表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/116

討伐のお話、その四

 崖にぶち当たった事で、奴は回転を止めた。

 奴の回転はある種のスキルではあるが、それ専門の疾走スキルなんかじゃない。ただ単に転がり続ける事が出来るだけのスキルだろう。おそらくは防御の為の。

 何もスキルがないとは考えられない。やってみりゃ分かる事だが、転がり続けるって事は大変だ。それが大木をへし折る程の高速でなら猶更の事。まあ、そんな事は今はもう重要じゃなくなった。いやな、一抹の不安はあったんだよな。

 大木にぶつかって、へし折りながらも方向を変えてたんでそうじゃないかとは思ってたんだが、これが崖を駆けあがれるぐらいの力があったらどうしよう?って。

 そん時はマジでフェンリルに齧られてたかも。


 「よし、やっと止まりやがったな!」


 もちろん、そんな事口に出したりはしないけどな!!


 「そうだな。片脚奪って、機動力は落ちた。崖を背後にして転がり続ける事も出来なくなった。……色々失敗もあるが、次回に活かそう」

 「そうだな!!」


 直前まで対象を教えられなかった俺と違って、こいつは対象を知ってた。

 で、あの対応って事は……ギルドになかったんだろうな、ラビットドラゴンの資料。正確には十分な資料が。

 非常に当り前なんだが、魔獣との遭遇回数が多い程、その魔獣に関する資料は多くなり、行動性や弱点、スキルなども詳細になっていく。反面、遭遇回数が少なければ少ない程、名づけぐらいはされてても、どんな行動を取って、どんな攻撃をしてきて、どんな事が弱点なのか、といった事は分からなくなっていく。

 おそらくは……。


 (だからこその、Aランクと、Aランク昇格間近のBランクを派遣して、逆にB昇格の可能性のあるCランクは省かれた)


 強く、危険。

 けれど、どう危険なのか。

 それが分からないなら、鉄板を叩いて渡るしかない。

 魔物二名というのは少ないように感じるけど、それは単純に討伐のAランカーの数の少なさが原因だろう。

 前にやって理解した事だが、単純な腕っぷしで言うなら、討伐依頼のランクが高い者が基本一番強く、護衛や探索、狩猟のそれとは一線を画している。原因は逃げる訳にはいかない仕事と、逃げたりしてもいい仕事の差。

 護衛だって守る対象がいる間は勝手に逃げる訳にはいかないけれど、彼らは自分達から危険と分かってる相手に向かっていく必要なない。むしろ、危険はなるだけ回避するのが良い護衛だ。

 狩猟も狩猟対象でもない限り、危険な相手はさっさと逃げればいいし、探索も変わらない。

 しかし、討伐だけは違う。討伐は自分達から危険と分かっている魔獣に向かって突っ込んでいく仕事だ。当然、腕っぷしがなければ務まらない。

 そして、他のAランクに比べ、討伐のAランク冒険者は数が少ない。もちろん、危険に自分から突っ込んでいくような事をしてる奴のリタイア率が高くなるのは当然の結果だ。結果、今回「昇格試験」の名目の下用意出来たのはフェンリルである彼一体のみであった、という訳だ。

 

 (いや、逆か?)


 フェンリル一体しか用意出来なかったから、「昇格試験」の名目でこっちも討伐に放り込んだ?

 どちらが正解かを知るのはギルドマスターと、後は二、三名程度のものだろう。


 「さあて、追い詰めたが、分かってるな?」

 「分かってるって。窮鼠は猫をも噛む、外見詐欺のウサギに噛まれたくはないぞ」


 というか、あんなんに噛まれたらえらい事になる。

 

 「分かってるならいい。あいつの場合、ギルドの資料でも外見とか仮称の名前しか分からんかったんだ。気をつけろ」

 「了解。てか、仮称だったのかよ!」


 まあ、ラビットドラゴンって分かりやすい名前じゃあるけどさ。

 ……多分、あの毛って鱗の一部が変質したものなんだろうなあ。

 というか、元の世界でも鱗と起源が同一だとか、いやいや鉤爪と起源が同じだとか色々あったはずだ。

 多分、硬いだけでは打撃でも衝撃が体に通ってしまう、それでは駄目だと、衝撃を吸収する為に鱗の一部が進化した結果なんだろう。 

 

 (あれ?)


 そんな事を考えていると、【殺戮衝動】が消えている事に気が付いた。

 よく見れば、ラビットドラゴンの断った足から血はまるで流れ出ていない。


 (これは……時間次第で段々解除されるのか、それとも血の量が増えたら強くなるのかどっちだ?)


 いやいや、と今考える事ではないと切り捨てる。

 あれが本当にドラゴン系の魔獣だとしたら、再生能力も高いはずだ。

 さすがに、この短時間で足一本生やすのは無理でも、ここで逃がせば、完全回復した状態で仕返しの為に攻撃してくるかも……。


 「うわあ、ぞっとしねえ」


 推測を話すと否定出来なかったのか、フェンリルもそう言って嫌な顔をした。

 何が何でもここで仕留めないといけないようだ。 

次の日曜は試験があるので多少遅れるかも?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ