マナーのお話
さて、一泊もした。
ご飯も食べた。
遺跡にGO!
なお、遺跡では幾つかのマナーがあるそうな。まあ、討伐とか護衛でもそうだけどな。少しでも余計な衝突をなくすために、いわゆる業界特有のお約束、という奴がある。
そして、大抵新人が知らなくて、顰蹙を買うまでもお約束。
「君達、横紙破りは良くないと知らないのかな?」
「はあ?俺らが先に入ってたんだ。別にかまわねえだろ!」
はい、現在は、絶賛マナー違反の現場からお送りしてます。
こういうマナー違反をやらかす連中の場合、二つに分かれる。
パーティ全員がマナー違反をやらかすような集団のケース、もう一つがパーティの一部がマナー違反をやらかし、他がそれを止めようとしているケースだ。今回の場合は後者にあたる。
「なあ、俺達がマナー違反したんだから……」
「はあ!?じゃあ、折角の探索譲ろうってのかよ!!」
そして、こういう場合、しばしばそうした仲間が止めようとしても、今更引けずに余計強硬になる奴がいる。今現在、喚いてる見た目は多分犬の獣人らしき奴もその類だ。リーダーっぽい……翼の形状からして天使族かな?が止めてもそっちに噛みついてる。
ちらっと同じパーティの女の子、こちらは今噛みついてる方が直立した犬っぽい外見なのに対して、犬耳や尻尾以外は人の女の子に見えるタイプの獣人だが、そっちに好意持って「先輩風吹かせる奴にもひかない俺カッコいいだろ!」とか思ってるのかね?女の子が顔しかめてそいつ睨んでるのに気づいてもないし。
大抵の場合は、こうした事が重なって、次第に仲間と距離が出来て、パーティ離脱。しかも、その時には悪評が広まっているせいで、まともな所からはどこからも新たな仲間として入れてもらえない、というオマケつきだ。
こうした奴らはどこかで性格が変わるか、折り合いがつけれるようにならないと行く末は二つに一つ。
犯罪者か、失意の内に引退するかだ。
今回の場合、俺達が同行してる探索パーティが既に門番までの道を切り開いていた。
つまり、安全に向かえるようルートを切り開き、罠を解除し、印をつける。
入口だけならともかく、内部にまでつけた時点でそこは「現在、我々が攻略中!」という証となる。なお、これは一パーティ、一箇所限定というのもまたマナーらしい。また諦めた場合は入り口にまた別の印をつける事や、一定期間の間放置されていた場合は無効になる事なんかも……面倒くさいな。
「なら、勝負だ!俺らが勝てばここ譲れよ!」
「あのね……それやって私達に何の得があるっていうんだい?」
「はっ!逃げやがるのかよ!臆病者が!!」
うわー……典型的な人の話を聞かない奴だよ。
と思ってたら……。
「お前いい加減にしろよ!!これで何回目だよ!!」
「はあ!?俺はお前らの為にも……」
「そう言ってお前が衝突起こしたせいで俺達まで先輩達白い目で見られてんだよ!!」
「そうよ!!こないだだって!!」
「俺が悪いってのかよ!!」
「「「「そうだよ!!!!!」」」」
あっ、とうとう仲間割れしだした。
「こないだはとうとう冒険者ギルドからも警告されただろうが!!」
「……あんな現場を知らねえ奴らの言う事なんか聞く必要が!」
あーあ……それ言っちゃおしまいだぞ。
ギルドが警告するってのは余程だ。という事はよっぽどこいつ今までにも騒動起こしてきたんだろうな。
……そう思って、今回の臨時パーティを組んだ探索冒険者パーティを見てみれば……うん、さっきまでの苛立ちを通り越して、今は呆れしか浮かんでないな。
「……分かった、もう、いい」
「分かったのかよ、なら」
「お前とはここでお別れだ。お前ひとりで好きにしろ。俺達を巻き込むな」
そう言うなり、「お騒がせしてすいませんでした」、そうこっちに頭を下げて、他四人が一斉に出ていく。
その姿を呆けたように見つめていた奴だったが……慌てて喚きだした。
「どっ、どういう意味だよ!おい!!」
「今言った通りだよ。お前にはもううんざりだ。前から他の皆とは話し合ってたんだよ」
「何度注意しても治そうともしないし、私達まで同類扱いされて、もうウンザリなのよ」
「だから、お前とはここでお別れだ。もう、俺達とは何の関係もない」
「そう、外で会っても話しかけたりしないでね。迷惑だから」
口々に告げて、彼らは出て行って……残ったのは……俺達と奴だけ。
きっとこの後、彼らは冒険者ギルドにパーティからの奴の離脱というか排除を申請すんだろうなあ……。
さて、こうなったこいつはどうすんのかな?
しばらく呆然としていた奴はしばらくしてプルプル震え出すと……。
「くそっ、てめえらがさっさと譲らねえからこんな事に!!」
……いや、お前さっきまでの仲間の話聞いてたか?これまでも何度も同じ事やらかしてきた結果だろうに。
そう思う俺の目の前で、奴は遂に武器を抜いた。
世の中どこでもこういう人いますね
自分勝手な事をしつこく喚くクレーマーとかは最悪です