中身のお話
金庫内には貴金属、古代文明時代の道具がまとめられ、転がっていた。
「金貨みたいなのはないのか?」
「ないですね」
古代文明人はキャッシュレスを実現していたのか、それともお札を使っていたのか。
現代もまだ解明されてないそうだが、何等かの形での通貨があった事は確からしい。
……そりゃそうだよな、全部を硬貨で支払い、なんて言われたら……重いわ、嵩張るわでたまったもんじゃなかろう。金貨とかが使われていた背景には、金や銀という素材そのものが持つ価値が、通貨の価値を保証をしてた、って面もあったからなー……。最悪、潰して売れば金や銀は手に入る、って訳だ。
でも、それがもっと国として安定すれば。
金とか銀で全部を賄おうとすれば、金とか銀が硬貨として製造する分だけで膨大な量を必要とするってのもある。
(それ考えたら、こうして通貨が残ってないのも当然か)
ぐるり、と周囲を見回す。
探索パーティは金属塊はそのまんま放り込み、魔道具に関しては調べながら別のマジックバッグに収納している。
「マジックバッグはほとんどないんだな?」
「マジックバッグは日常で使われてた品みたいですからね。金庫の中に仕舞い込むような品ではなかったみたいです」
そりゃそうか。
カバンの中に大量の品を入れて運ぶのがマジックバッグだ。
そんなもん金庫の中に仕舞い込むようなもんじゃないよな。むしろ、金庫から何かを持ち出して運ぶ際に使われてたはずだ。
あれ?
「って事は……ここら辺にある魔道具ってどんなもんがあるんだ?」
マジックバッグもそうだし、照明器具とか冷蔵庫みたいなもんがあるとして。どれも金庫に仕舞い込むような品じゃないよな?
「そうですね、例えばこれは……」
そう言ってリーダーは一つのケースのようなものを持ち上げた。
「酒の保存容器です」
「酒え!?」
お酒というのは案外保管が難しい。
温度湿度、揺らしてはいけないなど色々だ。……確かに状態維持とか乱暴に扱っても大丈夫な容器とかあれば便利かも。
ん?って事は……。
「まさかそれ」
「ええ。ちゃんと飲めますよ」
……場合によっては数千年前の酒かあ……。
美味いのかもしれんが、何か飲みたくないような気もする。
「中を飲んで、残った容器は別の酒の保管に使ったりするんですよ」
「……ああ、納得」
なるほどね。
「他にも過去見つかったものでは展開式の持ち運び可能な家や、強力な武器などがありますね。武器に関してはそこらに置いておくのは危ないとすべきでしょうけど」
「まあ、そうだろうな……」
元の世界でも某銃が一般家庭に転がってる国じゃ、子供が誤射するって悲劇が多々発生してたしな……。
後はめっちゃ高価なものとかか。しかし、そうなると……。
「普通に便利な道具ってむしろ金庫の外で手に入るんじゃね?」
「ええ、ですから金庫内部のものは基本、貴族や冒険者向けですね」
なるほど、だから低ランクの探索冒険者でも十分生活出来るのか……。
古代文明人なら普通に転がってるものでも、現代じゃ価値があるんだな。
という訳で金庫の中です
普通に考えて、バッグとかランプとか車とかに相当するものがあったとして、普通は金庫に入れっぱなしにしないよね!