待ち構えたり先回りしたり忍び寄ったり。


「走行速度ならミルキィの方が上か」


 これは使えるかもしれない。


「速度を上げる。これだ。俺がやるべきことは、一発目のスイングを避け、追撃を許さず、柔軟に反撃するスピード!」


 そうと決まれば練習だ。

 実は前々から目星をつけておいたオタシコがあってな。ガードに変わる新しいあの技を習得しよう。


「よぅし、ヒナタをフレンドルーム招待して────ってなんだ?」


 なんかウィンドウが勝手に開かれた。


{緊急メンテナンスにつき、10秒後強制ログアウトします}

「あぁん?メンテナンス?」











 10秒はすぐにたち、電脳空間から追い出され現実に戻った。あーー、これはしばらくできない感じか。


「チッ、タイミング悪いな」


 まあいい。運営も大変なんだろうからな。メンテナンスを行わずにトラブルが起きるぐらいなら辞めちまえって話だ。

 相棒(バイク)が繊細なんでよくわかる。


「さあどうすっかな。こっから暇だぜ」

「暇なら私のお話を聞いてちょうだいな」

「つまらねえ話なら聞かな────っておい!?」


 目の前に中年の女がいて。そいつは手を振る。


「こんにちはピンクの坊や」










 こりゃーどういう冗談だ。

 なんで俺の家に俺以外がいるのかな?あぁ?俺が電脳空間でエンジョイしてる間に。不法侵入だぞテメコラ。


「まあまあそう御怒りにならなくてよ、ピンクの坊や」

「うっせえよ、ババア。サツのくせに人の家勝手に入ってんじゃねえ」

「今日は休日、私は貴方のベストフレンドとしてお邪魔致しただけよ」


 なーにがベストフレンドだ。このイカれ女が。

 コイツは狗飼(イヌカイ)。龍頭の秩序を守り切れてない(・・・・・・・)連中のボス。まあ、警察ってわけだ。


「で、何のようだ、ついに俺を縄にかける日が来たか?」

「話聞いてないのかしら、休日よ休日」

「じゃあなんだ」

「まあ落ち着け。茶を沸かせ、客をもてなせ」

「犬に飲ます茶はねえよ」


 早く本題に入れと、指を下にさす。やれやれと言わんばかり……だから人の家でタバコ吸うなっての!虎紀といいコイツといい!


「それじゃ単刀直入に言うわ……便利屋【陽炎】の店主が拉致られた」

「……」


 誘拐事件が起きました、ってなったら普通一介のヤンキーにそれをわざわざ話に来る理由は無いだろう。犬どもが対処する話だ。

 が、誘拐されたのは陽炎のジジイってなると話は別だ。これだけで警察は動けなくなる。なぜって囚われの身になってる奴が限りなくブラック寄りのグレーだからだ。


「私は言ったぞ、貴様らの尻は自分で拭え」


 要は「じーさんを助けられるのはお前だけだ、事情は伝えた、あとは頑張れ」って話。

 あの刑事なりの親切心?違うね、じーさんが死んだら色々均衡取ってる勢力が動いちゃうから止めてもらわないと困るから俺に頼むんだ。

 あ?俺か?まあ、実際止めるけどよぉ。"ある契約"によって爺さんを守る義務が俺にはある。


 俺はすぐに虎紀に電話をかけた。


「おい、虎紀、ジジイが拉致られた。便利屋前集合」


 陽炎の店主は────その広い人脈から俺や虎紀みたいなどうしようもないクズ共に仕事を紹介してくれる。と、いうより便利屋の下請けとしてコキ使わされてるってほうが表現としては正しいが、とにかく世話になったんだ。


「契約発動」


 だから店主と俺たちの間には契約が存在する。それは「桃葉(トウバ) (カイ)および梅街(ウメマチ) 虎紀(トラキ)は陽炎の店主の安全を保証する」ってことだ。


「アイツを守るのが俺たちの役目。ジジイにはまだ死んでもらっちゃ困るんだよ……」


 スカジャンを羽織って家から出る。まず陽炎まで直行する。仕込んだモノがいろいろあっからな。

 しかしよくもやってくれたな犯人さんよ。俺たち(・・)の契約相手に手ェ出すとはよっぽどぶちのめされたいらしい。


「さて、私はもう帰るわ」

「あ?ああ、さっさと帰れ狗飼」


 シッシッと追い払う。すると狗飼、玄関の前で立ち止まった。

 

「なにしてんだ」


 こちらを振り返る。そして、何かを投げてきた。封筒だった。


「それ、うちの息子からのプレゼント」

「急だな」


 狗飼、実は家庭を持つ母だ。ガキはもうそろ高校生だったか。何回か顔合わせてるくらいの知り合いっちゃ知り合いだがプレゼント貰うような間柄じゃ─────は?


「ピンクの坊やは少女好きって聞いたわ。息子と今度話してちょうだいな。馬が合うだろう」


 まさか、虎紀あの野郎、変なこと吹き込んでないだろうな……。


「それじゃあ」


 扉を閉めた。2度と来ないで欲しいぜ。

 封筒の中身は、【ミルキィ・クラッシュ】のミニフィギュアだった。なんというドンピシャ。

 さ、さて、拉致られたじーさん取り返しにいくぞ。



もう1話リアルパート続きます

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