コカトリス発見のお話
さて、コカトリスである。
実は……。
「えっ?」
『はい?』
驚くよなあ……。
「うん、実は魔精の森の一角で実質飼われてるようなもんなんだ」
無論、放し飼いに近いし、戦って倒さないといけないんだけどさ。
何故、そんな事になってるのか?
それはコカトリスが前に述べた通り、魔獣ではあってもこちらからちょっかいださねば大人しい事と、そして石化病の特効薬に必須な存在というのがある。
しかし、魔精の森は広い。
そんな森のどこかにいる、かもしれないコカトリスなり石化能力を持つ魔獣を探すよりは、コカトリスが気に入りそうな場所を作って誘導して、そこに来るようにしておけば必要な時に狙う事も出来る。
「な、なんだかそれって討伐とか狩りじゃない気が……」
『全くです』
俺も同感だけどさあ……。
「石化病みたいな病気対策には有効じゃあるんだろ」
さて、その上で今回の狩場の説明をしておく。
放し飼いと言ったが、実際にはコカトリスにとって住み心地の良い場所を見つけ、餌となる果物、好んで食べる草類を植えておく。
その上で、コカトリスの卵をかっさらってくる。
当然、コカトリスは怒って追いかけてくるので、耐えきれなくなった様子を見せて、狙いの場所近くに放置する。さて、この場合、コカトリスはどうするかというと、実はその場で子育てを再開する。そして、奴らはそこが快適に過ごせる場所だと判断するとそこに居つく。
更に言うなら、同じコカトリスと遭遇しても喧嘩したりしない。
極端な話、コカトリス達が餌を食べてる最中にその横を通って、果樹のお世話をする事さえ出来るとされている。……やる奴はいないが。誰だって「大丈夫だって」と言われたって、石化能力を持つ魔獣の傍を平然と通り過ぎれる奴はそうはおらん。
居ついたコカトリスは縄張りを共有し、独り立ちする個体がその地が限界であれば出ていく、という風になっている。
結果、餌場と水場を中心に周辺部にコカトリス達が一定数、巣を作る訳だ。
「最初は卵を奪って、割らないよう運搬しないといけないから場を作るまでは大変らしいんだけどな」
何せ、逃げ損ねたら怒り狂ったコカトリス夫妻を相手にしないといけない。卵を抱いているか、子育て中のコカトリスは夫妻共々非常に危険だ。よほどのランカーでも犠牲者を覚悟しないといけない。
更に、卵を途中で落としてしまってもいけない。割ってしまったら、やっぱり怒り狂って執拗に襲ってくる。
この場を構築するまでにはえらい苦労と相当数の犠牲者がいる、というのが現実だ。……ラティスには言わないけどな。
ここは素直に、先人達に感謝しておくとしよう。
「という訳で、ここがコカトリス牧場だ」
ま、牧場っていうのはある種のコードネームみたいなもんだけどな。
穏やかな流れの水場、広がる柔らかな草地、周囲には果樹園みたいに果物の木が生えている。
確かに、これならコカトリスも定住するだろうよ。んでもって……。
「……あれがコカトリス?」
「らしい」
いやー……一般にコカトリスって言うとイメージでは雄鶏に蛇の尻尾、翼に関しては蝙蝠の翼だったり、羽毛だったりと色々だ。
さて、現在俺達の目の前にいるコカトリスは?
「おっきいね……」
「でっかいなー……」
さて、立派な餌場が用意されて喰うに困らず、特に天敵もいない。
そんな場所で、以前のコングもそうだったが、基本成長に限界というもののない魔獣がすくすく育ったら、どうなるか?
頭頂部までは小さな個体でも3mを超え、尻尾は完全に大蛇と化している。
脚は太く、蹴爪も最早、鎌並だ。
うん、あれだ。確かに探す手間は省けたけど、強さに関しては飼われてる方が強いみたいです。
まあ、むやみやたらと人を襲うタイプでなけりゃ、飼えるなら飼えた方がいいよね