講義で後悔するお話
「けど、最近少し違う事が分かってきた」
「最新の研究で明らかになった事、それは意志だ」
へえ……って意志?
どういう事だ?
「以前から不思議に思われてきた事だが、詠唱にしては詠唱破棄でも威力が低下こそすれ魔法は使える」
「言葉にしては、同じ言葉を寸分の違いなく発しても威力には人によってかなりの差が生じる」
「相性というが、ではその相性を決めるものとは何なのか?」
それこそが魔法を使う者の意志なのだという。
どういうこっちゃ?
「相性というのは間違ってはいない。最も自分の意志を効率良く伝えられるのが相性良い魔法という事だ」
「そして、言葉に関しては同じように唱えても、上手く意志を伝えられるかどうかで差が生じる」
「詠唱もまた同じで、詠唱によって魔法に対するイメージを固め、最終的に魔法の名称を唱える事でそれが放たれるイメージを固める訳だ」
「「「そうして、意志を確実に世界へと伝える事が出来るようになれば詠唱も不要だ」」」
「はい、先生!!」
それ聞いて、疑問に思った事があったので思わず手を挙げていた。ウサギなので小さい手だが。
「「「ふむ、何かな?」」」
「どうやって意志って世界に伝わってるんですか?苦手な魔法にもうまく意志を伝えらえる方法ってありますか?」
何かしらトリガーがあるはずなんだよな。でなけりゃ、俺らみたいな魔法使いが苛立っただけで魔法が発動する危険があるって事になっちまう。
怒っただけで火の魔法で爆発起こしたり、冷たい視線で見つめたら相手が文字通りの意味で凍った、なんて事だってありえる。
でも、そんな事は起きてない。となれば、何か発動の条件があるはずだ!それに俺も風以外の魔法が使えるなら使ってみたいとも思うしな。
「「「分からん」」」
「は?」
しかし、答えは無情だった。
「「「いつかは分かるかもしれんが、先程も言っただろう?『最新の研究によれば』、と」」」
あー……。
まだ判明したばかりで、何がどうなって魔法が発動するのか全然わかってないのね。
「「「その通り。そもそも我々が知ったのは『魔法が発動するのに一番大事なもの』だけで、どういう仕組みで魔法が発動し、どういう仕組みで発動するよう我々は意志を伝えているのか、そもそも我々は何に意志を伝えて、魔法が発動しているのか……何もわかってはいない!!」」」
あ、やばい。
これ研究者が暴走する流れじゃね?
……ちなみにやな予想は当たり、この後一時間余りにわたって延々三つの頭が喋り続けたのだった……。
三つも頭があるせいで、喉乾いても一つの頭が水飲んで喉癒してる間も他二つが喋りっぱなしだったんだよなあ……おまけに専門的すぎてさっぱり分からんかった。
ちなみにラティスは途中で寝ちゃってた。……というか、半数以上が途中から理解不能になって眠気に負けてたな。
俺?
俺は……。
「聞いているのですか?ビット君!!」
「君は上位の魔法を使えるそうだが、上位とはそもそも何なのか」
「そう!上位と区分されてはいるが、余りに質が異なりすぎる!そもそも」
……なまじある程度理解出来るせいでロックオンされて、真正面で相手させられていましたとも。
質問してなけりゃ、俺も寝ていたかった。
難しい専門的なお話が延々続く温かい昼下がり
お腹は膨れ、消化の為に血がそちらに集中する為に脳の働きは鈍ります
が、先生の真正面に座ってると寝れないのです