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試験のお話(ビット)

 「……………」

 「……………」

 「……なあ」

 「……何だ」

 「そういう風についてこられると凄い気になるんだが」

 「………気にするな(じゅる」


 いや、気にするよ!?

 どうもこんにちわ、ビットです。

 只今、Aランク昇格試験中ですが、ひしひしと身の危険を感じております。

 何でだって?

 俺のすぐ後ろをついてくるAランカーが狼さんだからです。いや、比喩的な表現じゃなく、そのまんまの意味で!!


 フェンリル、という存在を知っているだろうか?

 今、俺の背後をついてきてるのが正にそれだ。

 初めて言われた時は「それって神獣とかそういうのじゃないの?」って思ったんだが、この世界では純粋に種族の一つらしい。無論、極めて強力且つ凶悪な種族らしいけど。本人曰く、遠いご先祖に魔物の国を建国した王の一体がいたらしい。

 もっとも当人ならぬ当狼は先祖返りだそうで、フェンリルが一族に生まれた時は大騒ぎだったそうだ。

 まあ、魔物の場合、他の種族との婚姻で突発的に他種族が生れたり、ご先祖様の種族が生れたりするのは割とあるので、人の世界と違い不倫だなんだと騒ぎにならなかったのは幸いだろう。むしろ、「ご先祖に王家にゆかりのある方がいたというのは本当だったのかー」と親戚一同感動したそうだ。

 まあ、それはそれとして。

 俺はウサギだ。

 奴は狼だ。

 そして、奴は俺のすぐ後ろをピタリとついてくる。

 ……凄い気になるのも理解してくれるだろう?

 ただし、からかってる可能性も高い。特にさっきの唾をのみ込むような音は絶対……からかってるだけなんだよな?本当に?


 「……別々の審査になるとは思わなかった」

 「ああ、チームとはいえ、君達はランクが違うからな。審査内容も異なる」


 Aランクの討伐に幾らBランクが目前とはいえCランクがついてくるのは危険だ。

 現在はBランクとはいえ、Aランクに昇格しようかという冒険者がCランクの昇格試験についていくのはよろしくない。

 これは違うランクの冒険者が同じチームを組んでいる時に常につきまとう問題でもある。ま、実の所、討伐以外の場合はチームでの試験になるのが一般的なのだが。

 反面、そちらの場合はチームが解散するとチーム単位で認められていたランクもまたリセットされる為、チームとしてはAランク、メンバー各個人のランクはCランクなんて事が起きてややこしい事になったりするのもまた事実なのだが。

 ただ、討伐や狩猟の場合と違って、護衛や探索が一人で出来る訳もなく、ここら辺はギルドも未だ試行錯誤の真っ最中……だそうだ。


 「今回、君に狩ってもらうのはウサギだ」

 「はあ……はっ!?」


 ウサギ?

 今、ウサギって言った?この狼!?


 「安心したまえ、首狩り兎(ヴォーパルバニー)ではない」

 「当り前だろ!それじゃ魔獣じゃなくて魔物じゃねえか!!」


 つまり、その場合は犯罪者狩りの可能性の方が高い。

 まあ、いれば、の話ではあるが。


 「で、どんな魔物なんだ?」

 「うむ、対象の名はラビットドラゴンという」

 「………………らびっとどらごん?」

 

 なんじゃそりゃ!?


 「聞いた事がないか。まあ、確かに珍しい魔獣なのは確かだ」

 「魔獣なのね……いやまあ、そうじゃないと討伐にならんだろうけど」


 話を聞いてみた。

 基本雑食で、食えるものなら何でも喰う。それこそ人でも魔物でも。

 この時点で大問題で、討伐依頼が出るのももっともな訳だが……。


 「本来、Aランク冒険者複数で討伐する依頼でな……まあ、簡単に言うと俺とお前で討伐してくれ、そうしたらAランク認定するから、って話だ」

 「納得したよ」


 冒険者ギルドではこれも先だっての特大バーサークコング同様、奥から出てきた魔獣と判定しているらしい。……本気で何が起きたんだ、森の奥地。

 いや、アド爺さんはもう寝てるはずなんだが……。

 ちなみにラビットドラゴンの見た目は本気でウサギなんだそうな。

 ただし、口はでかく開く上、牙が一杯生えてる。毛の下には厚い鱗が隠れてるという……。巨体だが、見た目は可愛いので油断してしまう事もあるらしい。

 世の中には変な魔獣もいるんだな……。  

想像してみて欲しい

象を上回る巨体、口を開けば鮫みたいな牙がずらり

けど、見た目は可愛いウサギ

そんなのがぴょーんととびかかってきたら……あなたはどうする?

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― 新着の感想 ―
[一言] ③、外見に油断して食べられる、現実は非情である
[一言] 鮫のような牙の生え揃った兎! ペンギンやガチョウの口内を目の当たりにした時の事を思い出すなぁ。 それはそれとして兎と狼のコンビで大丈夫かな?
[一言] 圧殺覚悟でモフモフモフモフモフモフします!
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