ラティスから始まる冒険の話
【三人目ならぬ組織】
さて、マリグラ教団にもこれまで同様、まずは面会を申し込んでみた訳だが。
「断られました」
ジョンは苦笑していた。
まあ、冒険者ギルド側もトップがやって来るでもなく、一介の職員がやって来るだけで、そもそもは俺の、Sランク冒険者名で申し込みをしてるんだが。
「それでも普通は受け入れるよな?」
「そうですね。トップが出てくるかどうかはさておき、冒険者ギルドから正式に人が派遣されるって時に断るような組織は早々ありません」
誰だって冒険者ギルドと関係を悪くしたくはない。
この街の支配者はギルドだし、それを除いても世界規模で色々な分野において影響力を持つ組織を敵に回したくはないだろう。ギルドを敵に回せば、素材の入手や小さな作業一つとっても全て自分達でやらないといけなくなってしまう。
逆に言えば、それが出来るなら敵に回してもいい訳だが……。
「マリグラ教団の場合、ギルドとの取引がありません」
「「取引がない?」」
ドゥリンさんが書類をめくりながら言った言葉にジョンと二人驚いて声を出した。
どういうこった?
「つまり、彼らは全てを自分達で処理している、と?」
「或いは裏で別組織を通じて依頼しているか、ですね」
こうした裏で繋がっている綺麗な別組織を通じて冒険者ギルドに依頼をする、というのは割と一般的なんだそうな。
そういう手があるのは分かっているが、全ての依頼者に対して裏取りを行う、というのは現実問題として難しい。そんな事をやるには、さすがに人も時間も足りない。依頼を受けた時、「分かりました、ではまずそちらの身辺確認を行うので三日から十日ほどお待ち下さい」、なんて言える訳がない。
うん、俺が依頼人だったら間違いなく怒る。
「毎回だと俺でも怒ると思う。というか、毎回そんな仕事やらされたら上にキレる」
「ジョンに同じね」
だよなあ。
依頼人もだが、調査命じられる側もやってられないだろ。今日も調査、明日も調査、明後日も調査。しかも、どこかでミスがあって一件でも抜けてたら怒鳴られる。せめてルーチンワークならともかく、相手は千差万別だから調査方法も相手ごとにある程度変えないといけない。
ゲームでも最初に組んだチームでひたすら周回すればいいだけなのと、毎回毎回敵に合わせてこちらもチームを組み替えつつ進めないといけないのとでは、圧倒的に前者が楽だ。
「結局、詳細にやっても誰も喜ばないか」
「そういう事。それなら極一部のそれらも受け入れた方がいい」
つまり、多少マリグラ教団本体と冒険者ギルドの関係が悪化しても、冒険者ギルドと実質的に取引する手段は幾らでもあると……。
けど、まあ。
「怪しいな」
「「怪しいですよねえ」」
例えば、責任者がいないから今日は無理です、とかなら納得出来る。
しかし、会うつもりはない、とキッパリ言うのは物凄く珍しい。
はっきり言っちまうが、やり方がドヘタ。他にもやりようはあるだろうになあ。
「こんな怪しい所がこれまで発覚しなかったのが不思議です」
「もしくはここでの活動は割と最近とか…?」
どうなんだろうな?実際は。
もう少しで今回の冒険のお話は終わりです
その次は田舎に引っ込んでたはずの同族からの〇〇が……!