ラティスの小さな冒険の話3
投稿再開です!
体力回復に専念してると体調の不調が次々と噴き出る事噴き出る事……
ラティス達の捜索は……順調ではなかった。
まず、ツインテールキャットの子供の見た目が完全に猫である事。
尻尾でさえ、子供の頃は一本となると余計に分かりづらい。
「……猫の捜索と同じだね」
『それならば他に手がありますね』
そうしてツァルトから提案されたのが……。
「冒険者依頼?」
『そうです。雑用専門の冒険者はこうした事に長けています』
雑用と一口に言っても色んな仕事がある。
ラティス達の家でお願いしているような料理や掃除、教育。
道案内や荷物運び、動物の世話まで多岐にわたる。その中にはペットの捜索などもあった。
そして、こうした仕事は他の冒険者から馬鹿にされる事はまず、ない。
何せ、他の仕事をしている冒険者でも怪我をした時に生活費稼ぎに雑用を引き受ける事もあるし、まだ子供の頃にこうした雑用専門として冒険者に登録して人脈を築いて商人となったり、そのまま冒険者になってもその頃の人脈を活かしている者も少なくない。
また、こうして雑用をしている間に仲良くなった他の冒険者から経験談を聞いたり、アドバイスを聞いたり、場合によっては雑用以外の仕事へのデビュー祝いとして武器などをプレゼントしてもらえる場合もある。なにせ、そうしたプレゼントをする連中は彼ら自身が同じ体験をし、今度は自分達がプレゼント出来る立場になった事を喜んでいたりする。
早い話が、雑用なんて!と馬鹿にすると他の冒険者らを敵に回す可能性が極めて高い、という事だ。あるいはそんな事をした場合、自分が怪我をして雑用を、と考えた時、割のいい仕事を紹介してもらえる可能性はまずない。
そして、そうした仕事を極めた、超一流の雑用冒険者というものも存在している。
「そうした方にお願いする、という事ですか?」
『誘拐事件という場合は補助金も出ますので』
フォート内部での治安悪化は周辺国が口を出す口実になりかねないだけに、冒険者ギルドは極めて神経を尖らせている。
そして、冒険者ギルドが統治する街だからこそ冒険者を動かすという事に躊躇がなく、そうした治安悪化防止に対して、補助金を出してまで対処している。雑用専門冒険者というのは他国の街における治安維持の一端を担っているとも言える。
……というか、フォートの街では表向きは普通の雑用依頼専門冒険者とされながら、実際には治安維持や隠密捜査を担う冒険者もいて……。
「あの……いかほどでしょうか?」
「大丈夫!私が出すよ!!」
「え!?いえいえ!見ず知らずの方にそんな事をさせる訳には!」
などと言っていた時だった。
「ん?お嬢さん達、何か探しもの?」
声を掛けて来た男がいた。
もっとも男ではあったが、人ではなく、魔物だ。体つきは人の男性のそれではあるが、顔は犬のそれで、手も毛に包まれていた。それでありながら、どこか愛嬌ある表情を浮かべているのがラティスにも理解出来た。何というか、雰囲気が明るく、親しみやすいという印象を与える男だった。
それでもツァルトは的確にいざとなれば即座にラティスを庇える位置に動いていたが、それに気づいたのか、敢えて距離を置いて立ち止まった。
「あー、別にどうこうするつもりはねえからさ、話だけ聞かせてくんねえ?」
ちょっとツインテールキャットの女性と顔を見合わせたラティスだったが、ツインテールキャットの夫人――以下猫夫人――が頷いて、事情を説明しだした。
思う所はあったかもしれないが、ここは情報を得る事を優先させたようだ。
「……という訳です。何かご存じありませんか?」
「……ふーん、いや、やっぱし俺の調べものと関係してたっぽいね」
そう言われて、ラティスと猫夫人は首を傾げた。
『都市内での行方不明に対する雑用依頼、ですかな?』
「お、話が早いね!その通りだよ。俺、雑用専門……って言ってもどっちかってーと都市内の荒事中心の仕事してんだよね」
だから、と二かッと明るい笑顔を浮かべて続けた。
「協力してくれると有難いかな?首狩り兎のお仲間さん達?」
……どうやら、ラティス達がビットの仲間だと知って、声をかけてきたようだった。
さすがに首狩り兎に、人の少女、古代のゴーレムというチームは目立っていたから覚えていたようだ。
雑用冒険者の一人が登場です
表向きは雑用として都市内を回りながら、各種の情報を収集し、さりげなく治安維持なんかも行うギルド直属の冒険者の一人です
超一流であっても収入は一流冒険者に劣りますが、都市内部に加えてギルドの調査官的な地位を持つ事から安全面は高く、家庭を持った冒険者などからは人気の仕事です。実力に劣る者の場合は衛兵みたいな仕事をしてる者もいます