超撃爆破のナンバーナイン:01
「リーダー!鬼葉っす!鬼葉の野郎をみつけたっす!」
現実世界は龍頭の街。ヘッドホンのようなものを首に下げた青年が、地下駐車場に置いてあるワゴンカーの中に入っては声を張り上げる。
「なに?どこにいやがった」
顔面に包帯グルグル巻きのリーダーと呼ばれる人物が青年に問えばこう返す。
「ゲームの世界っす!!」
「……」
「……」
「え?」
彼らはアローズ。ちょっと前に名をあげたと思ったら鬼葉にボコボコにされた哀れな不良グループである。
そして今、この時をもって動き始める。
◆◆◆◆◆◆
{You lose…}
俺もこれはゲームをやってるうちにネットで見かけて知ったことだが、ゲームにはtierという用語がある。
流行度、使用率、まあ言い方は色々あるが俺は人気さだと認識してる。tier1、2、3と徐々に降格すると不人気となる。
例えると客ウケが一番いいラーメンが店の看板メニューになるように、プレイヤーが一番使うキャラがtier1になるってわけだ。
看板メニューが看板たる所以は、基本的に「大体の人に気に入られるぐらい美味いから」
じゃあtier1がtier1たる所以はなにかと聞かれれば。
「大体の人がそれで勝てるぐらい強いからtier1……チッ、キャラごとにこんな差が出るとはな」
たった今、俺は負けた。てか、勝って負けてを延々繰り返してる。現在ランクB-1で停滞。
これは単純に対戦相手の戦闘力が上がってきてるからなのだが、それ以上に【ミルキィ・クラッシュ】の身体の脆さが目立ってきた。
「これが、tier1キャラクターとの力の差」
例えばDランクに上がった時点で手に入れていた【ラズヴェリー・チェーン】手に持った鎖振り回してれば相手を勝手に縛ってくれる。その後タコ殴りだ。
「何がずるいって普通に殴ってもまあまあ強えのがな」
武器持ちと素手じゃ基本武器持ってる方が強え。リアルの俺みてえに鍛え上げた筋肉がありゃ話も変わるだろうが、ミルキィにその筋肉がないのだ。
「あとはコイツらか、厄介なのは」
迷彩柄にヘルメットの少女はダイナマイトを投げて無茶苦茶やってくる【ブラウニー・ダイナマイツ】。一応軍人という設定からか、肉弾戦も優れている。
そして久憐も使っていたパッケージキャラ【ヴィター・バット】どんなに実力がなくても高速スイングの脅威には変わりなし。
「頭使わねえと、勝てねえ」
それが俺の結論だ。筋力を鍛えるって手段がない以上な。
「鬼葉はミルキィから乗り換えないの」
そう言ったのは依然【ホウィップ・スカイハイ】からキャラを変更してないヒナタだ。
まあ、そうだな。そりゃ勝ちたいならキャラ乗り換えちゃったほうが早え。
で俺は即答してやった。
「乗り換えない」
「え」
そう乗り換えない。
「で、でもきついんでしょ!?だって【ミルキィ】はtier4で」
「tier4って言われようが関係ねえ」
俺は首を横に振った。
「【ミルキィ】をちゃんと扱えばtier1にも引けを取らない」
「そ、そうなのかな」
そうだ、と頷いた。これは本当の話だ。
tier4、圧倒的な人気のなさ。だが、それでも他のキャラクターにはない、良い部分が沢山ある。それにどのキャラよりも俺に馴染んでるからな。
「例え不人気だろうと俺は俺の好きな麺を頼むぜ」
「なんか突然ラーメンの話にすり替わったんだけど」
「ゲームなんて殆どラーメンだろ」
「何言ってんのこの人」
流石に。けど話の本質は変わらない。その人気モノが好きならそっちに移りゃいいが、みんなが使ってるからって無理に選ぶ必要はねえ。
「だいたい。お前これいくらしたと思ってんだ?」
「あっ、そうか、そうだよね」
先日手に入れた【ミルキィ・クラッシュ-百花繚乱-】のスキン。これを無駄にするつもりもない。
あくまで自分主体で、イイと思った方を選ぶのが俺の生き方だ。
「まあ、つっても俺が馬鹿やってちゃ勝てないんだ」
そうだ、ミルキィの力を引き出さなければ勝てない。
「必要なのは、ミルキィを使いこなすための知識」
「知識?」
「ああ……正直このゲームは現実と違うこと多くてな」
体の構造、力の働き方、伝わり方、謎の硬直とか、その辺。普通ではありえないことがここでは起きる、それについて知っておく必要があるとマジに思う。
「しかしなぁ、どう調べても上手いこと情報収集できねーんだよ」
ミルキィの身体をもっと上手く使いこなすにはと調べてわかったことは「ミルキィ弱い」「性能難あり」「キャラパワーが足りない」とネガティブな感想だけがツラツラツラツラ……ああ思い出しただけでムカつくぜ。
「ノウハウまとめたサイトとか探してもミルキィのとこ悪口しか書いてねえ!クソが!……なあヒナタ、お前なんか知らねーか?」
「ボ、ボク!?ゆーてボクも初心者っていう、か、あまり詳しくないんだけど」
うーむ。ダメか。まあそうだよな。俺とヒナタって立ち位置一緒だしな。ライバル宣言したし。
虎紀に聞いたらなんかわかるかな……いや、あいつのことだ受講料せびってくるにちげーねえ。結局ネットで地道に探すしかないか。
「い、いちおう!」
むむ。ヒナタが声を上げた。
「一応、アテは、ある、かも」
「アテ?」
「うん、もしかしたら、有識者に聞けるかも知れない」
んむむ?どういうことだろうか。よくわからん。俺は首を傾げるしかないぞ。
「みなさんこんヒナ!ボクですヒナタです!今日はちょっと、ロリパン内で相談があって急遽枠をとりました」
{こんヒナ!}
{こんヒナ!}
こんヒナと声が上がる。半透明の球体が宙を舞う。一体これはなんぞやと、俺は結局首を傾げたまんま。ヒナタは続ける。
「紹介したい人がいるんだ」
{誰だ}
{お?彼氏か?}
{いや彼女だろ}
「彼氏でも彼女でもないよ。ボクの、ライバルだ」
そして俺は手を引かれウィンドウ画面を見せられる。そこには下を向いている俺 (ミルキィ)とコメント欄が。これは……LIVE?
「いま配信中だよ」
「え」
「えーと、みんな紹介するね。この人は鬼葉。例の空中ラリアットしてきた奴だよ」
{あー}
{空中ラリアットの人だ}
{空中ラリアットの人だ}
{かわいい}
{かわいい}
{かわいいってかそういうキャラだけどかわいい}
え?なに、俺それで定着しちゃってんの。てかなに?生放送?おいおいマジかよ、俺今の姿見られたくねえんだけど……いや別に誰がリアル事情なんて知るかって話だけどな。
ガチガチのヤンキー言われてそれで通ってた俺が女の子になってる現状を誰かに見られるのはなんか、こう、くる。
「す、するってーとこの半透明の球はカメラとかの配信機材か?」
「そうだよ」
「じゃあお前配信者なのか」
「そう」
マジかよ。予想外。さすがに配信者だとは思わなかった。チャンネル名は紫兎ch、と。
「ほ、ほーん」
「えと。緊張してる?」
「は?なわけ、殺すぞ」
「レスポンスがキツすぎませんかね鬼葉さん」
ちょいとばかし手を振ってみるか。やっぱやめた。キャピキャピすんのは嫌いだ。勘違いすんなよ、俺はかわいこちゃんじゃねえんだ。
「で?これがアテってわけだ。アテになるのか?」
怪しい。なんか変に嫌な予感がしつつも、カメラはヒナタの方を向いて、配信は進行していく。
「早速本題に入る。ボクと、鬼葉はちょっとロリパンでわからないことがあるんだ……コメント欄にいる有識者諸君、知識をください」




