超撃爆破のナンバーナイン:03
オタシコ、オタク思考的空間挙動の一つガードテクニック。俺はこれを習得すべく実践練習する。何度負けたって構いやしねえ。やるたびに強くなって勝てばいい。
ランクを上げながら実力を伸ばす。一石二鳥だろう?
[マッチングしたわ]
顔を合わせるキャラクターたち。tier1だ。俺以外の5人中4人が【ラズヴェリー】だ。そもそもコイツに勝つために必要な専門技術がガードだからな。いい練習じゃねえか。
さて【ラズヴェリー・チェーン】ってキャラをちょいとおさらいすると、名前にある通り鎖を武器とする。テキトーに振ってたら自動巻き取りしてくれる便利な奴。で、捕まると動けなくて一方的に殴られる、まずい。
だから開幕鎖に捕まったら終わりだ。
{3}
スタート合図まで、お互いが睨み合って────っておいおい、なんか1人【ラズヴェリー】じゃない奴混じってんぞ!?
「あぁ、ランクマ過疎すぎるねぇ。格下マッチングって心臓に悪いからやめて頂きたいんだ」
{2}
俺と、ソイツは目を合わせた。合わせちまったっていうか。
{1}
そのキャラクターはラズヴェリーと同じく、tier1。強いキャラ。しかし、今回の場合は、キャラが強いだけじゃない。
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炉万奏音
ランク:S-1
(トップオブロリポップ序列9位)
【ブラウニー・ダイナマイツ】
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{fight‼︎}
◆◆◆◆◆◆
「トップオブロリポップ?なんだそれ。なんか猫のやつも言ってたな」
「チャンチーね。設定だとこの世界の頂点、一番やばくて強くて明るくて、まあ、トップアイドルっぽい存在だよ」
シト・ヒナタが言う。
「メタ的に言うと、シーズン総合勝利数ランキングのトップ10」
そりゃつまりこの世界で一番戦闘経験があって、一番実力がある強者集団。
「彼らの試合風景を全プレイヤー観戦できる仕様があるんだけど」
「へえ」
「参考にできると思ってさ」
「おうおう、言われてみりゃそうだな!強え奴の動きは勉強になる」
でかしたヒナタ。そうして観た。
◆◆◆◆◆◆
だから知ってる。観たことあるから知っている!
ただのtier1キャラ【ブラウニー・ダイナマイツ】ではない。中身はS-1ランクだ。
ただのS-1ランクじゃない。トップオブロリポップ序列9位だ。
トップオブロリポップ序列9位、それ即ち、このゲームにおいて世界で9番目に強いプレイヤー。
「合法ロリはお好き?」
開幕、鎖が飛ぶより先に大爆発は引き起こる。
おいおい、爆発物取締うんぬんでそりゃ非合法じゃねえか。
「bomber」
投げ込まれたダイナマイトは着火済み。開幕ダッシュした俺は避けることに成功……そして背後でチェーンを伸ばす輩は爆発に巻き込まれる。
「っぶねぇ……開幕は凌いだぜ」
全員至近距離からゲームスタートする関係上、最初の1秒で即死することもザラだ。
「Sランクの野郎、チッ、やるだけやって即逃げしやがったか」
【ブラウニー・ダイナマイツ】使いの炉万奏音はすたこらさっさと姿を消す。今回のエリアはシャッター街。長い一直線マップなのだが、立ち並ぶ店のせいで隠れ場所は豊富。
こうなると姿を表してるラズヴェリーを潰すか。
「面白え、やってやんよ」
ここ3日程、このゲームとだけ向き合い続けてんだ。まだ、テクニックとか課題点多いけどな、この身体の、キャラの特徴が、弱点が、そして最大の強みが、いやでもわかるようになってんだよ!
【ミルキィ・クラッシュ】ってキャラの最大の強み、それは!
「序盤は俺の独壇場!!」
キャンディがゼロ個という対等な条件でやり合った場合、俺の【ミルキィ・クラッシュ】は、例のアイツを除いて全てのキャラ相手に勝てる。たとえtier1だろうと関係なく。スピードとパワーが段違い。
「ようラズヴェリー!お前俺のキャンディになってもらうぜ!!」
「なっ!?」
初陣でのやり方はあながち間違いじゃなかった。
基本戦法は、ガンガン相手を倒して飴を手に入れパワー差を持って速攻ケリをつける!
甘い甘い、こちとらチェーンに当たって死ぬようなド三流じゃないんでな!
「ハッッハァ!!」
強いが故に、動きが大味。肉薄し、張り付いて殴るのは容易いこと。
「ちっ、お前らこのミルキィ縛れ!」
「……んあ?」
そういえばラズヴェリーは4人いたのにコイツだけしか姿が見えなかった。キャンディ優先で走ってどっか行ったのかと思ったが、なるほど。グルってわけか小賢しい。
「"馴れ合い厨"っていうんだかァ?」
ランクマッチにたまにいるんだよな。示しを合わせて1人を狙い撃ちしようとする輩が。ネットじゃそう言うらしい。
残念、それでくたばる俺じゃあない。
放たれたであろう鎖をしゃがんで避けた。そして頭上を通り過ぎたアンカー三本、全てお仲間さんに突き刺さる。
「なんっ────」
「まず1つだァな」
誤って仲間を殺しちまった気分はどうだ。最悪だろう?複数人でいることの悪いところだ。
「そして2つ!!」
自分より力が強い相手が複数人の場合の大前提!一対一を繰り返す!
「やばいやばい!死ぬ!」
「なにコイツっ!うますぎだろ!?」
「ど、どうする!」
あたふたして、素人が。はやく助けないと、こんなふうに、お友達を失うことになるんだぜ?
「あと2人ィ」
2人のラズヴェリーはブルっと震えていた。なんだ?俺が怖いか?おいおいそんなことはないだろ?可愛いハッスルガールのミルキィちゃんだぜ?
「に、逃げるぞ!なんだよあいつ!あんな般若みたいな顔のミルキィちゃん見たことねえ!」
「キャンディ拾って立て直そう」
「っあ!おい待てやゴルァ!」
どこぞの蜘蛛男みたいに、アンカーチェーンを向こうにある店の壁に突き刺して、引っ張られるように飛んでいく。
「逃がすかよォ!!」
自分と近い方の裾を掴んで引っ張る。
「ひゃあ!はなせっ!!」
「『ハートを掴んで離さないぞっ』ってなァ!!!」
公式設定から出典。ミルキィというキャラ説明に妙に焼きつく文章だったんでなぁ……うん、俺の肌には正直合わん!うげー!
「ぶっ飛べラズヴェリー、PONッ!!」
「おぶっ!?」
顔面にフックを叩きつける。手応えあり!はい3人!
「く、くそ!化け物め!!」
1人逃したか。ああいう移動もできるから強えって言われるわけだな。残念ながらミルキィの脚じゃあれを追いかけるのは困難だ。
「……さて、ここまではいい。俺が元から持ってるモノを使っただけだ」
そう、ゲーム的技術は一切ない。今のは単にリアルの力の応用でしかない。
「うわぁあああ!!」
飛んでいったラズヴェリーが墜落。壁ごと崩壊し、散った瓦礫は断面が焦げて、黒い煙を帯びていた。
「問題はこっからだ」
「────私はねぇ、合法ロリってーやつが好きなんだ」
ラズヴェリー1人の側によるのはさっき隠れた【ブラウニー・ダイナマイツ】の使い手。ランク9位、炉万奏音には、いまのままで通用するとは思えねえんだ。




