野営のお話
あけましておめでとうございます
本年度もよろしくお願い致します
雄鶏が巣へと到着した。
「襲撃は明日の朝だなあ……」
既に陽が落ち始めている。
そして、ここは一部を除き、基本的には人の手が入っていない魔精の森の一角だ。すなわち、木々に上部を覆われ、昼でも薄暗い。ましてや、夕方ともなれば……。
「明日、日が昇ると同時か、それとも動き出してすぐか」
出来る事なら日が昇るまで待って欲しいが、何時動くかは分からん。こればっかりは奴次第だ。
そして、問題点二つ目。
「野営どうすっかな」
「うん」
うちは夜間の見張りは楽なんだ。
……いや、ほんとツァルトにはその点では頭が上がらない。
ゴーレムという眠る必要のない存在、そして、それが高度な自律性を持ち、極めて高い判断能力をも保持している。
そのお陰で、俺らは安心して夜間の見張りを任せる事が出来る。俺らが二人と一体という少数でパーティを組めているのもツァルトの存在が大きい。
ごそごそとテントを取り出す。
マジックテント……いや、マジックバッグといい安易にマジックとつけりゃいいってもんじゃねーぞ!とは思うが、分かりやすいからな。結局、魔道具にはマジック~というのがついてる事が多い。マジックバッグ、マジックテント、マジックライト、マジックロック、マジックキー、マジックファイアと本当に多い。
ちなみに最後のマジックファイアってのは点火具な。元の世界だとチャッ〇マンとかそういう呼び方されてた奴。
ただし、実際にかけられてる魔法とか中身は違うものもまた多い。
同じマジックテントでもどんな場所でも自動展開するという奴もあれば、中が拡張されてて快適に過ごせるものもある。
中には崖の途中に横向きにでも自由に展開する事が出来る上、中に入ると崖に横向きに立てるような事が内部限定で出来るような代物もあるそうだ……ただし、人気は低い。
便利そうじゃないか?と思った奴は甘い。
何せ、確かに便利そうじゃあるが、これの最大の問題点は目が覚めた時だ。すなわち、寝ぼけた頭で普通に外に出て、崖から落っこちる……。崖に垂直に立てるのはあくまで内部オンリーで、外に出ちまえば関係ないからそうなる訳だが、そうしたうっかりを嫌う奴は多い。
誰だって、うっかりはある。
けど、誰だってうっかりで死にたくないよな。
さて、俺のテントだ。
こいつはアド爺さんが突っ込んでくれてた魔道具の一つだけあって実に高性能だ。
まず、自動展開機能。
例え森の中だろうが、洞窟の中だろうが展開可能だ。
それから快適機能。
温度の調整に、小さな虫の排除。床は真っ直ぐで横になっても凸凹は感じない。
この凸凹、案外面倒で、きちんと地面確認しないと「出来たー!」とゴロンと横になったら背中に当たって、妙に気になったりする。それがないだけでも有難い。
おまけに、中は見た目よりずっと広く、それどころか中で簡単な火を使った調理も可能だ。
……これ、ギルドで買える奴よりずっと高性能っぽいんだよなあ。どんだけ高いもんくれたのか考えると怖い。
……他にも一杯入ってるし。
アド爺さんにとっては大して気にするようなものでもなかったんだろうけど……。
「これ、気持ちいいから好き!」
……ラティスが喜んでるからよしとするか。
実際、快適だしなあ……。
追加で、毛布や何かも取り出しちまう。
ご飯も宿で作ってもらったお弁当を温め直して、湯を沸かしてお茶を入れる。……ラティスが。
だって、俺、ウサギだもんよ。
大体、俺の場合はやっぱし新鮮な野菜スティックとかがいいんだよな。味覚も変わってる。
「明日は早いだろうから、さっさと寝よう」
「うん」
寝不足で戦闘なんて勘弁だからな……。
それじゃおやすみなさい……。
寝正月でいられたらいいんですけどねえ……
そうもいかないのが辛い