戦闘に突入するお話
たしっ!と。
門に到着した俺が前足を伸ばして門に触れつつ、後ろを確認する。
(やっぱし来るよな)
予想通り、門番たるキメラが姿を現した。
しかも、即座に触手をこちらへと伸ばしてくる。これも、先程見ていた通りだ。
……さっきの奴は事前に警告されていたのに扉があかない事に苛立ったのか蹴り飛ばした結果、仲間に捨てられたという事に思っていた以上に苛立っていたのか常以上の力が籠っていた為にバランスを崩して尻もちをつき……そのお陰で、触手につかまらずに済んでいた。
もし、あの時転倒していなかったら、間違いなく、そこで終わっていたはずだ。
そうした意味では、ドジでこけた奴に俺は感謝してた。一瞬だが冥福を祈ってやったぐらいには。
「初手はそんなもんなんだな」
それに関しては『出現して最初は詳しい状況が把握出来ていないから、警告も兼ねて敢えてゆっくり伸ばしている可能性がある』、と同じ古代文明産のツァルトの言葉。
それでさっさと逃げ出すなら良し。
空中に逃げ出した相手を執拗に追ったりしなかった事から、ここにいるのは逃げ出す相手は追わない、というもので殺意に溢れている訳ではない。そう聞いた一同は思わず何とも言えない顔になった。当然、そんな顔になった理由はあの死体の処理状況だが……。
考えてみれば、逃げない以上、攻撃するのは当然。
死んだのなら死体を何等かの形で処理するのもまた当然。
つまり、あれはさっさと逃げ出さない相手への当然の行動であり、掃除でもある。
「おっと」
あえてかわしやすくしてるのか?と思うぐらいの速度。
戦闘モードに入ったそれに比べれば遥かに遅いそれを空中に飛び上がって回避する。
そのまま上空へと駆け上がりながら、キメラを確認。
(動かないな)
いや、動き出そうとはしている。
ただし、扉とは反対側。
残るメンバーの方に向き直ろうとしている。その姿からは俺に対して意識を向けている様子はない。ないんだが……。
(あー見られてるなあ)
はっきりした目がなくても、意識を向けられていると分かってしまう。
多分、というか間違いなく攻撃を仕掛けた瞬間、反撃を受ける事になるんだろう。
なので下手に攻撃を仕掛けたりせず、素直に味方と合流する。
「ただいま!」
「おかえりなさい」
案の定というか、キメラからの妨害はなかった。
『現在はいわば警告が為された状態。撤退しないなら――』
ツァルトの言葉に頷く。
そう、撤退しないなら奴は侵入者排除の為に動き出す。
それが奴の存在意義なんだから。
こちらの魔法詠唱者が準備を整える。
ラティスは攻撃魔法を、探索パーティ側は支援魔法をとそれぞれが得意とする魔法を準備する。
準備自体はさすがというか、熟練の技術を持つ探索パーティの方が先に完了する。
【防護の薄衣】
淡い光が各自を包む。
敵からの攻撃に対して、大幅にダメージを軽減する、らしい。
うーん、こうした支援魔法ってこれまで余り接する機会なかったからなあ。よく分からん。今度一度調べてみよう。
そして、こちらが逃げ出すのではなく、魔法を使った事でキメラは完全に戦闘モードに移ったようだった。
「来るぞ!!」
その言葉にすかさず盾役が飛び出し、守りに入る。
とはいえ、一人で触手全てを相手どる事なんて出来る訳ないから彼の背後に魔法の使い手達が陣取り、同じ近接戦闘型のリーダーと俺が彼の左右に張り出すように位置する。
さて、上手く隙を見て、首を落とさないとな……。
次回より戦闘です
……どうしてもぶつ切りになる分、戦闘シーンは難しいですね