ラティスから始まる冒険の話3
【二人目】
「次は確率的には本命に行きたいと思う」
「最後は?」
「表向きは全然怪しくないが、勘で選ばれた奴」
ああ、なるほど。
勘と言われるとアレだけど、あれってそれまで自分が積んできた経験から感覚として感じているとも言われるんだよね。でも、物的な証拠とかではなく、感覚的なものだから説明出来ないと。
「分かった、とりあえず先に二番目から行ってくれ」
「そうだな。二番目の奴の名前は仮称バンデル」
「……仮称?」
「本当の名前が分かんねえんだよ、裏組織のボス、と言われてもいるんだが表向きは綺麗なまんまだしな……」
なにそれ、めんどい。
「なかなか会えない?」
「会うのは問題ない。一応、スラムの相談役みたいな事やってるから……」
スラムの相談役かー。
街の住人がスラムに重要な話を通す時には必ずといって出てくる交渉役でもあるらしい……。
「スラムだと、どこに何があるか街でも把握してないからな……一見たくさんの家が並んでるように見えて、中は広々とした空間なんてものもある」
そらまた厄介な。
なるほど、それなら浚ってきた子供達を隠す場所にも困らないと。
「おまけにどこからか入ってきて、城壁外のスラムに戻ってる。つまり、どこかに知られざる出入口があるって事だ」
あー……。
なるほど。
隠す場所には困らない。
動員する手駒もある。
冒険者ギルドにもばれる事なく、出入りする手段まで確保してる。
そりゃあ、疑われて当然か……。
「ただ、なあ……逆に怪しすぎるというかなんというか」
「その気持ちも分かる」
とはいえ。
「『全てのありえない可能性を除外していって、最後に残ったものが如何にそれが奇妙なものであってもそれが真実となる』なんて言葉もあったな」
世界一有名な名探偵の言葉だ。
現実にはやろうとしても、どこかに見落としや、気づいてなかったものがあったりして偽りの答えをゲットしちゃったりする訳だがそれはさておき。
「折角会えるんだ。会ってみようぜ」
「本気か、お前」
「私は嫌ですよ!?」
あ、前回同行してくれた職員の人が即効で断った。
「あの人達が素直に本当の事言う訳ないじゃないですか!」
「いや、それは認めるけど、でも……」
「いーやーでーすー!私は戦闘力とかないんですからね!」
うーむ。
ジョンと職員のこれ何時終わるんだろう?
「というか、夫婦漫才いつまで続くんだ?」
「「夫婦じゃないです!」」
息ぴったりじゃねえか。
という訳で二番目はスラムの顔役、でした