銀行強盗のお話
さて、討伐したは良かったんだが……。
「うーん、これは余り売れそうにないわね」
「こっちは結構丈夫そうだよ」
「取り出す時は注意してくれよ!」
……現在絶賛、キメラ解体中です。
いやあ、討伐で魔獣の死体を売りさばく俺が言えた義理じゃないんだが、冒険者ってほんとたくましいわ。
「お待たせしました」
しばらく待ってると終わったのか、彼らが戻ってきた。
魔獣の解体なら俺らも一応学んでんだけどねえ。古代文明のキメラなんて下手に俺らが解体して、知らずに高く売れる部分傷つけたりしたら困るんで黙って見てたんだよね。そこら辺は事前に話し合いもしてあったから、あちら側もちゃんと理解してる。
魔獣討伐に一緒に行った際に簡単に確認もしてみたんだけど、やっぱり古代文明の生物兵器と自然発生する魔獣では大分違ってたんで彼らも改めて納得してた。
「で、これで開けれるのか?」
……門番が倒されたから、金庫が開く、なんてセキュリティなんかないと思うんだが。
と、思ったら。
「ええ、少々強引になりますけどね」
ってやったやり方が本当に強引だった。
というか、強行突破、物理的破壊。
いやまあ、確かに警報装置も全部潰した後なんだからいいのかもしれんけどさ!
「……これ、毎回こうなのか?」
「いえ、状況次第ですね。今回の場合はこれ以上の防犯設備がないと確信持てたのでこうしてますが」
解除用の鍵があればいいが、何せ『古代文明』な訳だ。
数十年前でも金属の鍵は錆びて、ボロボロになっててもおかしくない。ましてや、数百年数千年?いずれにせよ大昔となるともし、形が運よく残っていたとしても使えるかどうか分からない。鍵穴だって錆びたり、故障してる可能性があるから。
無論、金庫の頑丈さ次第では物理的な破壊が論外なんて事もあるらしいけど。
「実際、そのせいで難攻不落、未だ未開封なんて古代文明の金庫も実際に存在するんですよ」
……笑ってるけど、これ金庫強盗のやり口そのものだよなあ。
ガン!ガン!と扉を破壊してる様子を見ながら思った。
とはいえ、そうそう簡単に破壊出来る訳ないんだよな。
「鍵開けの魔法なんかないのか?」
「あったとしても、古代文明には通じませんからねえ」
何せ、魔法の鍵を誤魔化すには出力が足りないらしい。
あれか、現代の虹彩や何かを探知するタイプの電子キーをアナログでどうにかするとかそういうレベルか?
……案外、こういうのって簡単な方式が見つかる可能性は……あればとっくに広まってるか。
「……魔法で頑丈にする方法とかあったら本当にどうにもならんかったかもなあ」
「まったくですね。どういう訳か、保存の魔法はあっても頑強にする魔法は見つかってないんですよ……」
あるいは既に魔法の効果が切れた、という可能性もあるとリーダーは口にした。
「しかしまあ……」
今回は楽ですね。
そう言って笑った。
……そうだな。今回はツァルトが頑丈だけが取り柄っていうメイス使って絶賛破壊活動に専念してくれてるからな。普段は硬いものを殴るせいで腕が痺れ、何度も交代して作業するらしい。
今回やってみて思ったが、探索も大変だよな。
討伐も俺は慣れたけど、今回、探索パーティを連れてったお陰で、他に特化した連中がやると難しいのが改めて理解出来たし、護衛は護衛で大変な面があった。
……どんな仕事でも大変な所はあるって事だよなあ。
扉の破壊作業に区切りがついて、内部に入れるようになったのはそれから三十分程してからだった。
古代文明人からの視点
警備システムであるキメラを壊した挙句、更に金属製の扉を物理的に破壊して中身を奪い取る
古代文明人「ご、強盗だーっ!!」ってなるよね、生きてればw