指導するお話1
「何やってんだ、このアホウ共!!」
思わず怒鳴っちまった。
ラティスまで「ひう」とか怖がっちまってるじゃねえか。
いや、でも怒ったのはラティスじゃねえんだけどさ。
俺の視線の先には複数の魔物と人の混成集団。冒険者パーティの一団だった。ただし、割とベテランにして新人の。
なに?矛盾してるって?
いいんだよ。別の分野ではベテランでも、討伐分野では新人って意味なんだから。
以前、俺達が護衛のギルドランクを上げる為に、護衛に参加したのは覚えてるか?
その討伐版が俺達にも回ってきた、って事だ。
正直、面倒ではあったけど、ここのギルドマスターには何だかんだで世話になってるし、こうした依頼を受けといた方がギルドの心象とか将来の昇格にお得だって事は聞いてたから受ける事にした。というか、特に事情もないのに受けないのは損しかないしな。
それはいい、それはいいんだ。
問題は俺達が受け持った冒険者達の行動にあった。
「すいません、つい……」
そう言って申し訳なさそうに頭を下げるのは連中のリーダー役という人の冒険者だ。
その他の連中も……理解はしてるみたいだな。不満そうな顔はない。
さて、何があったのかを話してしまえば、逃走したんだ、こいつら。やっと追い込んだ魔獣から。
「探索では面倒そうな相手はさっさと逃げてましたから……」
「ああ、分かるよ」
そう、こいつらは探索では上位に位置する冒険者グループだった。
探索は遺跡を漁る仕事だ。
ただし、漁るといっても色々なやり口があって、前世で言う所の考古学みたいな漁り方をする奴もいれば、単に金目のものを探しては持ち帰る、って奴もいる。マジックバッグなんかはほぼ彼ら「探索」の冒険者が持ち帰ったものが市場に出回っている。
そんな連中が討伐のランクを上げようとした。
この時点で、やな予感はしてたんだよな……。
とはいえ、探索の冒険者が討伐のランクを上げようとする事自体は大体予想はつく。
以前にも言ったが、討伐の冒険者は純粋な戦闘力という点では他の同ランク冒険者を大きく上回る。だから、純粋な戦闘力を上げたいと思った冒険者がついでに「討伐」の冒険者ランクも上げておこう、と考える事は割とよくある事らしい。
特に真面目に、きちんと仕事をしてきたような冒険者グループなら、ギルドに正式に申し込みをすれば今回の俺のように討伐の経験豊富な冒険者パーティを紹介してもらえる。経験者がついてきてくれる方が安心なのはどんな事でも同じだ。
そして、こいつらはギルドから紹介してもらえるだけあってきちんとしてた。けど……。
「いや、わりい。俺も言い過ぎた」
「いえ、私達の癖に問題があるのは重々理解してますから……」
探索の経験豊富な冒険者、って事は探索での癖がつい出ちまう。
当然だよな、似たような場面ではつい自分達がこれまでやってきた、自分達の命を繋いできた経験に従って行動しちまうのはよく理解出来る。出来るんだが。
「もう三度目だからなあ……」
「はい……」
リーダーのみならずあちらさん全員がズンドコに落ち込んでいた。
一回目はまだ笑ってられた。
二回目はちょっと叱った。
そして、今度こそと挑んだ三回目。またしてもやらかした事でつい怒鳴っちまったが、連中全員が理解してるのがまた何とも、なあ……。
探索ってのは一番、冒険者グループの癖が出るって言われてる。
敢えて危険な場所も探索するのか、慎重第一で行くのか、それとも……。方針次第でまるで探索のやり方が変わる。
そして、彼らは割かし安全第一でやって来たらしい。つまり、戦ってみて、相手が強いと思ったら余裕のある内にさっさと逃げる。それを否定するつもりはないが、討伐ではそれは断じてやっちゃいけない。最悪、中途半端に手負いにした魔獣が襲撃をかけてくる危険性すらある。
だからこそ俺は怒ったし、こいつらも落ち込んでる。
こりゃあ根っこは深そうだあ……。
以前は主人公達が護衛で指導官つけてもらいましたが、今回は彼らが指導役のお話