ばれてた話と怒られた話
やっぱり風邪ひいてた
急に寒くなったからなあ……病院行ってきました
「そんじゃ持って帰るか」
「どうやってだ?」
「おいおい、甘く見てもらっちゃ困るぜ?……お前さんのそのリュック、アイテムボックスだろ?」
……何でバレた?
「お前さんの体にそのサイズのリュックじゃまともに荷物なんか入らん。財布でさえ入るか怪しい。……なのにお前さんギルドの金庫も利用してねえだろ?」
……あったのか、そんなもん!
折角なんで聞いてみると、要は冒険者ギルドが行う銀行業務だな。
冒険者ギルドは金額に応じた手数料と引き換えに金を預かり、保管する。場合によってはそれを商人や冒険者に貸し付けたりもする。また、預けた、その金は他の街のギルドに赴いても引き下ろしが出来る。大金を持ち歩かなくて済むのでなかなか評判はいいらしい。さすがに、冒険者ギルドを襲撃するような馬鹿はいないしな。敵に回したが最後、腕に自信のある連中が幾らでも出てくる。
で、俺の場合、Bランク討伐許可を持ってるのでそれなりに稼いでるのは知られてる。
なのに、金を預けるでもなく、かといって俺の体のサイズじゃどっかにぶら下げてりゃ即分かる。
ラティスに預けてるって可能性もゼロとは言わないが、極めて低いだろうと判断されていた。わざわざ保護したような子が金の為に狙われるような事もしないだろう、と……。
それを差し引いても、そもそも、手ぶらで狩りに出かける時点でおかしい。飯とかどこに持ってんだ、と。
「そういう訳で、お前に注目してた冒険者で、一定以上の連中はそのリュックがアイテムボックスだろう、って判断で一致してた訳だ」
「…………よーく自分のバカさ加減が理解出来たよ」
あー……、なるほど。
そりゃあ確かに疑われるわ。
言われてみりゃあ、俺も逆の立場だったら、そう思うわなあ。
「分かった、誤魔化しも無理そうだしな」
素直にリュックに収納する。
「どんぐらいまでなら入るんだ、それ?」
「さすがにそこまでは言えん」
そう答えたら、肩を竦めた。
……よく見りゃ。こいつもアイテムボックスらしき袋を持ってる。
なるほど、アド爺さん、アイテムボックスって容量を除けば割と一般的な魔道具だって言ってたな。同じアイテムボックス持ちなら、薄々想像はつくか……。
「んじゃ帰るか」
「そうだな。ところで……」
ここどこだ?
帰り道分かるか?
そう聞いたら、フェンリルは「分からん、ちょっと待て」と答えると、道具をアイテムボックスから一つ取りだした。
「それは?」
「……お前、一般的な道具何も知らねえんだな」
呆れたように言われた。
その上で、怒られた。
一度、魔道具関係をきちんと調べろ、と。
「こいつはな、特定の位置を一定期間指し示す魔道具だ」
魔精の森もだが、山岳地帯などで討伐依頼を受けた場合、方向が分からなくなる事はある。
そんな時、これがあれば最低でも自分が出た街の方角を知る事は出来る。
今回のもそうだけど、逃走する討伐対象を追ってる時、あるいは討伐しきれなくて逃げる時は方向なんか考えてられない。当然、無茶苦茶に逃げて、結果として方向が分からなくなった!なんて事も起こる。そんな時に距離は分からなくても、方向だけでも分かればどれだけ助かる事か。
これ以外にも色々な魔道具があるという。
それらは長年の間に、冒険で困った状況、それも命に関わるような事をどうにかしようとしてきたギルドの成果だという……。
「いや、ほんと分かったって……反省してる」
「いや、お前、今回の背中への飛び蹴りといい、迂闊な部分が多いぞ!」
ううっ。
これが理不尽な事なら反論も出来るんだが、今回は色々と失敗したから何も言えねえ。
結局、フォートの街へ戻るまでフェンリルの説教は続いた。
……まあ、ちゃんと色んな道具の事も教えてくれたから、こっちにとってのリターンも大きかったんだけどさ。
ちなみに、報告が終わって、ラティスらがまだ戻ってなかった事もあり、魔道具店に直行したのは言うまでもない。
一般的に連想出来るサイズのウサギさんが背負えるサイズのリュック
そん中に、硬貨が何枚入るのか?って話ですね