攻撃魔法のお話
次回は討伐のお話予定
「つ、疲れた……」
「ウサギさん、大丈夫?」
大丈夫じゃない、と言いたかったが、さすがにそこはぐっとこらえる。
「ああ、疲れただけだからな。少し休めば大丈夫さ」
あくまで精神的なもので、肉体的なもんじゃないし。
それに色々役立つ話があったのも事実なんだよな。
(攻撃魔法の限界か……)
何というか、攻撃魔法なんて魔法の華だと思ってたんだが、講演の後は余り効果的な魔法とは感じられなくなってた。
古代文明の時代の遺産、とでもいうべきものが現代の魔法だ。
当時は優れた魔法が次々と開発され、高度な文明が築かれ、やがて絶頂期を迎えた後緩やかに滅んだ。
(平和な時代には攻撃魔法なんて必要ない、かあ……確かになあ)
古代文明がその絶頂においては生きていくだけなら特に仕事をする必要さえなかった。
ここで重要な事は、そんな状況で攻撃する魔法の開発などどれだけの者がやっていたのか、という事だ。
はっきり言おう、そんな時代では攻撃魔法の需要なんてほとんどなかったはずだし、使う機会もろくになかったはずだ。というか、一般人に攻撃魔法なんかを使って、怪我させたら、運悪く殺してしまったらどうなるか……きっとそれは俺の前世で銃とか持ち出した時と同じ扱いになるんだろう。つまり犯罪であり、犯罪者として捕まる訳だ。
じゃあ、どんな場面で必要か、となると……。
これは簡単だな、まず戦争。国なんかがあれば対立する事もある訳だが。
(古代文明って最後はほぼ一つの統一組織が世界を統治してたらしいんだよなあ……)
贅沢を望まなければ、普通に美味しいものを時折食べて、寝て暮らすという文字通りの食っちゃ寝が可能な世界だった。
魔獣も当時は生息していなかったらしい。
というか、古代文明が滅んだ後から魔獣が誕生している事から、大真面目に魔獣や魔物は古代文明時代に生み出された存在、とする説がある。
……まあ、この類の説を唱えるのは大抵、人族なんだが。
つまり、古代文明の直系は我々人族であり、魔物どもなど我々の先祖が生み出した下僕なのだ!って事だな。
念の為言っておくと、一般的には古代文明が生み出した力の源となる偉大なる魔道具が文明の崩壊と共に整備されなくなり、やがて、それもまた崩れ落ちた。その結果、崩れるまでに溜め込まれた膨大な力が周囲に放出され、周囲の生物を進化させた……というのが定説になっている。
古代文明が関わっていた事や、古代文明人の直系が人族なのは事実だが、魔獣や魔物は偶然が重なって自然に誕生した存在であり、古代文明人が生物を弄って生み出した存在ではない、って所が違う。
これが重要なのは、前半の主張をする、魔物を差別する国とか、魔物は分をわきまえて人に従えば良い、なんて考えの組織なんてのが実在するって事か。
一般にはそうした組織は裏組織なのが救いっちゃ救いだが……。
いや、話を戻すが、結果として攻撃魔法は古代文明の後期辺りにはほとんど開発されてなかったんだろう。
それどころか、かつての魔法も忘れ去られていった可能性すら……。
(だから、攻撃魔法は古代文明の時代に主に警備の為とかで少しだけ残ってた魔法に、文明崩壊後に改良なり加えて出来上がっていったとみるべき、か)
あの三頭の研究者はそんな事を言ってた。
確かに納得出来る。
明かりだとか、支援系の魔法は日常にも組み込まれていたから発展もした。
攻撃魔法はほんの極一部でしか使われず、しかも、古代文明が栄える程、需要が減っていった為に開発そのものが不要になっていった。
「……ラティス」
「なに?」
「頑張って、攻撃魔法以外も覚えていこうな」
「うん!」
その考えが本当だったら、攻撃魔法が本当の意味で使い勝手がいいものになるまでにまだまだ長い時間がかかるはずだ。
古代文明はきちんと魔法の法則を解明して、作り出す事が出来た。それでも、ある程度の試行錯誤が必要だった。
今は違う。
今は古代文明の時代よりずっと、ずっと時間がかかる。
彼女が身を守れるよう攻撃魔法を教えた騎士達の行動が間違ってた訳じゃない。きっと、それは自分達がラティスを守れなくなった時の事も考えてたはずだからだ。その時、ラティスが身を守るのに、剣なんかの武器を女の子が振るよりは、魔法の方が可能性があると思ったんだろう。
でも、その攻撃魔法が人の世界でどう伝わってるのかは分からんが、今の時点では余り発展性がないなら、他の手段模索するしかないよなあ……。
攻撃魔法の使い勝手に関してのお話
念の為に言っておくと、攻撃魔法の攻撃力自体は決して低くないです
ただし、それを当てる魔法使いの側に問題があるというべきですね
森の中で動き回る動物に魔法を当てるのは難しい、という事です