討伐のお話、その二
さて、では思い立ったが吉日!とうっ!!
「ぐふうっ!?」
「よし、狼君!話を聞け!」
奴の背中に飛び降りたら、えらい形相で睨まれた。
「てめえ!いきなり背中に飛び蹴り喰らわすたあ何のつもりだ!!背骨へし折れるかと思っただろうが!」
「おう、すまん」
むう、ちょっと勢いありすぎたか。
「奴を倒すための相談がしたい」
「……くだらねえ話だったら本気で噛むからな」
かなり剣呑な視線で睨まれた。
……さっきの着地がよほど痛かったようだ。
「改めてすまん。確認なんだが、奴を一時的に足止め出来るか?」
「固めるというなら諦めろ。奴を固めるなら大規模魔法でもぶっ放さないと話にならん」
そもそもそんな大規模魔法を撃てるなら誰も苦労はしない。
そうフェンリルは言った。だけどな。
「いや、そうじゃない。実はだな……」
駆け回るフェンリルの背中にしがみつきつつ、こっちの策を語る。
「……それぐらいなら確かに何とかなりそうな話じゃある」
「おお、そりゃ良かった」
ほっとしたぜ。
それも無理だって言われたらどうしようかと。
「こっちが成功したら、そっちもきっちりやってみせろ。……それでさっきの背中への蹴りは許してやる。失敗したら一かじりさせろ」
「ははははは、分かった。意地でもやってみせよう!
やべえ。
かなり痛かったみたいで、目がマジだ。
……失敗する気はなかったが、気合入れ直そう、うん。
「それじゃ行くぞ……」
「了解!!」
ばっと、今度はちゃんと背中を蹴らずに空間を蹴って移動する。
ここで更に背中蹴ったら、今度こそ本気で怒りそうだ。というか、二回もやったら故意でしかないしな。
その上で、互いにラビットドラゴンの奴の動きを見る。
直線に飛んでくる時は駄目だ。それじゃ動きが止まらん。狙うのは……来た!!奴が跳躍して、上から押し潰しにかかってくる。
「いくぞ!【凍結】!!」
「おう!【空間緩衝】!!」
二人の魔法の合せ技。
こっちの魔法で奴の落下の衝撃を抑え、フェンリルの魔法で奴の真下を凍結させて、氷の板を作り出す……。
そうして、途中でふわりと空間に受け止められた奴は困惑する間もなく、氷に着地して……踏ん張った。
フェンリルが作り出したのは銀盤、とでもいった方がいいような、ツルツルの氷の一枚板みたいな状態だ。さしもの奴も一瞬だが、足が滑りそうになって、踏ん張って……動きが止まった。そうだ、これを待ってた。
踏ん張るというのは力が体に入った状態だ。そして、力が体に入れば、すぐには動けなくなる。
そこへ俺が弾丸のように突っ込んだ。
こいつ相手には【殺戮衝動】がどうとか言ってる余裕はない。そして、すり抜けるようにすれ違いながら……。
【脚断ち】
一拍遅れて、奴の悲鳴が響いた。
ま、そうだろうな……。
奴だってウサギだ。少なくとも見た目は!
当然、翼なんかない以上、その機動力は足が生んでいる。
その足が落ちれば……。
「さて、後は……きっちり……」
ああ、うん、急がないとやばいかも。
本当にこれ早く慣れないと拙いな。
うまくいったかな?
けど、そんな時こそ油断大敵