討伐のお話、その四(ラスト)
「拡散びーむほおおおおおお!!!!」
「何言ってるのか分かんねえぞおおお!!」
俺もフェンリルも必死だ。
その原因は俺の叫びを聞けば、何となく納得出来る奴も多いのではなかろうか?
ラビットドラゴンの奴、拡散ビーム砲みたいにブレスをばら撒いてきやがった!!
追い詰められた事を獣の本能で悟ったんだろう。
機動力も下手に片脚で跳ねても思うように動けないどころか、体に無理がかかる。
ならば、と奴は最低限以上は動かず、崖を背後にして守りを固めた。
もっとも、それで奴が有利になったかと言えば違う。
背後からは無理でも上空からは攻める事が出来る。俺が直接、フェンリルも上から魔法を放って攻撃しつつ、前方から左右からフェイントをかけつつ攻撃した。
少しずつ削れてたんだが……。
奴はこっちの遠距離火力が低い事を見抜いたんだ。
フェンリルも俺も、本命は接近戦だ。
遠距離火力、という面ではどっちも低いとしか言いようがない……残念ながら。そして、奴は遠近両方に高い攻撃力があった。
近接が足を失った事で封じられた今、遠距離に集中するのは当然の結果だったんだろう。
それにしたって、想定外だけどね!!
「どうする!?」
「どうするってお前、奴の魔力なりブレスだって弱点はあるはずだ!」
そうだなあ。
まあ、あんだけぶっ放してりゃ、いつまでもつか……。
魔力でブレスを構築してるとして、あんだけぶっ放してりゃ、いつかガス欠になるだろ。
「問題はいつまであれが撃てるかなんだけどさ」
「あんだけ不規則じゃ近づけんよなあ」
お陰で今は互いに距離を取って睨み合ってる状態だ。
近づけば、奴はあのブレスを撃ってくる。
「……こうなりゃひっかけでやってみるか」
「どうすんだよ」
「……こんなの作れるか?」
「?いやまあ、作れるけどよ……ああ、なるほど」
ひそひそと話をすると、やってみるかとフェンリルも頷いた。
一際気合を入れると、大きな氷を生み出して、飛ばす。
ラビットドラゴンはそれを迎撃する。
その上で、ラビットドラゴンは素早く視線を戻し、フェンリルと、その隣にちょこんと座る首狩り兎の白い姿を確認する。
それを確認したラビットドラゴンはそちらに注意を向けたまま腰を下ろし。
そのまま首と胴がお別れした。
「……こんな上手くいくとは」
「あの苦労はなんだったんだ」
……実の所、した事って簡単なんだよなあ。
お互い睨み合って、さっきから全然動いてないのをいいことに、一種攻撃仕掛けてラビットドラゴンからの視線を遮り、その一瞬をついて俺は上空へ、フェンリルは雪でウサギを作る。近場ならともかく、この距離じゃぱっと見ただけならフェンリルの傍にさっきまでと同じく白いウサギがいるように見えたんだろうな。
で、砕かれる音に紛れて上空まで接近。
そっからは自由落下で、射程距離に入った瞬間に空中ダッシュ。
手早く首を落とした訳だ。
「引っかかってくれて良かった……」
「あそこでこっちに向かって攻撃してこなかった辺り、奴も限界に近かったのかもな……」
まあ、とにかく。
「これで俺の昇格試験終了かな?」
「……まあな。これで実力が足りんとか言ったら、俺がそいつに噛みつく」
ああ、本当に……。
体が真っ白で良かったぜ。
戦闘って長いと毎日更新でも飽きてくるし、かといって短すぎるのも……難しいわあ
本なら一気に読めるからもっと詳細に書いてもいいんでしょうけどね