講義に参加するお話
さて、その後の事は余り話す事もない。
ここは迷宮でもないし、道端に警備装置がウロウロしてるような場所でもない。ああ、無論、奥の危険地域まで行くと道を警備装置が移動してるらしいので危険度が一気に増すそうな。
で、既にお宝は十分確保したので、さっさと帰って後は査定に出すだけだ。ちなみに貴重な古代文明のお酒や食料品が結構見つかったので分け前は期待しておいてくれていいと嬉しそうな顔で探索パーティは語っていたんだが……。
幾ら理屈的には大丈夫とはいえ数千年前の食料品を口にする度胸は俺にはない。
「で、何をしようかと思ってたんだが」
ラティスに抱っこされて運ばれてきましたのは……。
「魔法教室?」
「うん」
今回ので支援魔法も便利だなあ、って思ったから覚えようと思ったらしい。
まあ、今のラティスだと攻撃魔法しか取り柄がないからな。
んでもって、攻撃魔法をぶっ放しても当たるとは限らない。効果があるとは限らない。
これが光速で回避する間もなく命中するとか、追尾能力があるとかならまた話は別なんだろうが、生憎この世界で俺はそんな魔法を見た事がない。
(操作可能なのは見た事あるんだけどな)
発射した火の玉とか岩塊なんかを操って、相手に命中させるのは見た事ある。
しかし、自動追尾式ってのは見た事ないんだよなあ……。
そういうのあれば、大分楽だと思うんだが、聞いてみるか、折角だし。
「ある事はあります」
「あるのか」
開始前にたまたま先生とやらに会えたので聞いてみたら、あるという答えが返ってきた。
ちなみに講師の先生は三つの蛇の頭を持つ人型だった。多頭竜の亜人、リザードマンの亜種らしい。
竜に色んなタイプがいるように、その血を受け継いでるとされるリザードマンにも様々な種がいるのがこの世界だと初めて知った瞬間だった……いや、前はリザードマンって大体、竜の血云々って言っても実際はほとんどが単なる蜥蜴人みたいな扱いだった印象だったんだが、この世界では本当に竜の血を引いてるらしい……。
だから空飛ぶリザードマンとか、砂漠で暮らすリザードマンとかもいるそうな。
「ある事はあるのですが」
「まず、使い物になりませんね」
「左様、対象への固定時に抵抗される可能性が高いのです」
三つの頭が順番に述べてくれる。
どれが喋ってるのか分からなくなりそうだわ。ちなみに魔力の根源を練る胴体は一つだから三つの頭が同時に魔法行使しようとすると簡単なものしか使えなくなるらしい。明かりとかそういう奴。エネルギーを生み出す部分を共有する以上、魔法を使う際は一つの頭に集中させた方が効果が良いそうだ。
で、続きだが。
なんでも、目標を固定するのには相手の抵抗を破る必要があるという。
おまけに、命中するまでずっとその魔法が維持され続けなければならず、途中で破られたらその時点で自動追尾が解除されてどっかに飛んでってしまう。
「以前に、ならばと術式そのものに追尾を組み込んだ者がいたのですが」
「消費量が莫大でしてな」
「結果、結構な大魔術師でしたが、一発撃った瞬間に気絶しました」
……なんでそんなに消費が激しい?
「どうも追尾し続ける間中、対象の攻撃魔法一発撃つのに相当する量の消費が続くようなのです」
「ですので、発動出来るのは本物の竜ぐらいでしょうな」
「結局、未だ実用レベルのものは完成しておりませんな」
はあ、つまり追尾魔法を一発撃つと命中するまでに数十発その魔法撃つぐらいの消費をしちまうと……。
それぐらいならまだ十発ぐらい乱射した方がマシ?
そりゃそうだ。俺だってそうする。
この世界で攻撃魔法には案外、厳しい世界だったんだな……。
そう思いつつ、魔法講義に参加する俺だった。
今回及び次回はこの世界の魔法に関してのお話です