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問題点のお話

前回の暴走気味の原因その他です

 バーサークコングの死体は途中までは俺のリュックに入れて、そっからはツァルトが担いでくれた。

 もちろん、街もギルドも大騒動になったが、幸いボス猿であるバーサークコングは既に仕留めてる事。

 ボスを失ったバーサークエイプは群れとしての統率を当面維持するのは難しいだろう、って事。

 バーサークエイプ単体ならそこまで強くないって事で事態はほぼ解決した、って看做されてるようだ。俺達にも十分な報酬が支払われたし、バーサークコングの素材売却で更に金が入ってくる事も確定している。

 コングがエイプの中から出てくる可能性はないのか?って思うかもしれないが、そうなるにはこんな森の浅い所では無理だという。

  ……けど、まあ。

 俺らは割とそれ以外に重要な事があって基本的にギルドに全部任せてきた。


 「はあ……」

 「ウサギさん、大丈夫?」

 「ああ、大丈夫だ。ちょっと疲れただけだよ」


 肉体面よりむしろ精神的にだけど。

 ラティスはあんな俺を見ても、怖がらなかった。

 はっきり言っちまうが、俺のアレは首狩り兎(ヴォーパルバニー)特有の呪いみてえなもんだ。

 

 【殺戮衝動】


 ああ、うん。

 そりゃあこんなもん種族特性で持ってりゃ首狩り兎(ヴォーパルバニー)って種自体が怖れられても当然だよな。

 いや、もしかして首狩り兎(ヴォーパルバニー)が首を狩っての一撃必殺を狙うようになったのも、この種族特性のせいかもしれん。最初とかはいいんだが、大量の血や白熱した戦闘で興が乗ってくると発動するみたいなんだよな……訓練では発動しなかったから気づかんかった。

 あくまで命のやり取りのある本物の戦いの時限定なんだろうか?多分そうなんだろうな。

 腕や足を落とす、って事は当然だが血もどばっと出てくる。太い血管走ってるからな。

 さっきの場合はアド爺さんとの模擬戦を除いては久々の厄介な戦闘だったせいで、段々興奮状態になってた。そこへ腕を落とした事で大量の血が出て、それがトドメになったんだな……。

 もしかしたら、首狩り兎(ヴォーパルバニー)が基本、地元に引っ込んでるのもこれが原因かもしれん。


 で、もう一個の問題はラティスだ。

 あんなの見ても、ラティスは全然俺を怖れなかった。

 いい事みたいに思えるが、実際はちょっと違う。

 

 (多分、ラティスは恐怖を感じなくなってるな)


 可愛がられて育って、いきなり襲撃されて逃げ出して。

 親や知り合いが次々消えていく生活を送る中で、麻痺しちまったのか、壊れちまったのか……間違いなく、ラティスは恐怖、って感情自体が抜けちまってる。さっきの俺の姿を見りゃ、知り合いでも初見じゃびびるだろ。なのに、ラティスぐらいの人生送ってきた子が俺を見て怯えないのはさすがにおかしい。

 恐怖を感じない、って事はいいように思えるが、んな事ない。 

 恐怖を感じるからこそ、俺らは警戒するし、危ないと思ったら引く訳だよ。無痛症だっけ?痛みを感じない、って病気の奴もいるけど、これだって生活には細心の注意が必要だって言われてる。何せ、体のどっか怪我して血がだくだく流れてても全然痛みを感じないし、腕が折れても痛くない訳だから気づけない。痛みってのは「ここの調子が悪いよー」っていう体からのシグナルだからな。

 そして、それは感情にだって言える。

 

 (……うーん、前途多難だわ)


 もちろん、いい事だってあるんだぞ?

 まず、生活費の余裕。

 今回のバーサークコングは以前売っ払ったシャドウウルフより更に高値だった。

 原因は単純、まずシャドウウルフより純粋に強い。シャドウウルフは特殊な搦め手を持ってて、逃走能力としつこさはあるけど、攻撃力って面ではそこまで高い訳じゃない。

 そして、今回仕留めたバーサークコングの巨体も理由だった。

 やっぱり一般的な奴より大きいってのはより古強者な証でもあるらしく、その分お高い。

 単純に考えてみりゃ分かるが、骨なんかも人の倍サイズの体を支える骨と、人の三倍サイズの体を支える骨じゃ頑丈さがまるで違ってくる。

 普通は年食った獣ってのは価値が落ちるもんだが(鶏なんかいい例だな、年食った鶏だと筋張って固いし、若鶏の肉は柔らかい)、魔獣は違う。長年、魔力を蓄えた魔獣はどんどん強くなり、その内部のお値段もどんどん上がっていく。

 ……まあ、そうでなけりゃ討伐とか割に合わんわな。

 強くて、厄介な癖に、素材として売り払った時の金額は安いんじゃ誰だって狩りやすくて、高く売れる方を狙うに決まってる。けど、年食った魔獣は加速度的にお値段跳ね上がるから、一攫千金狙う奴らは強い魔獣を狙うって訳だ。

 ちなみに、奴ら、肉まで美味くなるらしい。 

 バーサークコングもあんだけの古強者ならさぞかしとろけるようなお値段になるし、美食家の金持ちが争って買いますよ!と冒険者ギルドの職員からは太鼓判押された。

 なので、金銭面では問題ない。

 

 次にツァルトの戦闘力判断力その他諸々。

 あの瞬間の咄嗟の援護射撃はラティスからの指示なしに行われたもんだった。

 俺が尻尾にはたかれて、態勢を崩したのを見て、即座に砲撃態勢に移行、棍棒目掛けて集中射撃、それも破壊するに必要なだけの攻撃を一発分程度の余裕を見て撃つ。並大抵の判断処理能力じゃない。合体変形機能の制御といい、分裂時の各個制御機能といい……こいつ、古代遺跡の発掘品の中でも無茶苦茶貴重品じゃないのか?

 確かに遠方の探査機能は多少落ちるみたいだが、照準なんかは問題ないし、落ちるって言ってもあくまで比較の問題だしなあ……。

 なんで、こんな奴がラティスをマスターと認めて動いてるのか、そこら辺が物凄く気になるんだが……頼りに出来ると分かったのはいい事だ。


 ……問題はそれらを考慮しても問題点の対策に頭が痛いって事だよなあ……。

という訳で、ラティスに関しては恐怖を感じなくなってる、というのが正解でした

なので、ビット(忘れてるかもしれませんが、主人公の名前です)の行動見ても「怖い」とか思ったりしませんでした

……そういう意味では良かったんですけどね

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― 新着の感想 ―
[一言] >なんで、こんな奴がラティスをマスターと認めて動いてるのか、そこら辺が物凄く気になるんだが ・・・製作者が幼女守るべし!って行動原理を植え込んだか?
[一言] 殺戮衝動の方はビットが制御を頑張るとして 恐怖不感症は危ないですねぇ。 とっさの危機回避とかに影響があるし、そう考えると守護者であるツァルトがパーティ入りしたのは行幸ですね!
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ ツァルトがロマン主義の産物とは思えない位に優秀ですね(*´・ω・`)b 前回ビットに声を掛けて正気に戻したのもツァルトですか? [一言] ラティスの現状が不憫…
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